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……で。
今日は付き合うことになってから初めての智くんの誕生日なわけだけど…
いつもの居酒屋でいつものメンバーと飲んでる。
智くん不在で。
「おーちゃんもこんな日に釣りに行かなくてもいいじゃんねー?」
「もう前から約束してたんだってさ。誕生日でしょ?って言ったら、マジか!って驚いてた」
「ふふ、大野さんらしい」
「でも帰ってきたら会うんでしょ?」
松潤が俺の手元のスマホを見ながら言う。
そろそろかな…なんて思うから、知らず何度も着信を確認して、まだか、って伏せて、っていうのを繰り返してたらしい。
「一緒に行ったら良かったのに」
「ごもっともなんだけどさ…」
「ま、いいじゃんいいじゃん、飲も!すみませーん!」
相葉くんが大きな声で店員さんを呼んでビールを追加注文して、俺達は何度めかの乾杯をした。
さんざん飲んでさんざん喋って…すっかりいい気分になった頃。
「いやー、だからさぁ、智くんは、結局やさしーんだよ、だからさぁ…」
「だからそれって結局ノロケでしょーっての!うひゃひゃ」
相葉くんと肩を組んで話が絶好調に盛り上がったころ、ブルブルってスマホが震えて、智くんの帰航を告げた。
スマホの外にまで聞こえるほどの大きな声で、興奮して話すところを見ると釣果はなかなからしい。
みんなに冷やかされながら、店をあとにする。
最寄り駅まで来てくれた智くんは、磯の香りがしてた。
明日はパン屋さんはお姉さんに任せて休みをもらってるらしく。
今日はこれから智くんを独り占めできるんだ…なんて、酔った頭で、なにその乙女みたいなのってひとり笑う。
実家の近くにアパートを借りて独り暮らししてる智くんの家に遊びに行くのは数え切れないくらいしてるけど…泊まるのは実は初めてで。
こんな酔った状態で行くのは本当は想定外だったんだけど、ね。
いい気分で智くんの部屋へと歩く。
今日はこの季節にしては比較的暖かな夜で…なんだか気分良く歩いていたら、ぎゅ、って智くんが俺の手を握った。
「ちょ…誰かに見られたら…」
「誰も見やしねぇよ」
手を繋いでぷらぷらと歩く。
普段だったらこんなこと外でしないんだけど…アルコールの力を借りて今日はそのまま歩いた。
なんなら酔っぱらいを介抱してるふうにみえるかも、なんて。
智くんの家まであと少し。
ぎゅっと繋いだ手があったかくて。なんとなく泣きそうな気持ちになりながら、並んで歩いていった。
(おわり)
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大野さんお誕生日おめでとうの気持ちを込めて、お山にチャレンジしてみました。
あんまり…お誕生日感は…ないんですけど…
これは、以前書いた、『still feel loneliness』という、にのあいのお話のスピンオフなんです。
まだの方はまた読んでいただければ…。といいつつ、読まなくてもあんまり影響ないかも。笑
この設定がちょっと好きだったので、なんとか動かしてやりたいなぁって思っていたのを、
今回活用してみました。
あんまり説明なしにそのまま設定を流用してしまったので、初めての方は「???」だったかも、ですね。すみません。
奇しくもどちらも冬のお話になりました。
久しぶりに妄想をカタチにしてみて、なんだかワクワクしました。
納得行かないところはもちろんあるんですけど、なんか…ああ、楽しいなって。
そう思って。
またぼちぼち。
楽しんで書いていけたらなって、思いました。
唐突に、続きそうな感じで終わるスタイル。笑
よって、タイトルも「プロローグ」。笑
続くかどうかは、わかりません。笑
お読みいただき、ありがとうございました!