ロイヤル・バラエティー・パフォーマンスのパンフレット全頁紹介 番外編「安い席ってどこ?」 | The Beatles Record Collection Update

The Beatles Record Collection Update

中学三年生の頃から集め始めたビートルズのレコード。
"The Beatles Record Collection"Webサイト
→http://www.yokono.co.uk/collection/beatles/beatles.html
に掲載している中からレア盤を中心にコレクションを紹介していきます。

ここでちょっとロイヤル・バラエティ~の番外編です。

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「安い席の方は手拍子を、その他の方は宝石をジャラジャラ鳴らしてください」

というジョンのセリフで有名な「ロイヤル・バラエティ・パフォーマンス」ですが、

実際のところ、「高い席」と「安い席」というのはどのあたりなの?

という点に疑問をもった方がいらっしゃいます。
ビートルズに関する研究をされている高野さんから情報いただきました。ありがとうごさいます!
さっそく検証してみることにしましょう。

そもそもこのコンサートが開かれた「プリンス・オブ・ウェールズ・シアター」は、1884年に「Prince's Theatre(プリンス劇場)」として開業。当初は1062席ものキャパシティをもつバイロイト型(客席がすべて舞台を向いているタイプ)三層構造の劇場だったようです(第一世代)。
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そして、1886年に「Prince of Wales Theatre」と改名。
さらに1937年になると内装がアールデコ風に大幅改修され、おそらく現在と同じ、大きなステージと二層の客席(1139席)で構成されるスタイルになったようです(第二世代)。
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1937年当時の外観を残す写真(2002年)

さらに2004年、外観も含めた大規模な改修工事が行われ、近代化された現在の劇場の姿になりました(第三世代)。座席数は約1160席あるそうです。
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※劇場に関する画像や歴史情報は「The Music Hall and Theatre History Website」より引用させていただきました。
http://www.arthurlloyd.co.uk/PrinceOfWalesTheatre.htm

さて、ここでイギリスの劇場の一般的な座席スタイルについても調べてみました。
プリンス・オブ・ウェールズ劇場と同じバイロイト型座席スタイルの一例です。
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ステージに近い1階席をストール(Stalls)、その他をサークル(Circle)といいます。
サークル席は、さらにドレス・サークル(Dress Circle)やアッパー・サークル(Upper Circle)※などに分かれていることもあります。
※グランド・サークル(Grand Circle)と呼ぶ劇場もあります。

現在では、一般的にステージに近い1階席「ストール」の方が高額で、

Stall=S席
Dress Circle=A席
Upper Circle=B席

という感じになっています。

他に、バルコニー席やギャラリー(天井桟敷)がある場合もあります。1884年当時のプリンス劇場にはバルコニーがあったみたいですね。

下記が今(第三世代)の劇場座席表(1160席)です。ビートルズが出演した当時の劇場(第二世代)とどのくらい違いがあるのかは分かりませんが、2層の客席(ストール席とサークル席)という点では同じです。左右にボックス席が用意されています。
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現在の値段設定に照らし合わせると、

1階席=Stalls=高価な席=宝石組
2階席=Circle=安価な席=拍手組

となるわけですが、高野さんの考察ではその逆で、

2階席のほうが高い席、すなわち貴賓席(宝石組)ではないか

というものです。

確かに1階席の方がステージに近いものの、フロアがステージと同じレベルであるため、「芸人」を見上げる形になるのはいかがなものかという思想があったのではないか、という説です。
なるほど、それも一理ありそうですね。

実際、昔の英国の劇場にまつわる文献を読んでみると、

<以下文献より抜粋>
英国のリバプールに行った時、ウイリアムソン広場に面した地域劇場のリバプール・プレイハウスに行く機会を得ました。~(中略)~貴族や平民、労働者階級などの当時の階級制が劇場設計の至るところに露骨に表れています。舞台の上下の際に設けられたバルコニー席は、どうやっても舞台が見えない向き、つまり客席に向いて設けられています。貴族階級の人たちが、舞台を観劇するのではなく自分を見せるために劇場に来ていたことを教えてくれる設計です。1階席は座席にすわると舞台の奥行きの半分以上が見えません。これは、日本の歌舞伎小屋でいう「追っ込み」といって、低い身分の観客が立ったまま芝居を観ていた名残りです。2階正面の席がちょうど舞台と同じ高さで一番見やすいのですが、ここは当時台頭してきたブルジュアジーたちが着飾って観劇した席だったのでしょう。~(後略)
(可児市文化創造センター館長兼劇場総監督 衛 紀生さんのエッセイより)

といったことも書かれています。

果たしてビートルズの時代はどうだったのでしょうか?

いろいろネットでも検索してみましたが、手がかりは番組の映像くらいしかなさそうです。
そこから何か分かるか見てみましょう。


まず、ジョンが
will the people in the cheaper seats clap your hands?
(安い席の方は手拍子を)といったときの映像がこちら。
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やや目線は下向き(安い席の方)ですかね?(微妙ですが)

つづいて、
And the rest of you, if you'll just rattle your jewellery "
(その他の方は宝石をジャラジャラ鳴らしてください)
のセリフで目線が上(高い席?)にあがったような。。
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そして、女王様のほう?をちらっと見て・・・
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親指をたてて、ニヤリと笑います。何度見てもいい表情ですねー。
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ボックス席にいるらしき女王様がそれに答えて手を差し伸べ、
そして、女王様はさらに上(同じく高い席の人たちのほう?)を見上げます。
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うーん、映像からはなんとも微妙なところですが、そう見えなくもないですね。

他に客席が映るシーンは下の写真くらいですが、目線からすると二階席のひとたちのようです。
そう思ってみるとお金持ちに見えてきますね(笑)
またTVカメラが客席を写すとすれば、気持ち的には一般人の客席よりセレブな「宝石組」を撮るような気がします。
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というわけで、明確な証拠がある訳ではありませんが、わたしも高野さん説の、

2階席=宝石組
1階席=拍手組

に賛成です。みなさんのご意見はいかがでしょうか?
こんな風に考えてみるのも謎解きみたいで面白いですね。

ちなみに高野さんからは、滅多にみることのないチケットの画像をいただきましたのでご紹介します。
私もこのチケットは初めて見ました。

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なんと約14cm×15.5cmのジャンボサイズ!
チケットというより招待状といったほうがしっくりきますね。

しかも座席番号は「A22」、2階サークル席のど真ん中です。
ということは、この場所が最も値段の高い席なのでしょうか?

とすればこの席こそが、宝石を一番じゃらじゃら鳴らすべき人の席だったのかもしれませんね。

以上番外編でした。