2度泣いてしまった。
映画評論家の町山智浩さんが絶賛するとおりの良い映画。
日本が戦争に参加していた時代に、どこだかよくわからない『世界の片隅』に嫁いできた主人公・すずの物語。
まず何よりも主人公の声を担当した『のん』こと元・能年玲奈さんに驚かされる。本人の性格と似ているのか、主人公のキャラにぴったりだった。
絵のタッチも凄く綺麗なわけではないが温かみのある仕上がりになっている。
そして、終盤畳み掛けるように続く感動的なシーンには、たまらず泣いてしまった。
中でもヒロシマの描き方が絶妙だった。
ただ、何回も見たいかと言われると、一回で良いかなと思うので70点くらいの評価。
二回も泣いたのにww
そこは厳しく評価。泣けるシーンがあっても作品全体をキッチリと評価したい。
しかし、2016年見るべき映画は『君の名は。』ではなく、間違いなく『この世界の片隅に』である。
【ここからネタバレ含むレビュー】
1番良かったところは、やはり主人公・すずの可愛らしさだろう。おっとりとしてて妄想癖もある。そのキャラを完成させたのは、のんさんの声の演技である。見事だったと思う。
また、ヒロシマの描き方が絶妙だったと思う。戦争の映画は原爆の絵を出したがる。原爆落下直後の地獄絵図のような、人々が苦しむ絵を出したがる。しかし、この作品では原爆のキノコ雲しか描かれていない。なぜなら主人公は広島にいないからだ。でも、原爆で苦しむ絵だけなら出せたはずだ。しかし今作は出さなかった。
何が起きたのか、よく分からない。そりゃそうだ。当時は通信手段もなく、空に謎の大きなキノコ雲が出て、何が起きたかわからない。その描き方がリアルで上手いと思った。原爆直下当時、何が起きたかを噂でしか分からない人たちは多かっただろうし、それで不安になっただろう。その人たちを客観的に描いていてよかった。
また、すず夫婦の描き方も良くて、最初はギクシャクするものの、徐々に『夫婦』になっていく。特にすずが広島に帰りたいと言うシーンで、夫が『すずさんのいる家に帰るのが楽しみだった』と告白するシーンには泣けた。
そしてラストの孤児を救うシーン。
悲惨な目にあった子供を助けるすず夫婦。他人の子供だろうが何だろうが、同じ人間を助けるのには理由はいらない。そしてその愛情を受け入れて寄り添う孤児の姿に、またもや涙してしまった。
全体を通して、第二次世界大戦という激動の中、よくわからない土地である『世界の片隅』に嫁いできた女性すずを、時には愉快に、時にはシリアスに描いていて、心に残る作品だった。
ただ、いくつか退屈or意味不明なシーンもある。
同郷の男性への恋心とか全然描ききれてないので、いきなり好きだったとか意味わからん。
さらに、すずが結婚後にその好きだった男性と再会して一晩を過ごすのだけれども、男女の仲になるのを拒んでいる。なんでやねん。そこは寝ていた方がリアルだろ。一晩の過ち的な。人間は綺麗事では済まないことをたくさん抱えてる動物。あのシーンは寝といた方が正解。綺麗事を出されて引いてしまった。
あとは、序盤のすずが誘拐されるシーン。おとぎ話のようなアレはなんだったのだろうか?何かを暗示してるのか?すずが実際に誘拐にあって、それを子供ながらに記憶を脚色したのか?
よくわからん。
とにかく、見てよかった作品だった。
所属事務所からの独立騒動?によって芸能活動がどうなるかと思われたのんさんだが、今作での成功を考えると仕事には不自由しなそうだ。