エサ箱の配置は

向かって右が「特バーゲン・コーナー」で

左が通常盤=2000円で三枚のコーナーでした。


もちろん、最初は右から攻めます。

ここの店はアメリカのディーラー(卸店)に

店主が直接行って仕入れれ来るという仕組みなので

一般買いの中古屋さんとは

商品の質が違います。


つまり、すべて米国産の中古レコードで

それも鮮度が高い(卸→即→店)のが

最大の魅力なのです。

内容もバラエティに富んでいて、

今まで見たことも無いレコードと

バッタリ遭遇します。

これがスリリングで堪りません!



昭和レコ屋よもやま話
(写真はイメージです)


当時=60年代、70年代に

日本では発売もされなかったようなブツが

面白いように発見できるのです。

この背景には、国産メーカーが

売れる!と踏んだものしか国内発売しなかった、

という、いかにも石橋を叩いて・・・的な

保守的な販売姿勢がうかがえます。

実際、その通りでしたが・・・。


当時、20歳中半だったわたしも、

こんな国内盤状況に嫌気がさして

新譜の香りがプンプンする輸入盤に

シフト変更していったも、お分かりかと思います。


そのような未体験のレコードが

山ほどあるのですから

嬉しくたまりません。

廻りには続々と同好の士が増えてきます。

時間の経過と共に人が多くなってきたのです。


こうなれば早いもの勝ちです!

小脇に次々と抱えて持てないくらいになりました。

額には汗がダラダラ、足はガクガク・・・・・

そういえば、もう数時間も経っていました。


バーゲン独特のものですが、

考えていると他の方に次のブツを持っていかれますので

まずは、気になったブツは小脇に抱えます。

最終的に判断しよう、という考えです。

おそらく皆さん、そうではないでしょうか?


そうこうしていたら

また店主から声がかかりました。

「こっちへ持ってきてください!

通路の邪魔にもなりますし、レコードの上に

レコードは載せないでください!」


お客に対して「邪魔」という言葉は禁句なはずです。

わたしも商売をしているので

こんな言葉は言った事もありません。

どんな方にも失礼千万な事だからです。

せめて「恐れ入りますが・・・」です。


自己弁護みたいですが、

わたしは前述の通り、数十枚も抱えて

難渋していましたから、そこまで=通路の邪魔、

は考えがおよばないというか、気がつきませんでした。

レコードに夢中でした。

実際、他の方に「邪魔」をしたかもしれませんが、

常識的に「スミマセン」・・・くらいの

挨拶はしていたと思います。


大量の新発見のブツに興奮していたのも事実です。

店主は最初から、この新参者の一挙一動を

観察していたようです。


何か、また不愉快になってきました。


「他のお客様もおりますので、決まったら

レジのほうでお預かりしますので持っていらしてください」

・・・・・これが商売人の接客話法と思います。


この店主は、お客に対して一種独特の

観念を持っているな?!

他店では体験した事のないような感情が芽生えました。

このお店は壊れそうな階段を登った、

二階にありました。

ちょうど、上がり口が真ん中で

左右にエサ箱(レコード棚)が配置してある、

結構広い売り場でした。



昭和レコ屋よもやま話


待っていたわたしたちが

それぞれ目的の場所(ジャンル)へ

足を運ぼうとすると同時に

けたたましい音量でレコードが鳴りました。

二人がいると、互いの会話が出来ないくらいの

ボリュームで初体験、初訪問のわたしは

ビックリしてしまいました。

これが、この店のスタンスと知りました。


それもレコードですから、

独特の擦り切れるノイズも相俟って

異様な雰囲気でした。


ともかく、エサ箱へ・・・・・と思ったら、

店主から声をかけられました。

「所持品は、その棚に入れてよ!」

と言われても何の事を意味しているか、

面食らって理解できませんでした。


「そこの足元の棚!!


・・・・・ははぁ、縦横30cmくらいのBOXが

9個くらいある棚がレジ前にありました。

それに持ち込んだ私物をいれろ、という事なのです。


それにしても、馴染みさんなら

習慣化しているから分かるでしょうが、

初めての者には直ぐは気がつきません。

「・・・どうもスミマセン・・・」と

どちらが、お客か分からぬような対話を交わして

言われるままに、空いていたBOXに入れました。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

何か、他の言い方もあるのにな・・・と

不快感を感じましたが、

まずは目的の「輸入中古レコード」の

バーゲン・コーナーへ・・・・。


30歳くらいのわたしだったら、もうこの時点で

キレテいて「客に対する物の言い方があるだろう!(`・ω・´)

とすごんでいる場面でしたが、

ここは年の功?・・・まぁまぁ・・・と自分に言い聞かせながら

「郷に入らば郷に従え」か・・・とエサ箱に向かいました。


広告で、この日は倉庫入りの秘蔵ブツを

廉価で放出するという事も頭にあって

兎に角、大事の前の小事だった感じです。


この店のウリは、

LP一枚だと800円、

三枚買うと2000円というものでした

現在もそうです。


この他、今日は倉庫入りの難アリレコードが

300円から、という感激的なバーゲンの日だったのです。


ですから、さっきの不快な事件も

このバーゲンのおかげ?で

頭から消えていきました。


アメリカ原盤もあったりするので

もう心はうきうきでした。


そして、目的のレコードはワンサカとあったのです

イギリスの60年代モッズたちの、
とりわけ、かっこいい代表格です。
ビートルズと同世代のグループですが
もうこの頃から、黒っぽいR&Bの本格派のきざしが
見えはじめています。
この若さにして、この渋さ=文句なしで
圧倒されました。

サウンドの要は、リーダーのマンの
センスの良さにあります。
デビュー時の代表曲です。



その後、バンドは幾多の変遷を遂げて
マンフレッド・マン・チャプターⅢ、
マンフレッド・マン・アース・バンドと
進化をしていきます。

ブリティッシュ・ロックの至宝、
燻し銀とも喩(たと)えられます。
その頃もお聴きください。

「マイティ・クイーン」は、
ボブ・ディランの曲ですが、
見事なアレンジで驚きました。