『現実はただの鏡だった件について』
序章:停滞の現実
妄想と現実の境界線 – 願いは叶うのか? #003
「おい、俺の人生、どうしたいんだ?」
鏡の中の自分に問いかけたものの、答えは返ってこない。
「こんなことしてても、何も変わらないか…」
結局、いつものように会社に行く。
朝の電車はいつも通りギュウギュウで、俺はいつもの席に座る。窓の外を眺めながら、昨夜のスピリチュアル本の言葉が頭の中をグルグル回っていた。
「現実は意識の反映である」
「ふーん。そんなこと言われてもな…」
心の中で呟いても、現実はちっとも変わらない。
会社に着けば、無駄に元気な若手社員たちがガヤガヤ騒いでいる。
俺の席は窓際の片隅。
まるで倉庫の隅っこに追いやられた荷物みたいな席だ。
「おはようございます!」
元気な声に振り返ると、新人の田中がニコニコして立っていた。
やたらと前向きで、いつも『夢は叶う!』とか『人生は自分次第!』とか言ってるタイプの男だ。
「吉田課長、昨日読んだ本、めっちゃよかったっすよ!」
「ああ、そう」
「『願いは必ず叶う!』ってやつです。吉田課長も読んだら絶対ハマりますよ!」
…俺のことバカにしてんのか?
「ふーん。そりゃよかったな。」
田中はニコニコしながら、自分の席に戻っていった。
まったく、あいつの頭の中はお花畑か?
そんなことを考えながら、俺はPCの電源を入れる。
メールを確認すると、上司の小山からのタイトルが目に飛び込んできた。
件名:昨日のミスについて
「またか…」
メールを開くと、昨日の資料作成にミスがあったと指摘されている。
資料の送付先を間違えたらしい。
「なんで俺ばっかり…」
そう呟いて、椅子に深く沈み込む。
「現実は意識の反映…ねぇ…」
もし本当にそうなら、このミスも俺が引き寄せたってことになる。
「俺が? こんな最悪な現実を?」
まさか。
その夜、家に帰ってまた鏡を見た時、ふと思い出した。
「おい、俺の人生、どうしたいんだ?」
鏡の中の自分は、相変わらず疲れ切った顔でこちらを見ている。
「願いが叶うって? それが本当なら、俺の人生はどれだけ間違った願いをしてきたんだろうな…」
そう呟いた時、ふと視線がまた棚の上のスピリチュアル本に留まった。
「…なんだよ、もう」
本を取り上げると、開かれたページにこんな一文が目に飛び込んできた。
『現実とは、あなたが選んだ映像に過ぎない』
「選んだ映像?」
俺が選んだって? こんな冴えない人生を?
バカバカしい。
でも、そのページを閉じることができなかった。
なぜなら、その一文が、俺の心のどこかに引っかかっていたからだ。
