あまり知られていない日経電子版Wプランの問題点
■まとめ
今回の内容を先にまとめておきます。
(1) 朝刊と夕刊のセット部数は減少傾向にある (1999年比で20%減)
(2) 日経Wプラン(宅配+有料電子版)は、夕刊も契約となる (セット版地域のみ)
(3) 強制的に朝刊+夕刊のセット購読となるWプランの仕組みは疑問
---------------------------------------------------------------------------
(紙の)新聞には朝刊と夕刊の二種類があります。日本での発行部数はそれぞれどれくらいなのでしょうか?最近は新聞を取っていない人もめずらしくなく、また日本の総世帯数が約5200万ほどということを考えると、5000万部前後程度というところでしょうか。
■新聞発行部数
社団法人「日本新聞協会」によると、2009年の新聞発行部数は次の通りです。
・ 朝刊+夕刊 : 1473万部 (以下、セット部数)
・ 朝刊のみ : 3440万部
・ 夕刊のみ : 123万部
合計すると、5035万部です。(2009年の途中での新規契約や契約解除をどの程度含めるかはわかりませんが)
次に、ここ10年でのトレンドを見てみると、以下のグラフのようになります。

朝刊のみ部数は横ばい、セット部数は減少傾向が見られます。これを1999年を期初として指数化すると、よりはっきりとその傾向を確認することができます。セット部数は1999年に比べて2009年では20%減なのです。

同期間の日本の総世帯数はやや増加しています。

先ほど、朝刊の部数は横ばい傾向にあると書きましたが、世帯数当たりの部数で見ると実は減少傾向にあるのです。これは、自分のまわりの印象からも実感できる数字かと思います。
■日経新聞電子版の購読プラン
日経新聞が2010年3月23日より、「日経電子版」というWeb媒体の有料新聞をスタートさせました。プランは有料や無料パターンなど複数用意されています。

電子版のみだと月額4000円ですが、紙の新聞を購読すれば+1000円で電子版の有料会員となれます。これが日経Wプラン(宅配+電子版)です。
■Wプランの問題点
さて、上記の表のWプランをよく見ると、2種類の価格があることがわかります。セット版地域での月額5383円と全日版地域の月額4563円。この違いは何かというと、夕刊の有無にあります。
・ セット版地域 : 朝刊+夕刊+電子版=5383円 (東京や大阪はこちら)
・ 全日版地域 : 朝刊のみ+電子版=4568円
つまり、東京や大阪などのセット版地域に住んでいる場合は、朝刊と夕刊の2つをセットで宅配されることになり、「朝刊のみ+電子版」という選択肢は存在しないのです。
個人的な話になりますが、平日は帰宅から就寝までに家で夕刊を読む時間はなく、そもそも夕刊それ自体に魅力があるとは思っていません。従って、紙の新聞は朝刊のみで十分だと考えています。しかし、私のケースで電子版を有料情報を見たい場合には、「+1000円」ではなく「+夕刊代&1000円」となるのです。
上記の日本新聞協会の数字を見ても、朝刊と夕刊のセット発行部数は明らかに減少傾向にあります。それなのに、なぜセット版地域では夕刊もセットで購読するプランしかないのでしょうか。もちろんこのデータは日経だけではなく、朝日や読売などの新聞も含む数字であり、日経の夕刊は同じ状況とは言い切れません。しかし、全体の傾向とそれほど大きな乖離がないのではないかというのが個人的な印象です。
百歩譲って日経夕刊のニーズがあるとしても、電子版の有料登録をするためには、強制的に朝刊と夕刊のセット購読となる仕組みには疑問を呈せざるを得ません。
■まとめ
以上の内容を整理すると次のようになります。
(1) 朝刊と夕刊のセット部数は減少傾向にある (1999年比で20%減)
(2) 日経Wプラン(宅配+有料電子版)は、夕刊も契約となる (セット版地域のみ)
(3) 強制的に朝刊+夕刊のセット購読となるWプランの仕組みは疑問
有料電子版登録で夕刊もセットする狙いはあえて書きませんが、少なくとも読み手である消費者の立場は考慮されていないのではないでしょうか。
※参考情報
日本新聞協会
http://www.pressnet.or.jp/
新聞発行部数 (日本新聞協会)
http://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.html
日経電子版購読料金一覧
http://www.nikkei.com/help/subscribe/price/
日経全日版地域
http://www.nikkei.com/help/subscribe/price/plan.html#area
今回の内容を先にまとめておきます。
(1) 朝刊と夕刊のセット部数は減少傾向にある (1999年比で20%減)
(2) 日経Wプラン(宅配+有料電子版)は、夕刊も契約となる (セット版地域のみ)
(3) 強制的に朝刊+夕刊のセット購読となるWプランの仕組みは疑問
---------------------------------------------------------------------------
(紙の)新聞には朝刊と夕刊の二種類があります。日本での発行部数はそれぞれどれくらいなのでしょうか?最近は新聞を取っていない人もめずらしくなく、また日本の総世帯数が約5200万ほどということを考えると、5000万部前後程度というところでしょうか。
■新聞発行部数
社団法人「日本新聞協会」によると、2009年の新聞発行部数は次の通りです。
・ 朝刊+夕刊 : 1473万部 (以下、セット部数)
・ 朝刊のみ : 3440万部
・ 夕刊のみ : 123万部
合計すると、5035万部です。(2009年の途中での新規契約や契約解除をどの程度含めるかはわかりませんが)
次に、ここ10年でのトレンドを見てみると、以下のグラフのようになります。

朝刊のみ部数は横ばい、セット部数は減少傾向が見られます。これを1999年を期初として指数化すると、よりはっきりとその傾向を確認することができます。セット部数は1999年に比べて2009年では20%減なのです。

同期間の日本の総世帯数はやや増加しています。

先ほど、朝刊の部数は横ばい傾向にあると書きましたが、世帯数当たりの部数で見ると実は減少傾向にあるのです。これは、自分のまわりの印象からも実感できる数字かと思います。
■日経新聞電子版の購読プラン
日経新聞が2010年3月23日より、「日経電子版」というWeb媒体の有料新聞をスタートさせました。プランは有料や無料パターンなど複数用意されています。

電子版のみだと月額4000円ですが、紙の新聞を購読すれば+1000円で電子版の有料会員となれます。これが日経Wプラン(宅配+電子版)です。
■Wプランの問題点
さて、上記の表のWプランをよく見ると、2種類の価格があることがわかります。セット版地域での月額5383円と全日版地域の月額4563円。この違いは何かというと、夕刊の有無にあります。
・ セット版地域 : 朝刊+夕刊+電子版=5383円 (東京や大阪はこちら)
・ 全日版地域 : 朝刊のみ+電子版=4568円
つまり、東京や大阪などのセット版地域に住んでいる場合は、朝刊と夕刊の2つをセットで宅配されることになり、「朝刊のみ+電子版」という選択肢は存在しないのです。
個人的な話になりますが、平日は帰宅から就寝までに家で夕刊を読む時間はなく、そもそも夕刊それ自体に魅力があるとは思っていません。従って、紙の新聞は朝刊のみで十分だと考えています。しかし、私のケースで電子版を有料情報を見たい場合には、「+1000円」ではなく「+夕刊代&1000円」となるのです。
上記の日本新聞協会の数字を見ても、朝刊と夕刊のセット発行部数は明らかに減少傾向にあります。それなのに、なぜセット版地域では夕刊もセットで購読するプランしかないのでしょうか。もちろんこのデータは日経だけではなく、朝日や読売などの新聞も含む数字であり、日経の夕刊は同じ状況とは言い切れません。しかし、全体の傾向とそれほど大きな乖離がないのではないかというのが個人的な印象です。
百歩譲って日経夕刊のニーズがあるとしても、電子版の有料登録をするためには、強制的に朝刊と夕刊のセット購読となる仕組みには疑問を呈せざるを得ません。
■まとめ
以上の内容を整理すると次のようになります。
(1) 朝刊と夕刊のセット部数は減少傾向にある (1999年比で20%減)
(2) 日経Wプラン(宅配+有料電子版)は、夕刊も契約となる (セット版地域のみ)
(3) 強制的に朝刊+夕刊のセット購読となるWプランの仕組みは疑問
有料電子版登録で夕刊もセットする狙いはあえて書きませんが、少なくとも読み手である消費者の立場は考慮されていないのではないでしょうか。
※参考情報
日本新聞協会
http://www.pressnet.or.jp/
新聞発行部数 (日本新聞協会)
http://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation01.html
日経電子版購読料金一覧
http://www.nikkei.com/help/subscribe/price/
日経全日版地域
http://www.nikkei.com/help/subscribe/price/plan.html#area
情報スクリーニングと情報摂取
私たちのまわりには大量の情報があります。玉石混合の情報が時々刻々と洪水のように流れていきます。
○情報についてのドラッガーの言及
情報についてピーター・ドラッガーは、著書である「ネクスト・ソサエティ」の中で次のように述べています。
---------------------------------------------------------------------------
情報を道具として使うようになるや、それが何であり、何のためであり、どのような形であり、いつ得るべきであり、誰から得るべきであるかが問題になる。 (p.110から引用)
---------------------------------------------------------------------------
職業上、情報リテラシー(活用能力)を高めたいと思っていますが、どうすればいいのでしょうか。個人的には、情報のインプットとアウトプットの両方をいかに高めるかを日頃から意識したいと思っています。
○読むべき本を判断する
最近読んだ本に、「ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術」(立花隆 文春文庫)があります。その中で著者は、情報が氾濫する中で欠かせないのは、素早い情報スクリーニング術と情報摂取術であるとしています(p.41)。
この本ではそういった考え方から、
・ その本が読む価値があるか否か。読む価値があるとして、どの点においてあるのか
・ いまの自分にとってどういう読みを要求している本かを、素早く見極める
・ それにふさわしい読みを選択する
と書かれています。
なお、ここでいう本には小説のようなページを順に読んでいくものは対象としていません。
○まずは全体像をつかむ
では、どのように本を読んでいけばいいのでしょうか。著者が主張するのは、まずは本の構造をつかむことです。その本が自分にとって、精読に値するかどうか、値するとすればどの点かを判断するためです。
まず最初にその本の全体像をつかむために、具体的には以下の手順をとります。
・ はしがきとあとがきをしっかり読み、目次を構造的にしっかり把握する
・ 章単位で全体の大きな流れをつかむ
・ 次に節単位を読み、パラグラフ単位でパラグラフの頭の文章だけを次々に読む
著者は、とにかく頭から終りまで強引に目を通したほうがいいとの意見です。なぜなら目的はあくまで全体像の把握であり、枝葉の理解はその次だからです。まず終わりまでいってから二度目の読みをどうするかを考えます。
以上のことを意識すると、その本を読むべきかどうか、すなわち、自分にとって必要な情報かどうかを少しずつ判断できるようになります。少なくとも自分の読書法は変わったと実感しています。
○最後に
繰り返しになりますが、冒頭でも書いたように、素早い情報スクリーニングと情報摂取が大事であり、その理由は、まさにドラッガーが言うように情報を道具として使うためなのです。
ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる
ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術 (文春文庫)
○情報についてのドラッガーの言及
情報についてピーター・ドラッガーは、著書である「ネクスト・ソサエティ」の中で次のように述べています。
---------------------------------------------------------------------------
情報を道具として使うようになるや、それが何であり、何のためであり、どのような形であり、いつ得るべきであり、誰から得るべきであるかが問題になる。 (p.110から引用)
---------------------------------------------------------------------------
職業上、情報リテラシー(活用能力)を高めたいと思っていますが、どうすればいいのでしょうか。個人的には、情報のインプットとアウトプットの両方をいかに高めるかを日頃から意識したいと思っています。
○読むべき本を判断する
最近読んだ本に、「ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術」(立花隆 文春文庫)があります。その中で著者は、情報が氾濫する中で欠かせないのは、素早い情報スクリーニング術と情報摂取術であるとしています(p.41)。
この本ではそういった考え方から、
・ その本が読む価値があるか否か。読む価値があるとして、どの点においてあるのか
・ いまの自分にとってどういう読みを要求している本かを、素早く見極める
・ それにふさわしい読みを選択する
と書かれています。
なお、ここでいう本には小説のようなページを順に読んでいくものは対象としていません。
○まずは全体像をつかむ
では、どのように本を読んでいけばいいのでしょうか。著者が主張するのは、まずは本の構造をつかむことです。その本が自分にとって、精読に値するかどうか、値するとすればどの点かを判断するためです。
まず最初にその本の全体像をつかむために、具体的には以下の手順をとります。
・ はしがきとあとがきをしっかり読み、目次を構造的にしっかり把握する
・ 章単位で全体の大きな流れをつかむ
・ 次に節単位を読み、パラグラフ単位でパラグラフの頭の文章だけを次々に読む
著者は、とにかく頭から終りまで強引に目を通したほうがいいとの意見です。なぜなら目的はあくまで全体像の把握であり、枝葉の理解はその次だからです。まず終わりまでいってから二度目の読みをどうするかを考えます。
以上のことを意識すると、その本を読むべきかどうか、すなわち、自分にとって必要な情報かどうかを少しずつ判断できるようになります。少なくとも自分の読書法は変わったと実感しています。
○最後に
繰り返しになりますが、冒頭でも書いたように、素早い情報スクリーニングと情報摂取が大事であり、その理由は、まさにドラッガーが言うように情報を道具として使うためなのです。
ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる
ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術 (文春文庫)
書籍 「失敗学のすすめ」
失敗とは何でしょうか?起こしてはならないもの、起こしたくないもの。失敗した自分が恥ずかしい。人は誰しも失敗に対して否定的なイメージを持つものです。
このように失敗に対してマイナスに考えるのではなく、失敗のプラス面にも目を向けるべきと主張するのが「失敗学のすすめ」(畑村洋太郎 講談社文庫)という本です。失敗について考えさせられるいい本だったので、以下に内容を整理しておきます。
■まとめ
今回の記事のまとめです。
・ 大切なのは失敗しないことではなく、失敗に正しく向き合って次に生かすこと
・ 失敗の原因は社会性の強いものから個々人によるものまで様々
・ 失敗情報は伝わりにくく、かつ時間の経過により減衰するという性質がある
■失敗の定義・失敗学とは
まずは本書での失敗の定義です。著者は次のように定義しています。
○失敗の定義
・ 人間が関わってひとつの行為を行ったとき、望ましくない、予期せぬ結果が生じること
・ キーワードは「人間が関わっている」、「望ましくない結果」の2点
次に、書籍のタイトルでもある失敗学について。
○失敗学の趣旨
・ 失敗の特性を理解し、不必要な失敗を繰り返さない
・ 失敗からその人を成長させる新たな知識を学ぶ
○失敗学の基本的な考え方
・ 大切なのは失敗しないことではなく、失敗に正しく向き合って次に生かすこと
■失敗に学ぶという考え方
失敗を起こしてしまった後にどのような対応をとるか、またどう生かすか。失敗から学ぶというのはとても大切なことだと思います。それは、「失敗は成功のもと」「失敗は成功の母」などと言われることからもわかります。
本書では著者も次のように主張しています。「起きてしまった失敗を生かしてそこから真摯に学ぼうとする姿勢があれば、大きな発展の種にすることもできる」。
■失敗の原因
○失敗原因の階層性
起こるべくして起きた失敗、予期せぬ失敗、失敗には様々な原因があります。「失敗学のすすめ」では、失敗にはその原因によっていくつかの階層が存在すると説明されています。(図1)

失敗の原因は個々人に原因のあるものから、組織的なもの・企業全体のもの、あるいは政治の問題や社会全体の仕組みであったりします。上図では、上にいくほど社会性の強いものになりますが、同時に失敗の規模や与える影響も大きくなります。
○失敗原因の分類
また、失敗が例えば組織の原因によるものだとしても、その原因は様々です。本の中では、原因を10個に分類しています。(表1)

なお、10個目の「未知」については、「未知による失敗はいたずらに忌み嫌うものではなく、文化をつくる最大の糧として大切に扱うべき」と書かれています。
■失敗の性質
ハインリッヒの法則と呼ばれるものがあります。潜在的な失敗とそれが顕在化する確率をいわば経験則から導き出した考え方です。具体的には以下のようになります。(図2)

このように、1つの大きな失敗の裏には多くの潜在的な失敗があります。一方で、失敗が表に出ないというのは失敗の1つの性質であると著者は説きます。すなわち、「失敗情報は伝わりにくく、かつ時間の経過により減衰する」という性質です。
■失敗からどう学ぶか
失敗を風化させないためにも、その内容を記述・記録しておくことが重要になります。具体的な記述事項は、以下のようになります。(表2)

また、「仮想失敗体験」という考え方も提示されています。これは、すでに習得した知識を使って自分がその失敗を体験しているかのように行うシュミレーションのことです。いずれにせよ、大切なのは失敗の法則性を理解すること、失敗の要因を知ることではないでしょうか。
著者は失敗を起点にし創造力を養成するためのプロセスとして、理想的には以下の3点を挙げています。
(1) 失敗の体感・実感によって、知識の受け入れ体制を築く
(2) 自分の失敗体験+仮想失敗体験を吸収する
(3) 学習した知識を次々に吸収し、真の理解へ至る
■最後に
失敗をゼロにすることはおそらく不可能に近いことだと思います。もしゼロにできるとすれば、挑戦をしないことです。しかしそれでは、自らを進歩させるチャンス、成長するチャンスも失ってしまうことを意味します。
失敗を恐れ、挑戦自体をやめてしまわないようにすること。自分にも言い聞かせたい言葉です。
失敗学のすすめ (講談社文庫)
このように失敗に対してマイナスに考えるのではなく、失敗のプラス面にも目を向けるべきと主張するのが「失敗学のすすめ」(畑村洋太郎 講談社文庫)という本です。失敗について考えさせられるいい本だったので、以下に内容を整理しておきます。
■まとめ
今回の記事のまとめです。
・ 大切なのは失敗しないことではなく、失敗に正しく向き合って次に生かすこと
・ 失敗の原因は社会性の強いものから個々人によるものまで様々
・ 失敗情報は伝わりにくく、かつ時間の経過により減衰するという性質がある
■失敗の定義・失敗学とは
まずは本書での失敗の定義です。著者は次のように定義しています。
○失敗の定義
・ 人間が関わってひとつの行為を行ったとき、望ましくない、予期せぬ結果が生じること
・ キーワードは「人間が関わっている」、「望ましくない結果」の2点
次に、書籍のタイトルでもある失敗学について。
○失敗学の趣旨
・ 失敗の特性を理解し、不必要な失敗を繰り返さない
・ 失敗からその人を成長させる新たな知識を学ぶ
○失敗学の基本的な考え方
・ 大切なのは失敗しないことではなく、失敗に正しく向き合って次に生かすこと
■失敗に学ぶという考え方
失敗を起こしてしまった後にどのような対応をとるか、またどう生かすか。失敗から学ぶというのはとても大切なことだと思います。それは、「失敗は成功のもと」「失敗は成功の母」などと言われることからもわかります。
本書では著者も次のように主張しています。「起きてしまった失敗を生かしてそこから真摯に学ぼうとする姿勢があれば、大きな発展の種にすることもできる」。
■失敗の原因
○失敗原因の階層性
起こるべくして起きた失敗、予期せぬ失敗、失敗には様々な原因があります。「失敗学のすすめ」では、失敗にはその原因によっていくつかの階層が存在すると説明されています。(図1)

失敗の原因は個々人に原因のあるものから、組織的なもの・企業全体のもの、あるいは政治の問題や社会全体の仕組みであったりします。上図では、上にいくほど社会性の強いものになりますが、同時に失敗の規模や与える影響も大きくなります。
○失敗原因の分類
また、失敗が例えば組織の原因によるものだとしても、その原因は様々です。本の中では、原因を10個に分類しています。(表1)

なお、10個目の「未知」については、「未知による失敗はいたずらに忌み嫌うものではなく、文化をつくる最大の糧として大切に扱うべき」と書かれています。
■失敗の性質
ハインリッヒの法則と呼ばれるものがあります。潜在的な失敗とそれが顕在化する確率をいわば経験則から導き出した考え方です。具体的には以下のようになります。(図2)

このように、1つの大きな失敗の裏には多くの潜在的な失敗があります。一方で、失敗が表に出ないというのは失敗の1つの性質であると著者は説きます。すなわち、「失敗情報は伝わりにくく、かつ時間の経過により減衰する」という性質です。
■失敗からどう学ぶか
失敗を風化させないためにも、その内容を記述・記録しておくことが重要になります。具体的な記述事項は、以下のようになります。(表2)

また、「仮想失敗体験」という考え方も提示されています。これは、すでに習得した知識を使って自分がその失敗を体験しているかのように行うシュミレーションのことです。いずれにせよ、大切なのは失敗の法則性を理解すること、失敗の要因を知ることではないでしょうか。
著者は失敗を起点にし創造力を養成するためのプロセスとして、理想的には以下の3点を挙げています。
(1) 失敗の体感・実感によって、知識の受け入れ体制を築く
(2) 自分の失敗体験+仮想失敗体験を吸収する
(3) 学習した知識を次々に吸収し、真の理解へ至る
■最後に
失敗をゼロにすることはおそらく不可能に近いことだと思います。もしゼロにできるとすれば、挑戦をしないことです。しかしそれでは、自らを進歩させるチャンス、成長するチャンスも失ってしまうことを意味します。
失敗を恐れ、挑戦自体をやめてしまわないようにすること。自分にも言い聞かせたい言葉です。
失敗学のすすめ (講談社文庫)