みんなの労働法「フレックスタイム制~よくある間違いとリスク~」 | 弁護士市川一樹のNet出張所「みんなの労働法」

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皆さんこんにちは。

弁護士の市川一樹です。

 

 今日は、「フレックスタイム制」について、お話させていただきます。

 

 フレックスタイム制とは、労働日ごとに、

「何時から何時まで働くのか」

を労働者の自由な決定に委ねる代わりに、

1週:40時間・1日:8時間の法定労働時間を超えても、ただちに時間外労働とはならない(残業代を支払わなくてよい)とする制度です。

 

 

 労働者一人一人が、自分のライフスタイルに応じて出勤時間や退勤時間を自由に決めることにより、子育てや介護などの様々な生活上のニーズも満たしながら、長く仕事を続けることが可能になります。

 

 労働者が、「出退勤時間」「休憩時間」「労働時間」を自ら決めて、自由に働くのですから、会社は当該従業員の労働時間など管理しなくてもよい(というかできない)ように思えますね。

 

しかし、これはよくある間違いです。

 

 会社は、フレックスタイム制を導入する際に、労使協定で以下の事項を定めなければなりません。

  1. 清算期間(1か月~3か月) 
  2. 清算期間における総労働時間
  3. 1日の標準労働時間

 そして、清算期間内の労働時間が、法定労働時間を超えていた場合には、残業代を支払わなくてはなりません。

 

 例えば、清算期間を3か月と定めたフレックスタイム制について、当該従業員の労働時間が平均して週40時間を超えていれば、残業代を支払う必要があります。

 

 

 また、1か月を超える清算期間を定めたフレックスタイム制については、

  1.  1か月毎に、週平均50時間を超えた労働時間
  2.  1.でカウントした時間を除き、清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が時間外労働時間

としてカウントされ、残業代を支払わなくてはなりません。

 

 

 よって、労働時間管理は必要です。

労働時間管理を怠ると、労働者から、多額の未払残業代を請求されるリスクがあります。

 

 

 また、訴訟になった場合には、裁判所から、付加金(制裁)として、未払残業代と同額の金銭の支払いを命じられるリスクもあります。

(「未払残業代×2」を支払わなければならないことになります)

 

 以上の通り、フレックスタイム制とはいえ、必ず労働時間を管理する必要があります。

 

 しかし、労働時間の管理はそう簡単ではありません。

 労働する際には必ず出社する従業員であれば、まだ管理はできそうです(タイムカード等)。

 しかし、在宅労働者の場合、始業・休憩・終業時刻を、逐次報告してもらわない限り、正確な労働時間は把握できません。

 

 では、管理の難しさを踏まえ、

「始業は〇〇時からしてくれ」

「休憩時間は必ず〇〇時~〇〇時の間にとるように」

「〇〇時には終業してくれ」

と労働者に言いますか?

 

これはもはやフレックスタイム制ではありませんね。

 

このように、労働者のライフスタイルを尊重した「フレックスタイム制」の実現には、かなり高いハードルがあります。

 

 導入を検討している企業、これから見直しを検討する企業の方々は、一度弁護士に相談してみてください。

 

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