回顧録 Vol.2 ロンドン唯一のアイビーショップ | ELEMENTS OF STYLE

回顧録 Vol.2 ロンドン唯一のアイビーショップ

 

私が初めて海外出張に行った1989年にロンドンのリサーチポイントだった J.SIMONS
 

 

当時ロンドンのコベントガーデンにあったこのお店は、ロンドンで唯一のアイビーショップということで、必ずチェックしなくてはならないショップのひとつでした。

 

 

画像は1994年1月に撮影したもの。


 

 


この時ちょうどセールをやっていましたが、ウィンドウ ディスプレイにはスエードのチャッカブーツやレザーのデッキシューズ、キャンプモカシン、ビットローファー、シェットランドウールのセーターなど、確かに当時のロンドンではほとんど見かけないアイビー的なアイテムが見られました。

 

 

店名の横に ”Traditional American Clothing" と明記されているのも、この店がアメリカンテイストであることを物語っています。

 

 

この画像は1996年に撮影したもの。

 

 

 

 

この頃になると、入り口のドアの上に ”The IVY shop” という表示が足され、ウィンドウディスプレイの上には、”Timberland” のブランドロゴも追加されました。


1989年に初めてこのショップを訪れてから、1990年代後半くらいまでロンドンに行くと必ずリサーチに行っていましたが、正直当時の私にとっては、それほど印象に残るショップではありませんでした。


というのも、70年代にアイビーを経験して、その後80年代にアメリカの様々なブランドやアイテムを経験し、BEAMSに入社してからはさらに様々なインポートブランドに触れている自分にとっては、見たことがない特別なブランドがあるわけでもなく”このセレクトなら日本のアメトラ系のショップとあまり変わらないな” という印象でした。


さらに当時の自分の興味が英国のクラシックスタイルであったことも、そう思わせる要因であったと思います。

 

 

1990年代後半頃からイタリアンクラシックの大きな波が来ると、リサーチポイントはフィレンツェやナポリ、ミラノといったイタリアの街に変わり、次第にロンドンから足が遠のくことになります。

 

 

2010年代に入ると2012年のロンドンオリンピックを契機に街も新しくなり、新しい世代の人たちによる新たなショップがオープンしているという情報が入り、2019年の6月に久しぶりにロンドンにリサーチに行きました。

 

 

自分にとっては、実に11年ぶりのロンドンでした。

 

 

当時元BEAMSのスタッフが働いていたセレクトショップ ”TRUNK”を見てから、その通りにあるショップをリサーチしていると、アイビーっぽいウインドウディスプレイに目が留まり、興味をそそられて店内に入りました。

 

 

 

 

 

 

 


オリジナルとセレクトのアイテムと古着が、それほど広くない店内に所狭しと陳列されています。


ロンドンにあまりないアメトラ色の強いショップだなと思いながら店を出て店名を確認すると、JOHN SIMONSという名のお店・・・


どこかで聞いたことがあるなと思っていると・・・

 

 

コベントガーデンにあったJ.SIMONと関係があるのではと思い、再度店内に入り店主らしい人に ”このお店は以前コベントガーデンありましたか?”と聞くと、”J.SIMONSは私の父の店で、2011年にコベントガーデンからここに移転した際に店名をJOHN SIMONSにした” と聞き、”やはりあのコベントガーデンにあったJ.SIMONSか”と懐かしさがこみあげてきました。


この時のロンドンリサーチは新たな発見が色々ありましたが、自分的にはJ.SIMONSが代替わりして今もロンドンで存在感を示していることが最大の発見でした。

 

 

それ以降ロンドンに行く際は必ずリサーチに行っていますが、改めてこの店の歴史に興味があり調べてみました。

 

 

ホームページからの抜粋になりますが、読んでいただければと思います。

 

 

 

60年以上にわたるキャリアを持つジョン・シモンズの英国メンズウェアへの貢献は、比類なきものです。

英国アイビーリーグスタイルの決定版と称されるジョンは、その独自のキュレーション手法によって、世界中のメンズウェアシーンに影響を与えてきました。

 

キャリアを通して、最高級のコンテンポラリーメンズウェアと精巧なヴィンテージアイテムを融合させ、ミッドセンチュリーのアメリカとヨーロッパのスタイルというフィルターを通して表現してきました。 

1955年、ジョン・シモンズは、当時英国紳士服界の名門セシル・ジーのウィンドウドレッサーとしてキャリアをスタートしました。

 

この経験を通して、彼はウィンドウドレッサーとしての鋭い感覚を磨き、セシル・ジーの店舗向かいにあったセント・マーチンズ美術学校で流通貿易のコースを受講しました。 

1960年代初頭:貴重な経験を武器に、ジョンは独立開業しました。

ハックニーのマーケットの屋台で衣料品を販売することから始め、そこで彼独自のメンズウェアのビジョンが形になり始めました。

1963年、ジョンはハックニーのメア・ストリートにClothesvilleをオープンしました。

この店は急成長を遂げていたモッズシーンのニーズに応え、体にぴったりフィットするピーコートやクロストップポケットのFarahトラウザーズなど、スタイリッシュなアイテムを豊富に取り揃えていました。また、Clothesvilleでは、フロントにパッチポケットとボタンダウンカラーを備えたショート丈のシュータージャケットなど、バーバリー風の革新的なアイテムにもひねりを加え、様々な色合いのコーデュロイをあしらっていました。

 

「ケーリー・グラントはこの靴を履いたことがない」といったユーモラスな看板や、「チェット・ベイカーが3時から5時の間にサイン会に来ます」といった架空のアナウンスを掲げた遊び心のあるウィンドウディスプレイが店の魅力を高め、今日まで続く伝統の始まりとなりました。

 

Clothesvilleはジョンにとって最初の公式店舗であり、彼はそこで「同世代の暗黙のニーズを満たす」という本能に突き動かされたと振り返っています。

1964年:クロスビルの成功を基に、ジョンは友人のジェフとともにリッチモンドのヒルライズにザ・アイビー・ショップをオープンしました。

 

 ショップは1964年の夏に正式にオープンし、最初の土曜日の売り上げは60ポンドに達しました。

これは、新進の起業家たちを喜ばせた前途有望なスタートでした。 このショップは、アイビーリーグの美学を英国に紹介する上で重要な役割を果たし、特に象徴的なブランドであるバラクータを英国市場に導入した場所です。

 

 1965年、ジョンはバラクータのG9モデルが、1960年代のテレビ番組「ペイトンプレイス」でロドニー・ハリントンが着用していたものと同じであることに気付きました。

 

 当時の慣例に従い、ジョンは新しいラインをショーウィンドウの中央に置き、「ロドニー・ハリントン」と名付けた手書きのメモを添えました。これが「ハリントンジャケット」という用語の初めての記録となり、メンズウェアの用語を永遠に変えることになりました。

1967年、ジョンは友人のスチュアート・マロイと共同でキングスロードに「スクワイア・ショップ」をオープンし、店舗を拡大しました。元々は古い精肉店だったこの店は、タイルや木製のベンチなど、当時の特徴を多く残していました。大規模な改装を経て、精肉店のテーブルが店のシンボルである靴コレクションのディスプレイとして、店の目玉となりました。この光景は、今でも顧客から懐かしく思い出されます。 


1982年、ジョンはコヴェント・ガーデンのラッセル・ストリートにJ.シモンズをオープンしました。この店は、サヴィル・ロウ、アンダーソン&シェパード、ヘンリー・プールといった一流ブランドのヴィンテージ品を、当時のコンテンポラリーブランドと組み合わせるという、先駆的なアプローチをとっていました。衣料品のリサイクルを高度に合法化することで、ジョンは多くの著名ブランドが追随するトレンドを作り出し、世界のメンズウェアシーンにおける彼の影響力を確固たるものにしました。この手法は、現在ではフランスのパリの職人ブティックから日本の東京まで、至る所で一般的になっています。さらに重要なのは、J.シモンズはジョンがもう一つの礎となるブランド、パラブーツを初めて取り扱った店舗でもあったことです。これにより、J.シモンズは、このフランスのカルト的な靴メーカーの英国における最初の取り扱い店となりました。 

 

2011年:ジョン・シモンズの店舗はメリルボーンのチルターン・ストリート46番地に移転しました。

この店舗は、ジョンのミッドセンチュリー・アメリカンスタイルへのこだわりを体現しつつ、ヨーロッパのセンスと最高級のモダンメンズウェアへの愛情を体現し続けています。ジョン・シモンズは、常に時代の先見の明を持つモダニストにとって、ランドマークであり、指針であり続けています。

 

店内では、職人技が光る日本のデニムやフランスの最高級ワークウェアなど、世界中から厳選した商品を取り揃え、クラシックなスタイルと現代的な感性の融合を表現しています。
 

ジョン・シモンズは、英国アイビーリーグスタイルの権威として、知る人ぞ知る存在として称賛され続けており、英国メンズウェアにおける彼の功績は今後何世代にもわたって受け継がれていくでしょう。

 

 


洋服好きの方にはかなり刺さるヒストリーではないでしょうか。
 

 

改めて彼らのヒストリーを紐解いてみると、英国だけでなく世界のファッションシーンにも影響をあたえたショップであることを知りました。


バイヤーとしては駆け出しで品ぞろえに関しても点でしか見えていなかったとはいえ、”このセレクトなら日本のアメトラ系のショップとあまり変わらないな” と思っていた当時の自分の未熟さを反省しつつ、代替わりしてアップデートされた現在のJOHN SIMONは、新しい世代が活躍する今のロンドンの中でも輝きを放つショップであることを嬉しく思います。

 

 

ちなみに、ホームページを見るとポール ウェラーとコラボしているようです。

 

 


 

御年67歳、相変わらずカッコいいです。

 

 

 

これは1986年のBEAMS京都店のオープンのポスター。

 

 

モデルはポールウェラーでした。


当時もホワイトジーンズにタッセルスリッポン。


40年近く経ってもブレないところが素晴らしいですね。

 

 

 

 

 

自分がBEAMSに入って40年の間に注目されたブランドやショップの8割から9割はなくなっています。

 


そのようなブランドやショップの話もこれからこの回顧録の中でしていこうと思っていますが、1989年に初めて知った1955年創業のロンドン唯一のアイビーショップが、今も歴史を刻み続けていることを本当に嬉しく思います。


JOHN SIMONSはBEAMS FやBEAMS PLUSが好きな方には間違いなく刺さるショップだと思います。


ロンドンに行く機会があれば是非行ってみてください。

 

JOHN SIMONS

46 Chiltern St, London W1U 7QR 

 






 

 

 

 

 

 

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