ヨーロッパ出張レポート アイテム編
前回に続きヨーロッパ出張レポートです。
今回はアイテム編です。
継続的なアイテムもありますが、小さな変化が感じられるように画像をかなり多くピックアップしました。
じっくり見ていただければと思います。
ケーブルのような編み柄からフェアアイル、ノルディック、アーガイル、ボーダー、ヘリンボーン等々、様々な柄のニットがとても多く見られました。
ドレスクロージングのカジュアル傾向が強まる中でニットがキーアイテムになっていて、バリエーションの広がりから柄のニットが再び注目されているように感じます。
ZIP UP SWEATER
イタリアの定番とも言えるジップアップのニットですが、昨今モードやカジュアルでもジップアップのニットやスエットが注目される流れもあり、昨年からリバイバルしている印象を受けます。
PITTI UOMOのブースのディスプレイやミラノのショールームのディスプレイでもよく見られましたが、最近はロンドンのセレクトショップでもジップアップのニットをよく見かけるので、我々日本人が持っているジップアップのニット=イタリアっぽいというイメージも少し変わってきているのかなと思います。
以前はジップアップのニット中にはシャツを合わせるのが定番でしたが、最近はシャツと合わせるディスプレイが少ないというのもジップアップのニットのイメージが変わってきていることを物語っています。
TURTLE NECK
日本は今シーズン11月末まで暖かかったのでタートルネックは先物買いもなく12月まで苦戦したシーズンでしたが、ヨーロッパも暖冬で同じ状況だったようです。
それでも蓋を開けてみたら来秋冬の打ち出しは圧倒的にタートルネックでした。
ディスプレイもとにかくタートルネックを使ったものが多く、誰が見てもタートルネック押しだとわかるくらいです。
ドレスクロージング全体にリラックス感が求められる傾向があるので、その代表的なアイテムでもあるタートルネックが注目されるのは必然的な流れなのかもしれません。
そして、今回フィレンツェがここ10年で最も寒かったように、”暖冬でも結局真冬になれば皆タートルネックを着るよね” というサプライヤーのメッセージでもあるように感じました。
”寒い時期が短くなったからタートルネックではなくモックネックで乗り切ろう” なんていう日本人的な発想は彼らには全くないようです(笑)。
BRUSHED COTTON SHIRTS
ニットに押され存在感の薄いシャツですが、カジュアルシャツにおいて起毛感のあるシャツの提案が増えていました。
特に柔らかく滑らかで上質感のある起毛素材の提案が多く、コットンでありながらカシミアのように滑らかな素材感であることをアピールするサプライヤーも見られました。
また、実際にカシミアを数パーセントミックスした高級な起毛素材のカジュアルシャツも見られました。
チェックもありますが個人的には無地のカラーシャツが気になりました。
ニットを着るまでの間にジャケットに合わせて着られるカラーシャツがあるといいなとここ数年個人的に思っていたので、それと実際の傾向がマッチしたというのが理由です。
ドレスシャツは新しい打ち出しはなにもありませんでした。
どのシャツブランドに行ってもドレスシャツはブースの奥や端の方に数枚置かれているような状況で、カジュアルシャツやシャツジャケットのようなものをメインに展開していたというような状況でした。
OVER COAT
タートルネックと同じく暖冬でオーバーコートの動きが悪かったとサプライヤーたちから聞いていましたが、これも蓋を開けてみたらオーバーコートの打ち出しがとても多かったです。
ゆったりしたシルエットで長めの着丈と言う傾向は変わりませんが、生地のウェイトはどこのサプライヤーも軽めのものを提案しています。
軽めと言っても見た目は変わらず、触ってみると柔らかくて軽いという生地がとても増えています。
ヨーロッパに行くと ”男なら冬はオーバーコートを着なさい” というような無言のメッセージを感じますが、そのような彼らが軸をブラさないためにも生地のウェイトの選択は重要になっていると思います。
”温暖化だから真冬でもコットンのコートでいいよね” なんていうことになったら洋服屋としても寂しいですからね・・・
FOODIE
日本では ”おじさんのパーカ問題” がなにかと話題ですが、今回のPITTI UOMOやミラノのショールームやロンドンのショップディスプレイでもパーカを合わせたディスプレイがとても多く見られました。
さすがにスエットパーカはないですが、ウールのニットパーカーがとにかく多く、パーカのレイヤードはちょっと流行りになっているかなという印象です。
ヨーロッパは日本と違ってアメカジ文化がもともと強くないので不思議なレイヤードもありますが、個人的には上質なニットパーカをドレスカジュアルのスタイルに取り込むのは賛成で、スエットパーカとニットパーカではイメージ的には違うものになると思います。
自分的にはオシャレなおじさんにはニットパーカを着てもらって汚名?を返上していただきたいと思います(笑)。
DOUBLE BREASTED JACKET&SUITS
春夏に続きダブルブレストのジャケットやスーツが多く打ち出されていました。
スーツはオーソドックスな無地と柄のバリエーションが中心ですが、ジャケットは無地のカラーバリエーションも柄のバリエーションも豊富です。
BEAMSでも無地はネイビー以外の色もここ数年売れるようになりましたが、柄ものは難しいというお客様の声もあり、なかなかバリエーションを増やすのは難しい状況です。
来秋冬はいい生地があれば柄もののバリエーションも展開したいと思っています。
これだけ多くのサプライヤーが打ち出していて来場者で着ている人も多いですが、日本はまだまだブレザー以外はダブルブレストに対して難しさを感じている人も多いので、簡単に合わせられるコーディネートを我々が提案していかなければいけないと思っています。
SCARVES&STOLES
ネクタイブランドの出展が激減し、もはや10社も出展していないのではという状況のなか、ネクタイにかわるアイテムとしてスカーフやストールやネッカチーフの打ち出しがかなり増えていました。
ネクタイブランドもネクタイだけの展開では厳しいので、スカーフやストールやネッカチーフを積極的に打ち出しているブランドが増えています。
BEAMSでも展開しているGIERREが典型的で、ここ数年いち早くネクタイ以外のネックアクセサリーに力を入れてきましたが、今回のPITTI UOMOでもいつもブースが賑わっていました。
一方ネクタイしか展開していないブランドは閑古鳥が鳴いているような状況で、今の流れを物語っています。
ストールは英国的なクラシックなものもあれば、イタリア的な薄手のウール生地にプリントしたものもあります。
数年前の英国ブランドを中心とするマフラーブームの時はストールはどちらかと言えば逆風でしたが、昨今の暖冬の影響もあり再注目されているという側面もあると思います。
ネッカチーフは一時の首にぴったりと巻くスタイル一辺倒から色々な巻き方が出てきたこともあり、取り入れやすくなってなっているのかなと思います。
いずれにしても、PITTI UOMO、ミラノのショールーム、ロンドンのショップディスプレイにスカーフやストールやネッカチーフを使ったディスプレイがかなり増えていたのは事実なので、皆さんにお伝えしておきたいと思います。
BEAMSも来秋冬は巻もののバリエーションを増やしていこうと思っていますが、それによってネクタイのバリエーションが少なくなるようなことはないのでご安心ください。
こまごましたものはまだ色々ありますが、今回お伝えしたものがドレス系の大枠での流れと思っていただいて間違いないと思います。
サプライヤーの提案以外でも業界人たちの気分のようなものがトレンドとなることが昨今は多く、特に日本はその傾向が強いのでそれはSNSなどで感じ取っていただくしかないかなと思います。
私のレポートはあくまでもジェネラルな傾向をお伝えしているので、BEAMSでも取り入れるものもあれば取り入れないものもあります。
そして、トレンドとは関係ないものの展開も多々あります。
なので、あくまでも予備知識として ”知らないよりは知っている方がいい” くらいの気持ちで見ていただければといつも思っています。
クラシック系の人たちはトレンドというキーワードに拒否反応を示す人も多いですが、業界人の ”気分” というものの方がわかりにくくて ”気分ってなに?” という拒否反応を示す人も多いように感じます。
感覚的なものも大事ですが、わかりやすく伝えることはもっと大事だと思っています。