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BRILLAのディレクターの無籐が、訳あって自宅から持ってきた80年代後半から90年代前半のオリジナルのジャケットとスーツ。
80年代後半に英国調の流れが出てきたときに、いち早くその流れを取り入れたモデルで、当時スタッフや感度の高い顧客様に非常に人気があったモデルでした。
今日は読者の多くの方が見たこともないと思われる、当時のオリジナルについて少し触れたいと思います。
チェンジポケットの付いたこのジャケットは、80年代にインターナショナルギャラリーで展開していたVALOR(バロール)というオリジナルブランド。
画像だけ見ると、いまBEAMS Fで展開しているチェンジポケット付きのオリジナルとあまり変わらないように見えるかもしれません。
当時は今あるような肩パッドが無いソフトなテーラードはほとんどなかったので、このジャケットもしっかりとした肩パッドが入っています。
ボタンも低めの3ボタンで、上ふたつのボタンをかけて着る人も多かった時代です。
チェンジポケット付きのフラップポケットも今の感じとあまり変わりません。
最近なにかと話題のゴージ位置は低いうえに傾斜もついています。
当時はこのようなゴージ位置と傾斜が一般的だったので、最近見かけるようになってきたこのような襟型を見ても、自分にとっては全く違和感がありません。
と言うか、逆に今っぽい?
袖ボタンは3個。
90年代後半にイタリアのクラシックスタイルが流行るまで、ジャケットの袖ボタンは3個でスーツは4個と言うのが当時英国から学んだルールでした。
ボタンはホーン(水牛の角)で、やはり英国の雰囲気のボタンが付いています。
縁があって真ん中が深くなっているボタンを ”二重たらい” と言いますが、英国のビスポークのジャケットやスーツには、ほとんどこのタイプのボタンが付けられていました。
当時英国調のジャケットやスーツならば、当然このボタンをつけるというのがある意味常識でした。
これも同じくバロールのジャケット。
上のモデルと比べると、ポケットのデザインだけが違います。
このパープルのジャケットはフラップポケットが傾斜しているスラントポケット。
おそらくベージュのジャケットの後に出たモデルだと思いますが、当時は英国調の流れが一般的にはまだそれほど広がっていなかったので、まず3ボタンのチェンジポケットを出してから、より癖の強いスラントポケットのモデルを出したのではないかと思います。
スラントポケットの角度がそれほどついていないのも、あまり行き過ぎると理解されないという判断だったのかもしれません。
スラントポケットの角度がそれほどついていないのも、あまり行き過ぎると理解されないという判断だったのかもしれません。
このジャケット、87年から89年くらいのものだと思われますが、当時はまだワイドショルダー、低い2ボタン、ノーベントのソフトスーツが全盛の時代だったので、当時いち早く3ボタンでチェンジポケットという、英国調のジャケットやスーツを展開していたのはセレクトショップではBEAMSだけでした。
もちろんソフトスーツが全盛の時代なので、”こんなの着れねーよ” というお客様も多かったのですが、その数年後多くのお客様が3ボタン サイドベントのジャケットやスーツを着るようになるのは言うまでもありません。
このバロールというレーベルは、当時BEAMSの常務だった重松さん(現ユナイテッドアローズ 名誉会長)が、自分が着たい服を小さなコレクションで展開していたオリジナルレーベルでした。
その後、鴨志田さん(現ユナイテッドアローズ クリエイティブアドバイザー)が引き継ぐのですが、お二人が退社後、インターナショナルギャラリーのオリジナルに吸収される形で役割を終えました。
このバロールのジャケットはリングヂャケット製でした。
住所を見ると、アメリカ村のジーンズが屋さんの入っているビルの上階にあった頃ですね。
私も何度も行ったことがあるので懐かしいです。
リングさんとは本当に長いお付き合いです。
90年代に入ると本格的に英国ブームが広がり、インターナショナルギャラリーのオリジナルでも、こんな英国色の強いモデルが展開されていました。
Vゾーンが狭い完全な3ボタンで着丈も長く、スラントポケットもかなり傾斜が付いています。
90年代前半頃のオリジナルですが、この頃になると英国のビスポークテイストのジャケットやスーツが注目されるようになり、このような濃い英国テイストのジャケットやスーツがBEAMSのスタッフや顧客様の間で人気となります。
90年代前半頃のオリジナルですが、この頃になると英国のビスポークテイストのジャケットやスーツが注目されるようになり、このような濃い英国テイストのジャケットやスーツがBEAMSのスタッフや顧客様の間で人気となります。
パンツも1インプリーツのサイドアジャスター。
今のBEAMS Fのオリジナルのように、ピストル型のサイドアジャスターが付いています。
ワンインプリーツのサイドアジャスターは、当時HACKETTやCORDINGSでも展開していたので、ある意味90年代の英国の定番だったと言えます。
この頃になると、リチャード ジェームス、オズワルト ボーテン、ティモシー エベレスト、マーク パウエル、ジョン ピアーズなどのニューテーラーと呼ばれる人たちが出てきて、新旧含めて英国のビスポークテイストの流れがさらに注目され、BEAMSもインターナショナルギャラリーだけでなく、BEAMS Fでもチェンジポケットやスラントポケットのジャケットやスーツ、サイドアジャスターのパンツ、ダブルカフスのシャツなど、英国色の強いアイテムが人気となります。
80年代はジョルジョ アルマーニやジャンフランコ フェレ、ジャン二 ベルサーチなどのイタリアンデザイナー達の服が大流行し、それを拡大解釈したソフトスーツなるものが日本でも大流行していたので、クラシックにとってはある意味逆風の時代でした。
その流れを変えたのが80年代後半あたりからの英国調の流れで、それはある意味なんでもありだったドレススタイルの流れを正しい方向に戻すターニングポイントだったのだと思います。
そして、ニューテーラーの流れと並走するかたちで90年代の中ごろあたりからイタリアのクラシックが注目され始め、2000年代に入ると世界的にも大きな流れになるのですが、その過程において90年代の英国調の流れが大きく影響していることは意外と知られていません。
それについてはかなり深い話になるので、機会があれば少しづつお知らせしたいと思います。
最近は、英国調、ブリティッシュ アメリカン、フレンチアイビーと、80年代から90年代の流れがリバイバルしているので、自社のアーカイブを再チェックし、自分の中で時系列を整理するのはとても大事なことなんです。
流れは繰り返すので、過去を知り、それを咀嚼して時代性を加味して企画やバイイングをすることが、自分にとって重要なことなんです。
流れは繰り返すので、過去を知り、それを咀嚼して時代性を加味して企画やバイイングをすることが、自分にとって重要なことなんです。
そして、来年の秋冬は70年代の流れがチラホラ見えますが・・・
それはこれからしっかり検証していきます。
それはこれからしっかり検証していきます。