パリっぽいALDEN | ELEMENTS OF STYLE

パリっぽいALDEN

 
オールデンについて調べたいことがあり、昨年発行された2ndのバックナンバーのALDEN特集を取り寄せました。
 
 
 
 
調べたいというのは、この表紙の靴のこと。
 
 
オールデンファンの方なら知らない人はいない、通称V-TIP(正式なモデル名はARGONQUIN)。
 
 
このモデル、今はアメリカ色の濃いモデルと思っている方が大半だと思いますが、もともとはパリの伝説のセレクトショップ ”HEMISPHERES” (エミスフェール)が洋服屋としては初めてオーダーしたもので、我々世代にとってはアメリカというよりもフレンチアイビーを代表するモデルなんです。
 
 
私がBEAMSや業界の先輩方から聞いた、このモデルが誕生したエピソードをご紹介します。
 
 
 
エミスフェールのオーナーだったジャン セバスチャンとピエール フルニエがパリのアンティークマーケットで見たことのないアメリカ製の靴を見つけます。 その靴のインソールにはJACOBSONというブランド名が刻印されており、早速彼らはこの靴がどこで作られているのか調べ始めます。 いろいろ調べた結果、ニューヨークのある靴屋で売られていることを知り、彼らは実際にその店を訪ねます。 訪ねた店は普通の靴屋ではなく、足に問題を抱える人の矯正靴を扱う専門店でした。 そして、その店で彼らは探していた靴を見つけます。 その靴を自分たちの店で扱いたいと店員に伝えると、その靴はALDENで作られていることを知らされます。その後エミスフェールがALDENにこのモディファイドラストのV-TIPをオーダーし、1980年代前半に彼らの店で取り扱われ始めます。
 

 
私が知りえる情報をまとめると、このような感じになります。
 
 
また聞きで彼らに直接聞いた話ではないので、正しいエピソードなのか確信はないのですが、いろいろな方々から伺った話をまとめると、このようなストーリーで大きな間違いはないようです。
 
 
少し前に、このV-TIP誕生のエピソードをどこかで見た覚えがあり、いろいろ調べると、この2ndのALDEN特集号に掲載されていました。
 
 
 
 
エミスフェールの共同経営者だったピエール フルニエさんがエミスフェールを閉店した後、パリにオープンしたANATOMICAを日本で運営するサーティー ファイブ サマーズの代表の寺本欣司さんがモディファイドラストのV-TIPの誕生秘話を誌面で紹介しています。
 
 
寺本さんがピエールさんから直接聞いた話が書かれているので、これが最も正しい話だと思います。
 
 
内容を読むと、細かい部分はわからないですが、大筋で私の情報は間違っていないようです。
 
 
寺本さんとは旧知の仲ですが、ずいぶんお会いしていないので、会う機会があれば是非この話を伺いたいと思っています。
 
 
そして、間違いがあれば修正して皆さんにも再度お伝えします。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
エミスフェールがこの靴を扱い始めると、見たこともないオールデンのモデルに日本人のバイヤー達が注目します。
 
 
BEAMSもモディファイドラストのV-TIPを展開しようとALDENのカタログをチェックしますが、そんなモデルはどこにもありません。
 
 
ALDENに直接問い合わせてみると、通常のモデルではなく、オーソペティック(医療用)のモデルなので、オーソペティックのカタログを送るのでそれを見てくれということ。
 
 
 
 
ちなみに、私が保管している80年代から2000年代前半くらいまでのALDENのレギュラーモデルのカタログ。
 
 
年代ごとにチェックすると、モデルがほとんど変わっていないのがわかります。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして、これがオーソペティックのカタログ。
 
 
 
 
表紙にFOOT BALANCE SYSTEMと書いてあるのがわかります。
 
 
右のモデルがモディファイドラストのV-TIPです。
 
 
モデル名は "Six eyelet algonquin blucher oxford" と書かれています。
 
 
この二つのカタログは90年代以降のモノなので、当時送られて来たカタログはモノクロの小さなカタログだった記憶があります。
 
 
 
 
 
 
 
 
送られて来たオーソペティックのカタログを見ると、V-TIPは載っているものの、モディファイドラストと言うだけあって、ラストの振り(曲がり具合)が何種類もあります。
 
 
私もそのオーダーの場に立ち会わせてもらったので、鴨志田さん(現ユナイテッドアローズ)と当時の上司でバイヤーだった松山さんがラスト選びに苦戦していたのを覚えています。
 
 
そして、初回のオーダーが入荷すると、エミスフェールのそれとは少し異なる、おとなしめのモディファイドラストのV-TIPが入荷するという苦い経験がありました。(苦笑)
 
 
その後、雑誌BEGINでオールデン特集が何度も組まれ、日本でオールデンの大ブームが起きると、各社がモディファイドラストのモデルを別注で作るようになり、世界的にも珍しいオーソペティックのモデルがドレスシューズの定番となり現在に至ります。
 
 
そして、オールデンの人気が増せば増すほど、モディファイドラストのオールデンが世に出たきっかけは、パリのエミスフェールだったことを知る人も少なくなってしまいました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
1988年~90年のパリで撮ったエミスフェールの写真がありますのでお見せします。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
国やジャンルにとらわれず、世界中から良いものを集めた素晴らしいセレクトショップでした。
 
 
1979年にオープンして、1993年に閉店したので14年間しかやっていなかった伝説のセレクトショップです。
 
 
94年に共同経営者だったピエール フルニエさんがANATOMICAをオープンさせ、そこで今もモディファイドラストのオールデンを扱っているので、ある意味アナトミカがエミスフェールの魂を継承しているとも言えます。
 
 
なので、私にとってはいつになってもモディファイドラストのオールデンはパリっぽいオールデンなんです。
 
 
そんなウンチクどうでもいいという人もいると思いますが、モディファイドラストのオールデンを持っている人は、”そういえば中村が パリっぽい靴だって言ってたな” と思って履いていただけると嬉しいです。
 
 
先人の思いがつまっているモノは、それを理解して身に着けたい。
 
 
今日はそんな思いでブログを書きました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私がALDENを履いてるイメージがないとよく言われますが、20代~30代のころはかなり履いていました。
 
 
3年前にALDENについてこのブログで書いていますので、ご興味のある方はこちらもご覧ください。
 
 
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