10年以上前の服
暫く着ていないのですが断舎利しない服が結構あります。
それでも5年くらい経つとさすがに古く感じてしまい、処分するものが多くなるのですが、ずっと持ち続けているものもあります。
最近はクラシックな傾向が戻ってきているので、一巡して10年以上前に着ていた服をまたクローゼットから引っ張り出して着ることが多いです。
今回はそんな10年以上前に買って今また新鮮に感じている服をご紹介します。
10年以上前に購入した BOGLIOLI のジャケット。
今はないSARTORIAラインのジャケットです。
当時既にボリオリは製品染めのジャケットを主力にしようとしていた時期でしたが、BEAMSはこのサルトリアラインに注目していました。
当時日本でボリオリのテーラードラインは接着芯のマシンメイドラインをバイイングするショップが多かったのですが、BEAMSは毛芯仕立てのサルトリアラインに拘ってオーダーしていました。
もともとボリオリはLUCAS MODA(ルーカス モーダ)という会社で、当時メゾン系ブランドのスーツやジャケットなどを製造する優秀なファクトリーでした。
当時は特にETROのスーツやジャケットを製造していることで有名でした。
毛芯縫製だけでなく、上衿もつなぎの無い一枚襟で作られていました。
こういうところも当時サルトリアラインをオーダーしていたポイントでした。
現在当時のボリオリクラスと同等のブランドで一枚襟で作られているブランドはほぼ見当たりません。
それどころかイタリアのブランドで20万円以上するスーツでも2枚襟になっているブランドが多いのが現状です。
BEAMSの日本製のオリジナルは今でも一枚襟に拘っているので、アイロンで生地を成形できないコットン素材と一部のカジュアルなジャケット以外は今も一枚襟で作られています。
因みに、これが2枚襟。
上衿の内側の真ん中に縫い合わせて繋げられている部分があります。
これは上衿を作るときの工程を簡略化できるので、いわゆるマシンメイドのファクトリーはほぼこの作りになっています。
イタリアだけでなく、日本の工場もこの一枚襟ができなかったり、やりたがらない工場が多くなっているのも実情。
洋服はスペックだけで語られるものではなく、作りが凝っていれば何でもいいわけではないので、私も二枚襟のものも普通に着ますが、高価なブランドはできれば一枚襟で作って欲しいというのが正直なところです。
この襟の作りに関してはもっと深い部分があるので、また別の機会に書きたいと思います。
生地はベージュにブラウンのウィンドウペンという今の流れにピッタリの色柄です。
太めの襟幅も今の気分。
このジャケット、イタリアの取引先の人達にすごく評判がいいんのです。
以前から着ていると結構褒められることが多いです。
ベージュにブラウンという上品なカラーリングは、いかにもイタリア人が好きそうな色合いです。
ボタンは今見るとちょっと古臭く感じます。
当時はブランドの特徴を出すために、各ブランドが特徴のあるボタンを使っていました。
ボタンはオーソドックスなブラウンのナットボタンに替えました。
それと、袖口の幅が広かったので5mmほどお直しで細くしました。
こういう微調整は必要ですが、とても10年前の服には見えません。
ボリオリのサルトリアラインのジャケットは何着か持っていましたが、残っているのはこの1着だけ。
断舎利しなくて良かったです。
これも10年以上前に購入したSARTORIA PARMAのコート。
当時MACOと言われていた現在のCARUSOのファクトリーで作られていたBEAMSのオリジナルモデルです。
フロントは当時のテーラードコートの主流だった比翼仕様。
マルティンガーラ(バックベルト)は長さ(絞り具合)と位置に拘って作ったことを今も覚えています。
当時あまりなかったシングルでターンナップのカフは今見ても新鮮です。
サイズは42ですが、確実に今の46くらいのサイズ感です。
着丈も97㎝と長いので、まさに今の流れに合っています。
因みに、このコートも上衿が一枚襟です。
カルーゾのコートは接着芯を使わないフル毛芯による本格的な仕立てが当時から特徴でしたが、それは今も変わりません。
今やフル毛芯のイタリア製のコートで20万円以下の値段のものはおそらくカルーゾだけでしょう。
このコートも当時ETHOMASの生地を使って15万円以下で売られていたので、カルーゾは当時から相当コストパフォーマンスが高かったと言えます。
ただ、イタリアン クラシック全盛のころはテーラードの本質よりも値段が高いものが良いという風潮が強かったので、カルーゾが単に安いコートとして扱われていたのは今での残念に思っています。(苦笑)
このコート、今シーズンかなり着ています。
ピタピタではないゆとりのあるシルエットと長めの着丈はまさに今の気分です。
比翼もカジュアル傾向の頃は堅く感じていましたが、クラシックな傾向が戻ってきている今では逆に新鮮に感じます。
このシルエットとディティールであれば、これから先また5年は着られそうです。
かなり長い間着ない時期もありましたが、一巡して今また新鮮と言う感じです。
これも断舎利しなくて良かった一着です。
そして、もう一着はRAFFAELE CARUSOのコート。
上のサルトリア パルマと同じカルーゾでスミズーラしたコートです。
当時このRAFFAELE CARUSOのラインがカルーゾの最上級ライン(ハンドライン)でした。
CASENTINO(ナッピング ウール)のポロコートです。
ディティールも基本に忠実なポロコートです。
このコートは個人的にスミズーラでオーダーしたものですが、当時スタッフやお客様に非常に評判が良かったので、翌年店用にオーダーしたと言うエピソードのコートです。
当時のPITTI UOMOはカセンティーノのコートを着た人が非常に多かったので、自分もそれに影響されて初めて作ったナッピングウールのコートがこのコートでした。
生地がかなり重くて、おまけにダブルのポロコートなので実際に着てもかなり重いです。
その後、色々な経緯もあってもう少し軽いナッピングウールが出て来たので、今はこんなに重いコートにはならないでしょう。
私より上の世代でクラシックな服が好きな人は、この当時の重いナッピングウールの方が好きだという人も多いですが、私もそのひとりです。
ゆったりしていて着丈が長くて重い、まさにクラシックスタイル全盛の頃のサルトリアで仕立てたコートのような趣があります。
オーダーした時は肩パッドが入っていましたが、数年前に肩パッドを抜くお直しをしました。
当時のものが今着られると言っても多少のモディファイは必要です。
それが古いものを今の雰囲気で着るときの重要なポイントでもあると思います。
このコート、イタリア出張に持って行こうと思っているのですが、いかんせん重いのとかさばるのがネック・・・
以前はこのコートを着ていると現地の人たちにすごく褒められたものです。
イタリアのクラシック好きの人であれば誰でも知っているヘリテージな素材、ゆったりしたシルエットと長い着丈もまさに今のクラシック回帰の流れを象徴しているようなコートです。
現地の人が見ても、今またナッピングウールのポロコートは魅力的に見えると思います。
クラシックは変わらないと言われますが、クラシックにも時代時代で流行は必ずあります。
この10年くらいで見れば、その流行はスリムなシルエットとドレススタイルのカジュアル化だったと言えるでしょう。
そして、またクラシックな流れが戻ってきているので、10年以上前に買ったジャケットやコートが新鮮に感じるのも自然な流れです。
でも、10年以上持ち続けるのは難しいですよね。
新しい流れが来ればクラシックな服でも古臭く感じてしまうのは仕方ないこと。
それが時代性だと思います。
スリムなシルエットのものもすっと持ち続ければまた着られる時が来るかもしれません。
何はともあれ、ワードローブが3着増えました。
この中でどれかはイタリア出張に持って行きます。
イタリア人もこれが10数年前のものとは思わないでしょうね。(笑)