チェンジポケット | ELEMENTS OF STYLE

チェンジポケット

 

ここ数年、英国調やクラシック回帰の流れが来ていることもあり、イタリアのサプライヤー(ブランド)のコレクションでも増えているチェンジポケット。

 

 

ビームスでもチェンジポケットを付けたモデルを多く展開していますが、完売するものも多く,,、流れに敏感なお客様には受け入れられている一方で、突然出て来たトレンドだと思って敬遠されるお客様が多いのも事実。

 

 

90年代の英国調ブームを経験していない世代にとっては見たこともないディティールと言うのも仕方ないことだと思いますが、過去にイタリアでもチェンジポケットが大流行したことがあるので、その時代を知る人たちにとっては全く違和感がないどころか、むしろ懐かしいディティールだと思います。

 

 

当時の写真がありますのでお見せします。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この画像は90年代前半から98年くらいまでのミラノやフィレンツェのセレクトショップのディスプレイ。

 

 

ジャケット、スーツだけでなく、コートもチェンジポケットが付いていますが、さらに英国感の強いスラントポケット(斜めポケット)も見られるのが当時の流れを物語っています。

 

 

ほとんどのショップが今も現存するショップで、ディスプレイされているジャケットやスーツやコートも皆さんが良く知っているイタリアのブランドのモノです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

90年代はファッション全体で英国調が大きなトレンドになっていたので、イタリアのクラシックも英国スタイルに大きく影響されていた時代でした。

 

 

上の画像でも分かるように、襟の返り位置の高い英国のサビルローのようなスーツやジャケットをイタリアのブランドも積極的に打ち出していた時代でした。

 

 

前回のブログでお伝えしたように、イタリア人は英国に対する憧憬が非常に深いので、英国調がトレンドになれば英国のスタイルを取り入れるのは当然の流れなのです。

 

 

余談ですが、80年代後半から90年代前半頃にはバブアーのオイルドジャケットやハスキーやラベンハムのキルティングジャケットもイタリアで大流行しました。

 

 

当時はドレスアップしたスタイルにオイルドジャケットやキルティングジャケットを着た人がPITTIの会場だけでなく、フィレンツェやミラノの街でも多く見られました。

 

 

最近SNSでイタリアブランドのジャケットにバブアーを合わせている人を見掛けることが多いですが、私だけでなく当時のイタリアを知る人達にとっては新しいと言うよりは懐かしいと思う人の方が多いのではないかと思います。


そのオイルドやキルティングジャケットの流行の後にテーラードコートの大ブームが起きて現在に至っているという流れなのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このチェンジポケットのジャケット、ディティールは同じでも当時流行ったものがそのままリバイバルしている訳ではありません。

 

 

当時は肩パッドがしっかり入った構築的な仕立てが主流だったので、今の軽く柔らかい仕立てとは真逆だったと言えます。

 

 

フロントボタンに関しても、Vゾーンの浅い3ボタンで英国調をより強くアピールするのが当時のスタイルでした。

 

 

その後、90年代後半から2000年代前半にイタリアン クラシックブームが起きると、ナポリのサルトリアのテクニックが注目されるるようになり、徐々に柔らかく軽い仕立てと柔らかくロールする段返りの襟が主流となり、エレガンスを追求するような流れも出てきたことで、腰ポケットのフラップを省いたスーツがイタリアの定番スタイルになったのです。

 

ジャケットはカジュアルな傾向が強まるにつれて、チェンジポケット→フラップポケット→パッチポケットという流れでディティールが変化していきます。

 

 

その過程において洗いや後染めのジャケットが流行したこともパッチポケットのジャケットが主流となったひとつの要因だと思います。

 

 

このように、クラシックなアイテムは変わらないものではなく、仕立てもシルエットもディティールも、その時代の流れを取り入れながら変化していくものなのです。


つまり、チェンジポケット、プリーツパンツ、ベルトレス、ゆったりとして着丈の長いコート等、ここ数年出てきているモノは全て過去に流行したモノが当時のままではなく、今の時代性を加味したうえで再び注目されているのであって、とっぴおしもなく新しいモノが突然流行ものとして出てきているわけではないのです。

 

 

情報に流されることはないですが、流れを全く取り入れなければいつの間にか古臭いスタイルになってしまうのも事実。

 

 

来年の秋冬も英国調の流れは続くので、英国的なアイテムやディティールが更に注目されるのは間違いなさそうです。

 

 

最近英国という言葉が多く出てくるので誤解されている方も多いと思いますが、要はイタリアと英国のミックススタイルが今の流れであるということなのです。

 

 

チェンジポケットが嫌いな人は取り入れなくても流れに乗り遅れることはないのでご安心ください。

 

 

ただ、皆さんが注目しているようなイタリアのブランドも英国的なディティールを積極的に取り入れる傾向にあることは頭の片隅に入れておいていただければと思います。

 

 

なので、小さいチェンジポケットが付いただけで余計なディティールとか過剰なディティールとか思わないでくださいね。(笑)