MEN'S EX 9月号連載
MEN'S EX 9月号
今回の表紙はV6の岡田准一さん。
シングルピークドラペルのシンプルなスーツコーディネートがいいですね。
スーツはトムフォード。
秋冬のトレンドでもあるシングルピークドのスーツですが、トムフォードはファーストシーズンからシングルピークドのスーツを展開していたので、トムフォードにともはや定番と言えるモデルなのではないでしょうか。
私の連載 ”中村達也の今、買いのアイテム”
今回のテーマは ”ヴィンテージ調のプリントタイ” です。
秋冬のバイイングを行った今年の1月のPITTI UOMOやミラノのショールームでもヴィンテージ調のプリントタイが多くのサプラーヤーから提案されていました。
ご覧のように、多くのネクタイブランドがヴィンテージ調のプリントタイを打ち出していました。
余程流れに疎いかセンスの無いネクタイブランドでなければ、ヴィンテージ調のプリントを提案していないブランドは無いと言ってもよいでしょう。
ネクタイブランドだけでなく、スーツブランドのディスプレイでもヴィンテージ調のプリントタイを合わせたコーディネートが多く見られました。
特にLARDINIのサルトリアラインのディスプレイは、ほとんどがヴィンテージ調のプリントタイを合わせていたのが印象的です。
本誌連載ページでも解説していますが、プリントの良さは織で柄を表現するジャガードタイと比べると、細かい柄や曲線を繊細に表現できることと、色の深みに関しても繊細に表現できることです。
このヴィンテージ調のプリントタイ、柄はペーズリーや幾何学模様が中心で、大きめの柄で表面の光沢をおさえたマダ-プリント調が多いのも今の流れであると言えます。
マダープリントは日本では草木染めと言われ、古くは天然の染料で染めるハンドプリントで、深みのある独特の色合いが特徴ですが、現在はインクジェットと呼ばれるプリンターで染めるマダ-プリント調が主流になっています。
因みに、伝統的なハンドプリントを行う生地メーカーも現在は英国とイタリアで数社のみとなっています。
つまり、大柄でマットな色合いと滑らかな表面感のプリントタイが今の流れであると言えるでしょう。
素材はシルクがメインですが、ウールやカシミアなどにヴィンテージ調のプリントを施したものも多いです。
先日私のInstagramでアップしたスーツコーディネートのネクタイもウールのヘリンボーンの生地にペイズリーのプリントをのせたもの。
深みのあるインディゴ風のカラ―が特徴のペイズリータイです。
このプリントタイ、80年代から90年代に流行したことがあります。
当時は英国もイタリアもアメリカも、ネクタイブランドはプリントタイに力を入れてコレクションを作っていた時期で、、ETROのカシミール柄のネクタイも80年代に大流行しました。
その後90年代中頃の英国調ブームから2000年代前半のイタリアンクラシックの頃はジャガードタイが主流だったので、プリントタイ不遇の時代だったとも言えます。
このような流れを見ても、ヴィンテージ調のプリントタイは突然出てきた一過性のトレンドではなく、過去に流行したモノがアップデートされてリバイバルしていると言えるでしょう。
この流れは来年の春夏も続いているので、安心してコーディネートに取り入れてください。
因みに、6月のイタリア出張では私もヴィンテージ調のプリントタイでした。
大柄のジオメトリック柄は80年代のアメリカンブリティッシュ的なイメージでもあります。
まだBEAMS Fでアメリカブランドのネクタイバイイングしていた頃、こんな柄のネクタイをバイイングしていました。
ヴィンテージ調のプリントタイは、私にとってはトレンドと言うより懐かしいアイテムです。
ご興味にある方は是非コーディネートに取り入れてください。