サスペンダー
数年前からPITTIの会場でも見かけるようになったサスペンダー。
一般的に広がるかどうか注目していましたが、昨年の6月のPITTIではサスペンダーを付けた人がかなり増えていました。
ご覧のように、ジャケットやスーツスタイルからカジュアルスタイルまで、サスペンダーをコーディネートに取り入れる人が明らかに増えていました。
日本でサスペンダーが注目されたのは、近年では80年代後半の英国調ブームの時。
当時はサスペンダーはアメリカ英語なので、英国的に”BRACES” (ブレイシーズ)と言わないと先輩たちに怒られたものです。(笑)
因みに、イタリアでは GIARETTIERE と言われています。
当時は英国のALBERT THURSTON(アルバート サーストン)が定番的なブランドでした。
特に帯がフェルトでエンドがガット(鯨筋)でできているモノが最も英国的だと言われ、BEAMSのスタッフの中でもマストアイテムと言われていました。
因みに、今はガットエンドのモノは作られていません。
英国ブランド以外でもアメリカのブランドのモノもあり、アメリカのモノは当時ラルフローレンやポールスチュアートで展開していたような、エンドがレザーメッシュのタイプのモノもありました。
そして、87年に公開されたアメリカ映画 WALL STREETでマイケルダグラスがサスペンダーをしていたこともあり、当時アメリカでもサスペンダーの人気が高かったようです。
その後、日本では90年代の中ごろにイタリアンクラシックブームに火が付くと、徐々にサスペンダーの人気も翳りが見えるようになります。
当時からイタリア人はベルトを重要なアクセサリーとして考えていたので、クロコダイルなどのエキゾチックレザーや、色モノ、帯幅が広いものなど、我々日本人から考えると主張の強いベルトをした人が多かったので、イタリアでサスペンダーをしている人を見るのは稀でした。
それから20数年、私がイタリアの製品をバイイングしてからは、おそらくPITTIでこれだけサスペンダーをした人を見かけるのは初めての経験です。
サスペンダーはパンツのラインを綺麗に見せる効果があるのですが、その話は長くなるので別の機会にしたいと思います。
現在のイタリアのサスペンダーのブームは、80年代に私がイギリス人や先輩たちから教わったサスペンダーのセオリーなどは考えずに、単純にアクセサリーとして取り入れている人が大半のように感じます。
サスペンダーというモノに対しての先入観がないぶん、その取り入れ方も様々であると言えます。
言い換えれば、イタリア人の定番的なアイテムでもある、ウオレットチェーンのような感覚で取り入れているようにも感じます。
ですので、我々日本人が敬遠しがちなクリップタイプをした人も多く、ジャケットを着ていても明らかにサスペンダーが目立つようにポーズをとっている人が多いのはスナップを見ても明らかで、実際に会場でもサスペンダーをアピールした人が多かったです。
今後プリーツ入りのパンツやベルトレスのパンツが増えていくと、サスペンダーが更に注目されるのは間違いなさそうです。
BEAMS Fのディレクター西口も、いち早くサスペンダーを取り入れています。
一番上の画像は、古着の501にリベットボタンを付けてサスペンダー仕様にしています。 このスタイルでPITTIの会場でかなりスナップを撮られていました。 ハットとサスペンダーはスナップを撮られる最強の組み合わせですね。(笑)
中段は、手持ちのSTILELATINOのスーツにサスペンダーボタンを付けています。 手持ちのスーツもサスペンダーを取り入れるだけで随分雰囲気が変わります。
下段は、オリジナルのスーツにサスペンダーをしています。 プリーツパンツにサスペンダーは相性がいいので、見た目もクラシックでエレガントな印象が増します。
西口は80年代の英国ブームをリアルに経験していない世代なので、先入観なく純粋にPITTIでサスペンダーをしている人を見て新鮮に感じ、それを自身のコーディネートにいち早く取り入れています。
今のサスペンダーの取り入れ方は、それでいいのではないかと思います。
サスペンダーは英国的なアイテムなので、我々世代は何かと色々薀蓄を考えがちですが、今の時代はイタリア人のようにアクセサリー感覚で自由に楽しめばいいのではないでしょうか。
もちろん、基本的な薀蓄やルールは知っておくに越したことはありません。
英国発信からイタリア発信へ。
サスペンダーは今確実に注目されるアイテムになっています。
今後は更に増えそうな感じです。
その根拠は、次の秋冬の流れを見ても明らか。
それについては、また別の機会に・・・