ナポリへ、ようこそ。 | ELEMENTS OF STYLE

ナポリへ、ようこそ。


私が海外出張に出かけるようになって20数年になりますが、最初の頃はパリやロンドンがメインで、


その後、PITTI UOMOの規模が大きくなっていくににつれて、フィレンツェやミラノへ行く機会が多くなりました。



最近でこそナポリへ頻繁に行くようになりましたが、90年代中ごろは、私にとってナポリはまだ未開の地で、


様々な人から ”ナポリはデンジャラスな町だ” と聞かされていました。



その頃、ある雑誌でこんな特集が組まれました。



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Esquire 日本版、1994年 6月号、”ナポリへ、ようこそ。” という特集です。



この号は、私がナポリの様々な文化について初めて触れるきっかけとなった特集でした。


発行当時、まだ行ったことのないナポリに関して、誌面を何度も読み返しイメージを膨らませたものです。





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巻頭ページには、人間が生み出していくものすべてを包み込んでいるミステリーの町”


と書かれていますが、その当時はその意味が分からなかったのですが、現地行って色々な人たちと関わり、


様々な文化に触れた今の自分が思うのは、ナポリはまさにミステリーの町です(笑)。





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今では恵比寿に支店もできた ダ・ミケーレ” も、当時はこの特集を見て、


”どんなに美味しいピザなのだろう” と想像するしかありませんでした。



このページで、”ピッツア一枚 4000リラ” と書かれていますが、当時は1リラ=¥0.09 程度だったと


思うので ¥360 くらいだったことになります。



私が初めてダ・ミケーレに行ったときは、すでにリラからユーロになっていて、ピザと飲み物で6ユーロでした


ので、当時の倍以上の値段になっていたことになります。



それでもピザと飲み物(コカコーラかビールかミネラルウオーター)で、たった6ユーロで食べられるというのは


ビックリしたものです。





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今では特別なものではなく、有名百貨店の食材売り場で買える、モッツアレラ、スカモルツァ、


サルシッチャ、ババ、リモンチェッロ も、その当時ミラノやフィレンツェのレストランで食べていましたが、


「ナポリで本場のモノを食べたらどんなに美味しいのだろう」 とイメージを膨らませたものです。





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当時は、まだ名前しか知らなかったナポリの名店 ”ロンドン ハウス” に関して書かれている


ページもあります。



このページには、仕立ての事や生地の事やナポリスタイルの事が書かれています。


当時PITTI UOMOにロンドンハウスが出展していたので、マリアーノ ルビナッチ自身のスタイルは


見ていたのですが、「一体ナポリの店はどんな店なのだろう」 と興味を持ったものです。




そして、この号で私が最もインパクトを受けたのが、このページでした。


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マリネッラの顧客が、初めてマリネッラでネクタイをオーダーした時のエピソードが書かれています。


その話もさることながら、どう見ても一目でサルトで仕立てたとわかる、英国生地のチェックジャケットに、


当時のイタリアのシャツの特徴の一つである、ステッチの幅が広い、発色の良いブルーのシャツ。


そしてネクタイは、当時流行していた段落ちのレジメンタルタイ、もちろんマリネッラのタイです。


クラシックな色柄のジャケットをエレガントに着こなすこの写真を見て、更にナポリの服に対するイメージが


膨らみました。



その数年後、初めてナポリに行くことになりますが、空港に出迎えてくれたナポリのあるシャツメーカーの


社長の車で、そのシャツメーカーの工場に直行することになったのですが、その工場がナポリでもかなり


危険な地区にあり、その町に入った途端、道路はゴミだらけ、目つきの悪い現地の人たちが車の中にいる


私たちを珍しそうにジロジロと見ています。



直感的に 「これはかなり危ないな」 と思いながら、怖いもの見たさに外を眺めていると、


その町の真ん中で車が止まり、工場の中に入った途端、刑務所のような分厚い鉄の扉を閉めて、


「着いたぞ」 と言われ、「本当にこんな危険なところでシャツ作ってんの」と、いきなり


カルチャーショックを受けました。



仕事が終わりホテルに行く途中、当時の私の上司が 「ナポリはヤバいね~」 と呑気にシャツメーカーの


社長に言うと、「俺は16歳の頃に口の中にピストルを突っ込まれて殺されそうになった」 と言って、


私たちを驚かせました。



初ナポリは、もっといろいろなエピソードがあるのですが、長くなるのでまた別の機会に書きたいと思います。


それから今まで、何度となくナポリを訪れ、様々な場所に行き、様々なナポリ人と知り合いになり、


ナポリの良いところも悪いところも見てきましたが、いまだにナポリは他の都市に比べて色々な意味で


緊張しますが、それがまた 「怖いモノ見たさ」 のような感覚で、なぜかまた行きたいと思わせる


不思議な魅力があります。



いまだに日本人の団体ツアーは自由行動が許されず、ナポリの観光スポットのCastel dell’Ovo(卵城)


の前で10分だけバスから降りて記念撮影という光景を見ますが、確かにいまだに危険な場所や危険な


事はたくさんあり、自分自身で相当気を付けていないと何が起こるか分からないという ”危うさ” がナポリには


あります。



それでも ”ナポリを見て死ね” と言われるナポリ、行ってみたいと思われる方は、


団体旅行ではなく、是非個人旅行で行ってみてください。



ただし、”危険なところには行かない” ”時計や貴金属は身に着けない”


これだけは注意して観光を楽しんでください。