CHURCH’S SHANGHAI
今日は、最近日本のファッション誌でも度々紹介されている、
イタリアで爆発的な人気のこの靴の話です。
この”SHANGHAI”、新しいデザインの靴ではありません。
1929年、上海が英国の半植民地時代だった当時、発売されたモデルの復刻版です。
当時新品で買われ、持ち主に大事に履かれていたものが、後に修理の為にチャーチの工場に
持ち込まれ、その履きこまれた風合いを気に入ったチャーチが、”NEW SHANGHAI” として発表し、
イタリアのファッションに敏感な人たちに支持され、あっという間に大ヒットとなったモデルです。
現在、イタリアでは品薄状態が続き、日本でもまだ本格的に展開されていないので、
実物を見た人も少ないと思います。
今日は、実物を見たことのない方々の為に、BEAMSのプレスルームに1足だけある撮影用サンプルで
”SHANGHAI” のディティールを細部までお見せしたいと思います。
トゥはラウンドトゥですが、結構ノーズが長いので、スマートな印象に見えます。
履きこまれた感じを出すために、トゥがわざと反り返ったように加工されています。
キルトも履きこまれた感じを出すために、先端を反り返らせる加工が施されています。
アンティーク仕上げを施した後に、細かな傷をつけ、ダメージ加工を施すことによって
ヴィンテージ調の雰囲気を出しています。
ソールもご覧の通り、何十年も履きこまれたような加工が施されています。
ヒールも片減りしたような加工と、ひび割れした感じをうまく加工で表現しています。
この ”SHANGHAI” 実は英国製ではありません。
イタリア製で製法はマッケイです。
おそらく、このデザインとディティールの靴をチャーチの英国工場でグッドイヤーで作ることは
今でもできると思います。
ただ、この ”NEW SHANGHAI” は、その当時と同じものをそのまま復刻させるというコンセプトではなく、
長い年月履きこまれた風合いを出すことが最も重要だったのだと思います。
英国のファクトリーでは本格的な靴は作れても、このようなヴィンテージ加工を施せるような工場は
存在しません。
イタリアのシューズ ファクトリーでも、これだけ精巧なヴィンテージ加工を施せる工場は少なく、
結果的に、その少ないファクトリーの中から、チャーチが要求する靴づくりと加工技術のレベルを
持った工場で生産することになったようです。
価格も10万円以上するので、本格的な英国製の靴を追及している人たちにとっては、
”チャーチでイタリア製、マッケイ製法なのに10万円は高すぎる” と言われる方もいると思いますが、
実物のヴィンテージ加工を見てもらえば、モノづくりが分かる人たちにとっては理解できると思います。
このヴィンテージ加工は、ほとんど手作業で行われています。
靴になった状態で一度ウオッシュ加工を施し、革にアンティーク仕上げや細かい傷を
着けたり、ソールの傷やひび割れなどを再現したり、靴1足が出来上がるまで、
相当な時間と手間をかけてヴィンテージ加工を施しています。
その手間と時間の為に、どうしてもコストがかかってしまい、結果的に価格が10万円以上になってしまいます。
事実、この ”SHANGHAI” は、オーダーしてからデリバリーされる期間も通常の英国製のグッドイヤーより
かなり長い期間かかるというのが実情です。
この ”SHANGHAI” 、以前ブログでも少し触れましたが、1月と6月のPITTIやミラノのショールームでも
かなり履いている人がいました。
左の人が履いているのが、”SHANGHAI” です。
以前紹介したラルディーニのエージェントのダニエレさんも ”SHANGHAI” の愛用者です。
ミラノのあるショールームのスタッフも ”SHANGHAI” を履いています。
かなりゆったりとしたカーゴパンツの裾をロールアップして合わせています。
”SHANGHAI” は、クラシックなテイストの人たちだけでなく、カジュアルテイストの人たちや
モードっぽい人たちまで、幅広いジャンルの人たちに人気があるのも特徴です。
チャーチショップだけでなく、現地のセレクトショップでもかなり展開されています。
上の画像はブレーシアのセレクトショップ ”G&B PERONI” のウインドウ ディスプレイです。
ミラノのセレクトショップ ”ERAL55” のウインドウ ディスプレイです。
”SHANGHAI” はコンビネーションのカラーの露出が多いですが、
画像のようにコンビネーションだけでなく、カーフやスエードの単色のものもあり、
このタイプを履いている人も現地では結構見かけます。
PITTIに出展しているシューズブランドのブースを見ても、”SHANGHAI風” のモデルを
展開しているブランドを多く見かけました。
それだけこの ”SHANGHAI” が靴業界に与えた影響も大きかったのではないかと予想されます。
因みに、来年の春夏は、このキルトディティールが靴のディティールのトレンドのひとつになっています。
これも明らかに ”SHANGHAI” がもたらした影響だと思います。
この ”SHANGHAI” 一つだけ大きな問題があります。
オーダーしているショップのほとんどが、すでに予約が埋まっていて入手が困難になっているようです。
さらに、追加オーダーは生産キャパの問題でできないようなので、今シーズン買えない場合は来年の春夏まで
手に入らないという状況です。
現地でも継続的に品薄状態が続いていますので、もしご興味のある方は、BEAMSも含め展開予定の
ショップにお問い合わせください。