FRENCH IVY 2
前回のフレンチアイビーのブログを書く前に、当時私と一緒に渋谷店で働いていたスタッフとフレンチ アイビーについていろいろと話していたところ、そのスタッフから90年代に発行されたある雑誌に面白い特集ページがあると見せられました。
その特集を組んだ雑誌がこれです。
BRUTUS 1998年 6月15日号です。
この号は98年のフランス年にちなんで発行されたフランス特集です。
その巻頭特集が ”フランスかぶれ万歳” という特集で、当時の日本人が考えるフランスの過去と現在を76項目にわたって紹介しています。
その特集の7項目が、前回のブログで紹介しましたフレンチ アイビーに関する解説です。
98年に発行された雑誌ですので、80年代に流行ったフレンチアイビーが当時日本でどのように認識されていたか解説されています。
すでに流行から10数年経っているので、モデルのキャラクターも着こなしも多少誇張されている部分はありますが、リアルタイムを知る私にとっては大変面白い内容です。
今回はその内容を要約して解説したいと思います。
まずはメンズです。
アウターはM-65のフィールドジャケットです。
”BEAMSの海外出張はみんなこれを着ていた”と書かれています。
本当に皆着ていました(笑)。
特に写真のオフホワイトやベージュのM-65は、BEAMSのスタッフとして持っていなくてはならないマストアイテムでした。
私は今でも白とベージュとサックスブルーを持っています。
インナーはセントジェームスのバスクシャツ
これもマストアイテムでした。
おそらくBEAMSのスタッフでこれを持っていないスタッフはいなかったと思います。
今やいろいろなブランドのボーダーTがありますが、当時はとにかくセントジェームスが定番でした。
シャツはエミスフェールのコーデュロイBD
エミスフェールが流行らせたかどうかは分かりませんが、私が入社した当時ビームスでもコーデュロイのBDはオリジナルやインポートで何種類も展開していました。
カラフルな色が人気だったのを覚えています。
ジャケットはオールドイングランドのネイビーブレザー
私がBEAMS Fに異動した頃、爆発的な人気が出て常に予約で完売という状態でした。
英国のオースティン リード製でした。
パンツはジャンブルジョワのタータンチェック
BEAMSでも最初はジャンブルジョワのパンツを取り扱っていましたが、もっとクオリティーの高いパンツブランドがあると聞いて、その後展開したのがベルナール ザンスのパンツでした。
ベルナール ザンスは、当時オールドイングランド、マルセル ラサンス、アルニスなどの有名店やメゾン系ブランドのパンツを手掛けるパンツメーカーでした。
解説にはツータック、裾幅18㎝、ダブル幅2.5cm、と書かれていますが、その通りです。
腰回りに余裕があってテーパードというシルエットが当時主流でした。
ただ、写真のように裾をダブつかせて穿くのはBEAMS的にはアウトでした。
シューズはチャーチのモンクストラップ
当時フレンチアイビーらしい靴と言えばモンクストラップ。
私が入社した当時、先輩たちがテーパードのパンツと合わせて履いていたのがモンクストラップでした。
前回のブログでも書きましたが、その当時BEAMSのスタッフが皆履いていたモンクストラップが、チャーチのBECKETというモデルでした。
次にレディースです。
エルメスのスカーフ
これは当時のレディースの大定番でした。
上の写真のようにカジュアルなコーディネートでも肩から掛けたり、高価なエルメスのスカーフをさりげなく使うのがオシャレでした。
もちろん、みんながエルメスを買えるわけではないので、値段の安いエルメス風のものもたくさん売られていました。
レディースだけでなく、メンズもエルメスのスカーフを首に巻くのが流行りました。
シャツはハートフォード・シャツメーカーのBDシャツ。
当時のフランスを代表するシャツメーカーです。
現在もブランドはあり、PITTI UOMOにも出展しています。
当時この手のフランスブランドは、ブルックス ブラザースを模したものが多く、ハートフォードのBDも、襟型、ディティールだけでなく、タグのデザインもブルックス ブラザース風でした。
ニットはセントジェームスのクルーネックカーディガン
当時、クルーネックのカーディガンはフレンチ トラッドの超定番アイテムでした。
ラムズウールのものが人気で、英国ブランドのニットが人気がありました。
Ray BEAMSでもインポート、オリジナルで展開して、飛ぶように売れていたのを覚えています。
コートはP&Oのウォータープルーフ ハーフコート
P&O.…かなり懐かしいブランドですが、薀蓄を書くと長くなるので省略させてください。
因みに、P&OのマウンテンパーカーもBEAMSのメンズスタッフのマストアイテムでした。
ウォータープルーフというのは、いわゆるラバーライズド(ゴムびき)の事です。
当時は写真のようなカラフルなカラーで襟がコーデュロイのAラインのハーフコートが、メンズ、ウィメンズともに人気でした。
BEAMS Fでも英国のファクトリーに別注した同じようなモデルを展開していました。
当時はゴム引きのコートを作れる工場がまだたくさんあり、少ない数量でオリジナルを作れた時代でした。
デビッド マーシュやトラディショナル ウェザーウェア(マッキントッシュ)がブランドとしては有名でした。
パンツはピカデリーのエラスティックジーンズ
これは当時BEAMSの女性スタッフは必ず持っていた大定番のジーンズです。
今でいえば ”美脚スキニージーンズ” です。
エラスティスというモデル名で売られていて、Ray BEAMSでも飛ぶように売れていたジーンズでした。
エラスティックが入っていたので、かなりピッタリとしたフィットで穿いていました。
メンズはライダースというモデルがありましたが、今でいうスキニーフィットでかなり細かったので、501に近いシルエットのフランスブランド リベルトのジーンズの方が人気がありました。
ちなみに、私はコロニアルという2プリーツのテーパードシルエットのチノパンを好んでは穿いていました。
このピカデリーのエラスティス、数年前に復活して今日本でも購入することができます。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.piccadilly-jeans.jp/
靴はジャン・バディのモンクストラップ
ジャン・バディ・・・ 懐かしいブランドです。
BEAMSでも扱っていました。
当時エミスフェールの靴を作っているブランドとして日本でも有名でした。
セレクトショップだけでなく、横浜の信濃屋さんのような老舗でも扱われていたブランドです。
私もローファーとモンクストラップとUチップを所有していました。
フランスらしい少し硬めの履き心地の靴でした。
当時は、女性もメンズライクなレザーシューズを履くのが流行っていたので、モンクストラップやU-チップ、ローファーなどがセレクトショップでは必ず展開されていました。
因みに、このジャンバディー、90年代に廃業してファクトリーはウエストンが買収したと噂になりましたが、真相は分かりません。
バッグはJ&M デビッドソン のトートバッグ
最近日本でも人気が再燃したJ&M デビッドソンですが、80年代にすでにフランスでは人気ブランドでした。
当時はパリのSEHMという展示会がヨーロッパ最大の展示会で、私が初めてSEHMにバイイングに行った89年当時、すでにJ&M デビッドソンはSEHMに出展していて、ブースがいつも賑わっていたのを覚えています。
デザイナーのジョンがネイビージャケットにリーバイスの501、靴はブラックのレザーシューズという英国人でありながらフレンチ トラッド的な着こなしをしていたのも印象的でした。
我々の年代には懐かしいアイテムやエピソードだと思いますが、20代や30代の人たちには”なんだこれは?” という感じだと思います(笑)。
ただ、ここ数年日本でも主流となっているイタリアのトラディショナルスタイルを見ていると、この当時のフレンチアイビーやフレンチ トラッド的なテイストを感じることが最近よくあります。
それに関しては詳しく書くと長くなるので、後々少しづつ触れていきたいと思います。
この号はこれ以外にも興味深い特集ページがあります。
”仏印良品” と題して、捨てられない121の銘品が紹介されています。
チェペリエのナイロントート
今も人気ですね。
パラブーツのチロリアン
今はシャンボードの方が有名ですが、この当時はチロリアンが定番でした。
リブランディングされる前のゴヤールも紹介だれています。
これはベルトではなく、犬の首輪です。
パリっぽいですね。
ウェストンのローファー
これは言うまでもなく、時代を超越した大定番です。
カミュー フォルネの時計ストラップ
いまでは高級時計ブランドのストラップを作っていることで有名なカミューフォルネも紹介されていました。
ちなみに、扱い店舗は当時渋谷にあったBEAMS TIMEになっています。
私も当時リザードのストラップを購入しました。
アニエスベーのボーダーT
このボーダーTもずっと定番ですね。
自分は幅広のボーダーTが最もアニエスべーらしいボーダーTというイメージです。
セントジェームスのナバル
80年代初め頃からずっと定番のモデル。
ピカソが着ていたという蘊蓄は、今や知る人も少なくなったと思います。
デュラレックスのグラス
フランスの日用品で最も日本で有名なものかもしれません。
当時は広尾のF..O.B CORPでしか扱っていなかったような記憶があります。
私の家にもサイズ違いであります。(笑)
121アイテムの中のほんの一部ですが、こうやって見ると、フランス ブランドは時代を超越した定番アイテムが実はとても多いのがわかります。
このBURUTUS 1998年6月15日号、80年代のフレンチアイビーを知る重要な一冊です。
ご興味のある方は、古本屋やネットなどで見つけたら手に入れることをおすすめします。
おそらく価値をわかる人は少ないと思いますので、値段も安く買えるのではないかと思います。
私も家のどこかにあると思いますので探してみます。