見た目で判断しない接客の価値
以前、アンテナショップで働いていた時の話です。
その土地のお土産品を扱うその店は、閉店時間が近づくと人もまばらになり、
一日の終わりが近づくのを感じていました。
そんな閉店間際、一人の男性客が店に入ってきました。
50代くらいでしょうか。その服装が、なんとも個性的で目を引きました。
ヨレヨレのジャージに茶色のピカピカの革靴、髪の毛ボサボサという外見です。
このイラストはちょっと大げさですが、イメージでいうと、正にこんな感じです。
一瞬、「ん？なんだこの服装の組み合わせは？」と戸惑いを覚えたのは事実です。
正直なところ、どんな方なんだろう、何者だろう、と不思議に思いました。
それでも、私はいつものように、丁寧な接客を心がけました。
おすすめ商品を説明し、質問には誠実に答えました。
すると、そのお客様は驚くべき行動に出ました。
なんと、10万円分ものお土産をまとめて買ってくださったのです！
そのお店のお客様の一人当たりの平均購入金額は、３千円くらいです。
１万円も買ってくださる方が居たら、御の字です。
それなのに一人で１０万円とは、驚きですし、めったに無いことです。
これには本当に驚きました。「まさか、こんなに！？」という気持ちと同時に、
心の底から「人を見かけで判断せずに、丁寧に接して本当に良かった」と思いました。
もしかしたら、お客様は最初から10万円分買うつもりで来店されたのかもしれません。
私の接客が直接、購買意欲を刺激したわけではないかもしれません。
それでも、もしあの時、革靴にジャージという格好に偏見を持ち、適当な対応をしていたら…。
「どうせ買わないだろう」と無意識のうちに決めつけて、
ぞんざいな扱いをしてしまっていたら…。そう考えると、後悔してもしきれなかっただろうと思います。
自分に罪悪感を持ち、「私ってイヤな奴」と自己嫌悪に陥ったかもしれません。
私が失礼な態度を取って、その方が何も買わずにお店を去ってしまったら
何も分からないので、結果論でしかないのですが、そう実感しました。
（いずれにしても、いきなり１０万円を売り上げたので、上司がめちゃくちゃ喜んでいました）。
ちなみに、１０万円分買って下さった男性は、
服装は変でしたが、丁寧な態度の常識ある方でした。
そして職業は、学校の先生でした。
なぜ分かったのかと言うと、
１０万円分の商品を宅急便で送る際に、
送付状に職場の住所（高校）を書き、
「ここに勤めているんだけど、
みんなにお土産が必要だから。」などと
おっしゃっていたからです。
その時私は、お店のとなりのビルで今日学校の先生の集会があったのを思い出し、
「先生なんだな」と分かったのです。
このように見た目で判断しない接客が必要と思ったのと同時に
自分もお客として、嫌な意味で外見で判断されたことを思い出しました。
その日私は、以下のような恰好で、洋服屋に入っていました。
しばらくしたら、お店の店長らしき男性に
「見てないで、試着してみればぁ」
「見てるだけじゃ、何も分からないじゃん」
とカジュアル過ぎる、気の抜けた言葉をかけられました。
これを聞いて、
なんなんだ、なれなれしいと思いましたし、
私を高校生くらいの子供だと思って、舐めているんだろうな、と思いました。
実際私は２０歳だったのですけどね。
その2日後、同じ店に以下のような服装でまた入りました。
先日の店員の態度にはムカつきましたが、気になる服があったからです。
そしたら今度は、あの時と同じ男性に、イソイソと明るい声で
「いかがですか？試着なさいますか？」
「お買い得ですよね。」
と打って変わって１８０度異なる対応をされました。
その時に、なんなんだ、こいつは？
人を服装だけでどんな相手か決めつけて、
コロコロ態度を変えんじゃねーよ！
と驚き、「結構です」と言って店を出て
もう二度とその店には行きませんでした。
誰でも多少は外見で人を判断しますが、
あまりにもコロコロ態度を豹変させるのは、
人間性を疑われることになります。
誰に対しても、一貫性を持った方が良いと思います。
私も気を付けようと思いました。
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