面会 | 救急救命センター潜入レポート

面会

 救急救命センターに居ると、人恋しくなる。


 救急救命センターでは面会が厳しく制限されていて家族以外は面会できない。また、その時間も限定されている。普通の病院では、面会時間は昼の1時か2時から7時ごろまでが多いが、救急救命センターでは午後2時から4時の2時間だけ、その時間も1回に面会できるのは2人までとなっている。面会者は、入口の受付で面会を申し出て、バッジをもらって胸につけるシステムになっている。面会が許可されると、病棟の入口には専用のスリッパがあり、それに履き替えて手を消毒液で消毒してからの入室となる。これは救急救命センターでも一般病棟の場合で、ICUでは制限はもっときつく、時間は1日に15分間のみ、面会者は指定のガウンと帽子、マスク着用となる。

 病院での面会と言えば、普通は見舞いということで、花やお菓子、果物などの食べ物を持ち込むことが多いが、救急救命センターでは、それも許されていない。入口の受付の壁に禁止事項が大書されているのだ。だから、病院食に飽きて、別のものを・・・というわけにもいかないのだ

 私の病室は病棟の入口近くで、毎日午後2時になると、一斉に患者家族が無言で部屋の前を通っていった

 

 家族が来ていなかった日のことだが、私はテーブルの上のものを取ろうとして、看護師さんに借りていた音楽テープを床に落としてしまった。10本ほどを積み上げていたのが、そっくり落ちてしまったのだ。当時、私は4人部屋に1人で入っていた。動けないし、どうしよう・・・と思っていると、隣の病室の患者さんに面会に来ていた家族の人が病室を覗いて、「音がしたから・・」と拾い集めてくれた。うれしかった

 長く居ると、別の患者さんの家族に顔見知りも増えてくる。患者同士は互いがベッドから動けないのでほとんど知り合いになることはない。弟さんが入院しているというお姉さんは毎日、私の病室の前を通るたびに顔を見せ、手を振っていってくれるようになった。人恋しいとき、こういうことは本当に慰めになる

 救急救命センターというある種、極限状態にあっては、人間は相互協力という一体感をもった行動ができるようになるのかもしれない。ありがたいことだった。