ICU
たまたま個室が空いていたらしく、ICUの個室に移された。
看護師さんが
「よかったですね、個室が空いていて。今、9時半です
」
と言った。事故が4時前だから5時間以上も過ぎていたのに、一瞬のことに思えた。検温すると、少し熱があった。
と、看護師が
「おしっこは?」
と続けた。そういえば、その間、一度もトイレ
には行っていない。
「寝たままできる?やってみましょうか?」
と看護師が腰の下に紙オムツを敷き、差し込み便器を入れようとすると激痛
が走った。あえなく差し込み便器を断念し、尿瓶を当てて看護師は席を外した。
さて、困った。普通に生活をしている時はなんでもなく出るものが出ないのである
。重力の偉大さを感じながら、その分を腹筋でカバーすることにした。とにかくいきんだ
すると、出だした
一度出はじめるとどんどん出る。なんだか腰の辺りが温かくなってきたが、出るのだから仕方が無い。ようやく出尽くした頃、看護師が戻ってきた。腰に当てた紙オムツがグッショリぬれていた。
「我慢してた?」
とんでもない。我慢などした覚えが無い。それがこんなに出ているところから察するに、人間、別のところに注意が行くと尿意も忘れてしまうものらしい。
「おしっこ寝たままで大丈夫?管、入れる?」
「この激痛
を毎回味わうことになるわけ?」
「考えてみて。」
「う~ん。」
考えていると、研修医のI医師が入ってきた。
「おしっこ出た?」
「出たけど、かなりいきまないと出ない
」
「あんまり力入れないほうがいいなぁ。」
「どうする?」
「じゃぁ、入れる
」
膀胱にカテーテルを入れられ、排尿時の激痛から開放されることとなった。
ICUは機械だらけだ。あっちこっちで機械音がし、血圧計の腕帯が自動的に膨らみ、体を動かすとアラームが鳴る
点滴のポンプのアラームが鳴る
壁の
までカチカチ音を立てるが、針は一向に進まない。看護師は頻繁に出入りし、体温を測る。点滴を確認する。薄暗くなってから瞳孔にペンライトの光
を当てる。それで、「眠れませんか?」眠れるもんか
脚は痛いし、その上モニターの音、アラームの音がうるさい
その上、目に光を当てられて眠れるもんか
痛みに耐えながら悶々としていると、あちこちからうめき声
、「抜いちゃだめ!それを抜くと死んでしまうよ
」という叫び声。またまたうめき声、叫び声の繰り返し。
ずっと同じ体勢で寝ていると、腰に丸めたバスタオルを当ててもらっていても痛くて仕方ないし
、どんどん眠れなくなり、夜が明けた![]()
看護師が膀胱から続いているカテーテルの先にあるビニールバッグから尿を採り、検温しながら、
「昨日、CTで影があったから今日、もう一度CTを撮ります。それで大丈夫だったら夕方、一般病棟に移ります。」と言った。
CTのベッドに移されるあの激痛がもう一度・・
。動けないから待つしかなく、待っていると、看護師が
「音楽
聞きますか?」
とCDラジカセを持ってきてくれた。音楽?見ると、カセットテープが10本あまり積まれていた。
ずっと寝たままだと、ラジカセの操作もできない。と、看護師が適当にテープを入れて掛けていってくれた。そして、片面が終わった頃、裏返してくれた
オートリバースではなかったのだ。
「ここって、なんでも貸してくれるの?テープまで?」
「看護師がいらなくなったテープを持ってくるんですよ。」看護師さんに感謝![]()
ぼんやりしているうちにCTの時間となり、医師と看護師がやってきた。CT室へはベッドごと移動した。身体に取り付けられた機械本体をベッドの枕元の棚状になった部分に置き、足元の滑車につけたおもりは外して動かされた。ICUの通路は狭い。実際には狭くはないのだが、あちこちにワゴンがあり、人がいる。ガチャガチャ音を立てながらの移動になった。それを見ていた主治医の太った医師がしみじみ語った。
「ICUの移動は車の幅寄せより難しい・・・。」
ICUを出るところで、ドア部分に数ミリの段差があったらしい。振動とともに、おでこの上に何かが落ちてきた
枕元に置いてあった機械
だった。
「これって医療事故?」
「スイマセン。」
移動のスタッフは笑って終わりだった。こんなの、死にかけてたら、死ぬよ![]()
やはりCTの映像に影があったものの、大きくなっていないから大丈夫と一般病棟に移されることとなった。病室に太った医師がやってきて言った。
「こんなややこしい機械、全部外すから。うるさいだけだろ?まぁ、これも格調高いICUのサービスだと思ってください。」
夕方4時、移動となった。動けないのにどうするのだろうと思っていると、枕元の荷物をベッドに乗せ、ベッドごとの移動だった。
一般病棟って病院の本館のことだと思っていると、救急救命センター内の一般病棟だった。移動に要した時間5分。それでも移動後すぐに検温。まだ熱があった![]()