春は終わりから始まります。
だから、春という季節がいつ消えるのかを意識することなんてほとんどない。
気付いたら暑い日が来て、雨がたくさん降って、世界は様変わりしているのです。

夏は逆です。
始まった最初の日にだって、夜にはもう、ひぐらしが鳴きはじめている。
太陽が無数の黒点を浮かべるように、
夏の大気は数えきれない終わりの粒子を孕んでいます。
ある日、世界がぱったりと夏をやめるのではありません。
吸い込んだ終わりの粒子がある一定の高さを超えたとき、夏は消えるのです。
波がすぅっと引くように。
そして、後には湿った砂だけが残る。

よくよく見てみればわかりますが、
夏の終わりなんて、そこらじゅうに転がっています。
夕方の空と風の温度、
蝉の声量、
起きた瞬間の乾いた空気。

望む、望まないにかかわらず、夏の中心とでも言うべき空間から遠ざかっていきます。
いつの間にか置き去られるのです。
小学校の頃の夏休みがそうであったことを我々は知っています。
だからこそ、追いかけなければならないのです。



夏の終わり - 森山直太朗
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