年末年始には実家に帰っていました。

実家は横須賀の山の上にあって、駅から逆方向にずっと歩くと日産の港があります。
そして私の住んでいた町は海側を向いているので、どこからでも海を見ることができます。
その海が一番美しいのは冬の夜です。

町から見渡す海は、夜になると一面に眩いオレンジの光を放ち始めます。
理由はわかりません。
工場地帯が立ち並んで夜でも賑やかに動いているのかもしれないし、
昼夜を問わずに港が船を誘引し続けているのかもしれない。
その理由を探しに行くには海は遠すぎる。

ただ、とにかく、その光はとても暖かいのです。
空気圧で瞬くその光は、
幼稚園の時に初めて連れて行ってもらった縁日の、提灯の明かりにとてもよく似ている。
いろんな色、いろんな匂い。
そして、その後の何年もの間で、一緒に縁日へ行った、いろんな人。
そういったものを次々と思い出させる光なのです。
ぱたんぱたんと、控えめなドミノが倒れていくように。

その光の中ではいつも、人が歓声を上げる美しい時間が流れている。
長い間ずっとそう思っていました。
それをいつかは見てみたいと。
虹の根元への憧れのように。


今でも、心のどこかではそう思っています。
まだ知らない、近づいたことさえない、
想像さえできないくらいに緩やかで大きな、明るく優しいエネルギーがあるはずなのだと。
そこへ行けば、何も考えずにそのエネルギーにただ身を任せることができるのだと。



だからこそ、その光には近づくことができないのかもしれません。