電車の中で、ストーカーとその友達が同じ学校の女子と話しているのを見かけた。
そう、確か名前は〝三原拓真〟。私の友達が教えてくれた。
良く晴れたある日、予備校の自習室で私の後ろに座っていた人だ。友達がメールで『後ろの人に背中見られてるよ』と教えてくれた。
ゲッ、キモイなと驚いて後ろを向いたら、整っているというわけではないけれど、それなりの顔立ちの人が席に座っていた。
別にその時初めて見た顔というわけではない。予備校からの帰り道、早歩きまたは走ってよく私を追い越す人だった。
最初は特に意識していなかったけれども、夏に入ってから頻繁に見かけるので、もしかして私に気があるのではないかと思うようになっていた。
そんな彼の顔が至近距離で目に入ったので、私はそのことにも驚いて慌ててノートに視線を戻した。彼も『やべ』って顔をして慌てて机に視線を落としたように、一瞬見えた。
でも、やはり私の勘違い……つまり自意識過剰だったのかもしれない。
彼は友達に向けるものとは違った笑みや困惑を女子生徒に送っていたのだ。どこか、諦めているような哀しい表情だった。
そしてたぶん彼女も、彼のことが好きなんだろうなと思った。だって彼の友達と話しているときでも、視線は彼に泳いでいたのだから。
それとももしかして女たらしの優柔不断男? どうだろう。少し試してみようと思った。