第一部『出会い』

僕が彼女を知ったのは、高三の夏、部活を引退したその日の予備校でだった。

彼女の名前は千石(せんごく)清美(きよみ)

名前通り、彼女は凛としていてだけどお淑やかで、美しかった。

気取らない自然な笑顔と立ち居振る舞い。

夏服からは、細い撫で肩と全身の柔らかな輪郭がありありと浮かんでいた。

そして肩にかかるかかからないかくらいの黒いショートヘアは、着飾っていないストレートで良く似合っている。

眉毛や目の形はまるで細い筆に染み込んだ墨汁で描かれたように繊細で、完璧だった。

化粧っ気を必要としない美しさは、もはや芸術と言ってもいい。

そのため、他の予備校生の何人かは、彼女に視線を止め、そして留めている。

ただひとこと。――美しい、と。そう言わんばかりの視線を向けていた。

初めて彼女を認識したその頃の僕は、昔別れた憧れの幼馴染みの幻想に囚われながら、好きな友達がいるくせに、それでも清美にイカレテいった。

こんなに美しい人を見たのは、それが初めてだったのだ。