5月12日午前9時に南の都の南西9Kmの島で人造人間を待ち構え、暴虐の限りを尽くす20号に怒り、荒野へと誘う。しかし体の変調に気づきながらも超サイヤ人へ変身し、一時は19号を圧倒するがかめはめ波のエネルギーをプラスした19号に次第におされ、心臓病が悪化したため一方的に。ベジータに救われたがその体はもはや立つこともできなくなっていた。
ヤムチャに連れられ、薬を飲んで戦線離脱。復活後は精神と時の部屋で修行した。己をはるかにしのぐ悟飯の片鱗を見てからは勝利を確信し、家族との団欒やドラゴンボール集めに専念した。セルゲーム当日、セルと壮絶な死闘を展開するも降参。悟飯にあとを託すが、悟飯の怒りの根源を理解していなかったため戦況は一変。セルジュニアに仲間は痛めつけられ、自身も仙豆を食べていなかったため半死半生にされる。最終的には目論見どおり悟飯はセルを圧倒するものの、セルの自爆から地球を救うために最期の瞬間移動で界王もろとも死亡した。死してなおあの世から悟飯を励まし、ポルンガによって生き返らせようとする仲間を「生き返らせてくれなくていいや」と止めて笑顔でみんなに別れを告げた。
人造人間編の悟空については、「ドラゴンボール改」放映中にもいろいろ思うところを書いていた。
この人造人間編での悟空は、「大誤算」の象徴であった。フリーザ編での悟空が「最後の切り札」的な存在であったのに対し今回のシリーズではその悟空が最初からいる。それがそもそもの原因だったのかもしれない。
なにせ今シリーズで悟空は一人も敵を倒していないのだ。19号にやられ、心臓病で寝込み、セルには降参し、セルジュニアには一方的にボコられた。そのセルジュニアもさっさと仙豆を食べていれば苦戦しなかっただけに残念すぎる。ナメック星に最初に来たとき、リクームやバータを圧倒したあの強さと頼もしさが嘘のようであった。
亀仙人やウーロンは「なあに今回は最初から悟空がいるんじゃ」「そうだぜ、なんせ悟空は超サイヤ人なんだからよ」と楽観していた。これは我々ファン側の思いでもあったろう。まさかあの展開で心臓病で倒れて長期離脱するなんて予想した読者が果たして何人いただろうか。
そして病に倒れてからはずーーーーーーーーーーーっと寝込んでいた我らの孫悟空。アニメでのリアルタイムではなんと4ヶ月間もふとんの中だった。やっと目覚めたと思ったら神殿での修行のためにまた戦線離脱。精神と時の部屋からようやく出てきたら謎の余裕ぶり。しかし仲間が何度聞いても知らん顔でピクニックとドラゴンボール集め。「オラもっともっと修行して強くなるぞ」とあれほど主張していた悟空が修行を放棄してピクニックである。
Z戦士も我々も?????な状態であった。
トランクス「悟飯さん、どういうことか聞いてませんか?悟空さんはセルが自分より強いってはっきりいい、弱点も知らないと・・それなのになぜあんなに明るく・・」
悟飯「僕にも教えてくれないんです、ただ楽しみにしてろって」
トランクス「楽しみに・・・・」
クリリン「でもよう、あいつが楽しみにしてろって言うんだから、きっと何か作戦があるんだよ」
ピッコロ「・・・ただの開き直りかもしれんぞ」
全員「・・・・・・・・・・・・・」
で、結局このまま問いただすことなく本番を迎えてしまうあたり、Z戦士たちの悟空への依存度は半端ない。ベジータ以外「悟空がきっとなんとかしてくれるさ」と心のどこかに少し楽観視していたところがあった。クリリンやピッコロがもう少し強気で追求してれば、と思える点もあるが、これが悟空の信頼度の証でもあるためなんとも言えないところだ。
そしてこの大誤算である。悟飯の怒りのきっかけは「誰かの犠牲」という哀しみによるものであるにもかかわらず、それを理解していなかった悟空は、悟飯がセルに痛めつけられても笑顔で傍観。ピッコロに自身の考えを論破され、ようやく過ちに気づいたときには手遅れで、セルジュニアによって自分も仲間も地獄をみることになった。
しかもこの時「セルに仙豆を与えておきながら自分は食べていなかった」というのが孫悟空最大のポカである。こればっかりはもう擁護のしようがない。セル自ら「仙豆とやらを食うがいい」「くだらんジョークはもう終わりだ、さっさと仙豆を食べてもう一度闘え」と2度もチャンスを与えてもらっていたのにだ。
「その甘さが命取りになるのがわからんらしいな」
「貴様はすぐにたっぷりと後悔することになるぞ」
「反省しろ孫悟空!きさまの見当違いのせいで息子は死ぬのだ!」
「どうなってもしらねえぞ・・もう」
「こ、こんな場合にフェアもくそも・・!」
「悟空、きさまのしたことはどう考えても無謀だぞ・・」
敵も仲間もみんな、悟空が間違っていることに気づいていた。
「みんな・・すまねえ・・こ、こんなはずじゃ、こんなはずじゃなかった・・!!」のは悟空本人だけだったというのが実に皮肉である。このセルジュニアに痛めつけられるシーンは特にアニメの印象が強い。ついさっきまでセルと闘っていた悟空がクリリンにも心配され、ヤムチャや天津飯の加勢まで受けているのは、どうしようもない絶望感を印象づける良い演出だと思う。
しかし、結果的には悟飯は怒りによってセルを圧倒した。この時、セルのフルパワーを見てクリリンと一緒に「つ、ついにセルがフルパワーの闘いをみせる・・」と驚愕しているコマが実に良い。
超悟飯対セルという現状においては、もう悟空はクリリンや他の仲間と大差ない存在であると印象づけられる。このときほど悟空が傍観者になった時は他にないだろう。
最後は自分の命を犠牲にしての最期の瞬間移動で格好がついた、過ちは精算できたと誰もが思った。しかし現実はさらに非情だった。セルは再びパワーアップして戻ってきた。しかも悟空のみの技であった瞬間移動まで学習して「より完璧になってここに戻ってくることができた」のである。
「孫悟空は私を倒すどころかいろいろとプレゼントをしてしまったようだな」とはセルの弁であり、実に嫌味だがこれは真理をついている。
しかしまだ名誉挽回のシーンが残されていた。悟飯へのあの世からの悟空のメッセージだ。
「大丈夫だ!勝てる!自分の力を信じろ!最後に見せてくれよ、オラたち二人でつくった力を・・!」
このあの世からの励ましがなければ悟飯は勝負を捨てていたのだ。
ピッコロすら「だ、だめだ!やはり勝てない・・!悟飯の気のほうが弱い・・!」と悟飯の勝利を信じられていなかったが、悟空は最後の最後まで「必ず勝てるさ!絶対だ!」と悟飯の勝利を疑っていなかった。
ピッコロに父親としてのいたらなさを指摘された悟空であったが、最後の最後で我々ファンに親子の絆を見せてくれていたのだと思う。
余談だが、この時点で鳥山氏は本当に連載をやめたくてやめたくて仕方なかったらしい。それゆえに悟空を死なせた。「主人公である悟空を死なせたのだからもう続きは無理でしょ、終わらせてください。」という意思表示だったのだろう。しかし編集部はそれを許さず、ブウ編に突入したのである。


