真救世主伝説 北斗の拳 ZERO ケンシロウ伝 コレクターズ・エディション 初回限定版(2枚組.../阿部寛,石田ゆり子,藤岡弘、
本作は真救世主伝説シリーズ5部作の最終作。ケンシロウを主人公に、シンにやられてからバット・リンに出会うまでの空白の1年を描いた完全オリジナルストーリーとなっている。
当初の予定では、ケンシロウ伝は修羅の国に渡ってからの話になるという情報もあったのだが、紆余屈折の末、過去を描くことになったようだ。声優陣については、玄田哲章、飯塚昭三、青野武、千葉繁、大塚周夫、難波圭一、富永みーなという凄まじい顔ぶれになっており、旧アニメ派な私にはたまらないものがあった。ジニア役の千葉御大の出番が予想より少なかったのが残念だったが。
さてその内容は、ケンシロウがいかにして救世主としての自覚をもったかということが描かれたのであるが、どちらかというと1年前のケンシロウがどれだけ情けなく、やる気がなかったかという点が強調されていた気がする。とにかく情けない。シンにやられた傷が癒えてないというのはわかるが、前半は終始牢屋でポケーとしてるし、悪党のガデスとコロシアムで闘ったときはあえて手加減したという。それについて同じ牢屋にいた老人フウゲンが注意するシーンが実に印象的であった。
フウゲン「あんたの優しさは、強い者の一時しのぎの身勝手とは思わんかね?」
ケン「む、そ、それは・・」
フウゲン「なぜあんたは熊殺し(ガデス)を殺さなかった?」
ケン「やつでは俺は殺せない、ならば殺す理由もない」
フウゲン「それが身勝手じゃよ。あんたはそれでいい、だがやつは傷が癒えればまた平気で人を殺す。」
ケン「ならば俺にどうしろと?」
フウゲン「・・・ふふ・・お前さん、甘いのお・・」
もうね甘いというより、アホかと。いちいち言われなわからんのかい、と言いたくなる。ていうか牢屋ぐらい「ぬあああああ!!」と破れやと。お前の力ならそれぐらいできるやろと。この「その気になったらできるのにあえてやらない」というシーンはチラホラ出てくる。ユリアを奪いにきたシンに対しても、躊躇して本気で闘えなかったというし・・そら負けるわと。
そして後半、やっとやる気を出して城に乗り込んだかと思ったら、監視カメラに思いっきり映って、囚われて貼付けに。そしてケンシロウを守るために何人もの人が死んでいく。そうした数々の犠牲の中でようやく、ようやく己の宿命と伝承者としての使命に目覚め、覚醒する!その覚醒する直前の回想シーンでは、リュウケンが「今のお前では到底トキに勝つことはできぬ、ましてやラオウにもな。お前はどうしようもなく人間臭く、その性格は甘い。このリュウケン、見てはおれぬほどじゃ」とボロクソにいいながら「じゃがそれが良い!」と北斗神拳伝承者に指名する。といいながらも被爆してなかったらトキが伝承者だったのには違いないので、結局は消去法で指名された感があるが・・・
覚醒したケンシロウはまさに鬼神の強さを発揮し、雷暴神脚や二指真空把を駆使してジュガイ軍を片付けていく。そしてついにジュガイとの対決に。このとき、シンの幻影が出てくるのだがこのシーンが実に良い。
「力こそが正義!いい時代になったものだ、強者は心おきなく好きなものを自分のものにできる!」
「お前ごときでは俺に勝つことはできん!お前と俺には致命的な違いがある、それは欲望!執念だ!」
「欲望こそが強さにつながる、お前にはそれがない!!」
とシンの名言3つが飛び出すのだが、この声がまた古川登志夫氏を彷彿とさせる名演なのである。ユリア伝と同じ声優であるがよく演じてくれたと思う。そしてジュガイの南斗獄屠拳とケンシロウの飛び蹴りが交錯!
このときのケンシロウの構えは、バランが見せた北斗神拳奥義七点掌かと私は思っている。
最後のあの救われない結末は、賛否両論あるだろう。正直私も劇場で観たときはムチャクチャ鬱になった。結局ケンシロウは誰一人の命も救えないのかと。だが、あれぐらいの悲劇があったからこそ、ケンシロウに執念と非情さと凄みが身につき、ジュガイと闘い孤鷲拳を見切っていたからこそシンに圧勝できたのだと、考えられる。
そして、エンドロール後のエピローグがすべて吹き飛ばした。あの第一話の紙芝居エピローグには血がたぎり、嬉しくて肌が粟立った。あの感動はリアルタイムで数えきれないほど旧アニメ第1話を観ていた人にしか味わえないだろうと。それぐらいの感動があった。松本孝弘氏のテーマをフルで聞ける唯一の機会であり、真救世主伝説シリーズのフィナーレにふさわしい最高の締めだったと思う。
また、このケンシロウ伝を記念して、ケンシロウとユリアの結魂式が東京の日本青年館で実施されている。特典ディスクには拳王様やシン、ジュウザなどがオリジナルキャストで祝辞を述べるシーンも収録されており、特に安原義人氏のジュウザはおそらく当時以来であって大変感動した。堀秀行氏のリュウガもあったら嬉しさのあまり七転八倒していたであろう。