自分の寿命は誰にもわかりません。
中山美穂さんの訃報に接し、
自分の残された時間のことを
本気で考えるようになりました。
私とて、母よりも長生きするとは
限りません。
50歳になった時、
第二の人生だから、
好きなことをしようと
心に決めた矢先、
父が体調を崩し、
通院の付き添いの為に
5年間の有給休暇をすべて
使ってしまいました。
自分のために使えたら、
どんなに良いだろうと
考えました。
今は、父が亡くなり、
一人暮らしをしている母の
世話をするために 、
有給休暇と休日の時間を
充てています。
自分の時間を自分のために
使えないというジレンマ。
「時間は命そのもの」 という言葉を聞いた時、
私の時間、私の命、
その大半が私以外の人のために
使われていると思わずには
いられませんでした。
健康寿命が、
あと、どのくらいあるか
わからないのだから、
やってみたかったことを
全部やるのだと決めた
50歳の誕生日のことを
思い出して、
再び、私は
死ぬまでにやりたい事リストを
見直し、実行計画を立て始めました。
そのうちの一つが
母と私の二人で
女旅をすることでした。
まだ 私が20代の頃、
友人が自分の母親と二人で
海外旅行に行くと話すのを聞いて、
なんて素敵な母娘なのだろうと、
とても羨ましく思いました
私は、思い切って、
母に二人で海外旅行に
行こうと誘いましたが、
「海外なんか行けるわけないでしょ!
バカなことを言わないで!」と、
一蹴されました。
それでも、いつか、
実現したらいいなと
朧げに思っていましたが、
長い年月が過ぎ去りました。
今では母が高齢になり、
残念ながら実現は
難しくなりました。
先日、三姉妹で海外旅行に
行ったという友人の話を聞いて、
「あ〜、羨ましい〜」と
一人ため息をつきました。
「三姉妹で旅行ができたら、
どんなに楽しいだろう」
と思ったとき、
娘がいる事を思い出しました。
「二人の娘と三人で旅行に行けばいいんだ!」
ずっと姉妹が欲しかった私は
自分で子供を持つなら、
娘が二人欲しいと望んでいました。
三人の子供に恵まれて、
そのうち二人が娘として
誕生してくれたので、
私の望みは叶いました。
そして、今こそ
私の野望を叶える時が
来たと思いました。
まずは、
何年も先延ばしになっていた、
神奈川に住んでいる友人に
会いに行くことを決めました。
そして娘二人を誘うと、
「行くー!」と即答。
三人で東京旅行の計画を立てました。
母には旅行に行くことは言わずに、
いつも通りの生活をしているように
振る舞うことにしました。
毎日、朝、晩2回、 見守りカメラで
お互いの顔を見て話をしました。
「今から、買い物に行ってくるね」
(原宿)
「今、お店で晩御飯食べてるよ」
(銀座)
など、場所以外は
いつも通りの会話です。
今でも、母は私たちが旅行に
行った事を知らずに、
機嫌良く生活をしています。
毎日、電話をする度に、
母は必ず
「今、家にいるの?」と聞きます。
私が家にいると言うと
安心するようです。
そして 、
「あんたが家にいなかったら、
お母さんが倒れた時に
すぐ来てもらえないから」と
付け加える事を忘れません。
それを聞くたびに、
自分のために娘が存在していると
信じて疑わない母に
正直、うんざりするような
気持ちになります。
けれど、年老いて
気弱になると
娘をお守りのように
携えていたいのかもしれないと
感じることもあります。
たとえ、何かしら緊急の時、
私がすぐに駆けつけられたからといって、
母が助かるとは限りません。
私が実際にどこに居るのかよりも、
いつでも助けてもらえるという
安心感が欲しいのだと思います。
前回の体調不良の一件から
学んだことは、
母を不安にさせるような事を
ありのままに知らせて、
不安にさせる必要は
ないということです。
現実とは違っても
母の聞きたい事を
話してあげることも
思いやりだと
思うようになりました。
母を安心させてあげる事が、
結果的に自分の生活を守ることにも
つながっていると感じています。
私は特別な事がない限り、
母に会いに行くのは
週に一回と決めています。
母が病気になった時、
病気を治療してくれるのは
お医者さんであって私ではありません。
訪問医療も入っているので、
緊急の時も、お医者さんと看護師さんが
私よりも先に駆けつけてくれます。
私は母に旅行のことを知らせないまま、
念願だった、女三人旅を決行しました。
ハリーポッターメイキングスタジオ、
築地の朝ごはん、東京ナイトバスツアー、
原宿ショッピングなどを娘たちと堪能し、
ブルガリホテルのカフェで
友人とゆっくりとおしゃべりしながら
カプチーノを頂きました。
母の世話があるからと
諦めていた旅が 思いのほか、
スムーズに実現して、
幸せを噛み締めながら、
旅を満喫しました。
母がいるから、
もう旅行は無理だと
諦めていましたが、
本当に行こうと決心して、
少し、工夫をすれば
なんとかなる事がわかりました。
自分勝手な娘だと
思われるかもしれません。
けれども、母がいるから、
旅行に行けないと
不満を募らせて、
自分の生活を台無しに
してしまうより、
はるかに良いと感じています。
母を不安にさせない方法で
これからも旅行を楽しみたいと
思います。