馬運車の後ろに停車したフェラーリ F50から、金ピカに着飾った女性が降り立った。






「ユーは・・・ミセス・ガッツ! ( ̄Д ̄;  」


「ムカッ・・・。何度言えば分かるのかしら?私の名前は”ガミラス”よ!」









「おーい、マスター!携帯電話忘れてますよー!って、あれ?ガミラス夫人!」


「沖田くん!この野蛮人をちゃんとしつけないとダメじゃない!」


「ミーが野蛮人?!」


「マスターがまた何か失礼なことを?」


「また、って・・・。」


「・・・。まあ、いいわ、今日のところは許してあげる。」


「なんだか、ご機嫌ですね。ガミラス夫人!」


「フフ、沖田くんわかる?今日はうちの期待の2歳馬が入厩するのよ。」


「へえ!期待の2歳馬ですか!」









「レッドバロンの今年の2歳馬の中でも、この子は文句なしにピカイチよ!オホホ」


「へー!辛口のガミラス夫人がそこまで褒めるなんて、よほどの素質馬なんですね!」


「ええ、レッドバロン初の3冠も夢ではないわ。オホホホホ!」


            :
            :

「レッドバロンHCの女帝「ガミラス知美」か。親父から話は聞いたことがあるよ。」 祇園の料亭の一室で、有田が寿司をほおばりながら言った。


「あの赤い軍団のことか。たしか、リエマリアもそこの所有馬だったよな?」 と多良崎。

 


「YES。他にも星の数ほどの名馬を所有する競馬界の巨人デス。」 


「巨人ねぇ・・・。睨まれたら怖そうだ。ワハハ。」 





「ガミラス夫人のご主人は?競馬界とは無縁なのか?」 と多良崎。


「デスラー・ガミラス卿。フランス競馬界屈指の大馬主デス。」


「へぇ・・・!夫婦で日仏の競馬界を牛耳ってるわけか。」


「レッドバロンHCは、世界中に支部があるんだよ。その総本山がフランスにあって、そこのトップがガミラス卿ってわけさ。」 有田が続けた。





「今度のマイルCSにも、トモミナンバーワン号が出てくるはずデス。」


「人気の1頭だね。当然勝ち負けになるだろうな。」 


「なあ有田、おれたちもマイルCSを観に行こうぜ。」


「そうだな、多良崎。ガッツさんのご尊顔を拝謁しにいくか。」


「それなら、スーパーキッドもその日の新馬戦に出走させマショウ。」


「いいよマスター、そんな無理しなくて。」


「レースに使いながら、仕上げていくのデス。」


「なるほど、調教の一環ってわけか。」


「YES。有田さん」


「それって、ただの手抜きじゃないのか?」



「シャーラップ!素人はだまってろ! (▼Д▼#)」


「まあ、いいんじゃないの?多良崎。 あ、スミマセーン、お寿司もう1桶!」 

「まだ入厩して日が浅いってのに!この楽観主義者たちめ・・・。」


「そうそうマスター、そのレッドバロン期待の2歳馬ってのは?」 



「ああ、ミラクルスターのことデスカ?有田さん。」



「ミラクルスター・・・!」



「たしかに、2歳馬とは思えない馬体をしてマシタヨ。それに、むせ返るようなオーラを放ってマシタネ。」


「ほう・・・!」 勝負師・有田の眼が輝いた。


「嬉しそうだな、有田。」


「ヘヘッ。マルゼンエッジといい、そのミラクルスターといい、どうやら今年の2歳馬は当たり年のようだな。こりゃ歴史に残るクラシックになるぞ!」


「当たり年、か。うちの2歳馬も当たりならいいんだがな・・・。」 ぼやく多良崎。


「このネガティビアンめ!!! (-゛-;) 」

「このネガティビアンめ!!! (-゛-;) 」

(つづく)





スーパーキッドをはじめとする神戸HCの2歳馬勢が、栗東の富士川厩舎に入厩したころ、中山競馬場では「神の子」と呼ばれる2歳馬が、その素質を如何なく発揮していた。






2歳900万クラスのベーゴマ賞は、マルゼンエッジが圧倒的な1番人気に支持されています!デビュー戦を馬なりで圧勝、そのスター性に魅了されたファンたちが、ここ中山競馬場に大勢つめかけています。

           :

           :






「ウワアアアア」





 

さあ、レースは最終コーナーをまわって、先頭はドリームシアターが必死で逃げる! ああ、しかし、馬なりのままマルゼンエッジが並び掛けてきた!これ以上は抑えられないとばかりに、あっという間にドリームシアターを交わして先頭へ!そして突き放した!



エッジ、エッジ! エッジは今日も持ったまま!エッジは今日も持ったままだ!!


さあ、後続は懸命に追いすがる!ヒデノブライトとロックブライアンが猛烈な追い込みでやってくる!粘るドリームシアターに、大外からベルファストボムも突っ込んできた!



「やれやれ・・。」 ため息をつきながら、鞍上・富士田がエッジに気合を入れた。




「グン!」



ああ、エッジが加速!富士田の合図に敏感に反応!これはすごい瞬発力だ!後続を一瞬のうちに引き離した!強い!強い!マルゼンエッジ、これは噂以上の逸材!後続ははるか後方だ、今ぁ、馬なりでゴールイン!






「ウワアアアア!」







2着は5馬身ほど離れて、ドリームシアターか!粘りに粘ったドリームシアターがハナ差ヒデノブライトを抑えた模様!以下、ロックブライアン・ベルファストボムまで団子状態での入着です!



いやぁ、それにしても強い!今日もマルゼンエッジにムチは入りませんでした!今日も富士田のムチに出番なし!ドリームシアター以下を完全に子ども扱いです!


           :

           :




栗東の富士川厩舎でレースをTV観戦していた、マスター富士川と沖田がため息をついた。






「ウワ・・・見てください、マスター。富士田騎手、スタンド前をウイニングランしてますよ!」


「富士田には過ぎたるものがふたつアリ 

特別模範にマルゼンエッジ・・・!」

「マスター言い過ぎですよ・・。それにしてもすごい馬ですね、マルゼンエッジ!」 助手の沖田は楽しそう。

「すごいのはエッジだけネ!誰が管理しても、あの馬なら勝ってくれマス!」

「アハハ。マルゼンエッジかー、美浦の斉藤先生もいい馬を預かりましたね。あんな馬、一度でいいから管理してみたいなー!」


「気分が悪いから、ちょっとでかけてきマス!沖田クン、あとは頼みましたヨ!」

「あ、ちょっとマスター!ま、また祇園ですか・・・?」

           :

           :


「なんでいつもサイトウばかりに、素質馬が集まるんデスカ!」 ブツブツつぶやきながらトレセンの駐車場を歩く二流調教師。


そのとき、真っ赤な馬運車がマスター富士川のすぐ横をかすめ、急停車した。




「キキーッ!!!」




「ウワーーー!危ないじゃないデスカ! ヾ(▼□▼;)/  」

真っ赤に燃えるフェラリーの馬運車から、1頭の馬がおろされた。

「こ、この馬運車はたしか・・・レッドバロンHC!


「あら、マスター富士川いらしたの?ごめんなさいネ。」

馬運車の後ろに停車したフェラーリF50から、金ピカに着飾った女性が降り立った。

「ユーは・・・ミセス・ガッツ! ( ̄Д ̄;  」










(つづく)







「こらー!待つでごわす! ヾ(▼口▼;)/ 」







岩見沢競馬場のスタッフに事情を話し、オカダトップガンを無事引き取った神戸HCを、一人の男が呼び止めた。


「オイの相棒をどこに連れていくでごわす?!」

「ど、どこって・・・、栗東に。」


「栗東~?!」


「あんたは?」

「さっきのレースを見てなかったか?!ヌルハチの騎手・西郷勝美でごわす!」

「ジョッキーさんかよ・・・。

 悪いな、こいつは俺たち神戸HCの所有馬”オカダトップガン”だ。」

「ふざけるな!”ヌルハチ”は、これからオイと一緒に頂点を目指すでごわす!」

「そうかい、そいつは悪かったな。オッサン!」 

「悪いとおもうなら、ヌルハチを置いていってたもんせ!」

「やめないか、カツさん!名手・【ばんばのカツ】の名が泣くぞ!」 競馬場スタッフらが、西郷と名乗る男を制止した。


「クッ!ヌルハチとオイなら、バンエイ競馬の頂点に君臨できるでごわす!」


「無茶いうな!こんなところで走らせたら、

 脚が何本あっても足りないぜ! (▼口▼#)  」 怒鳴る多良崎。


「うるさか、この若造が!」 そう叫ぶと、【ばんばのカツ】と呼ばれる男は多良崎につかみかかった。


「二人ともやめとけ!」 すかさず、巨漢の有田が割って入る。


「チッ・・・!」


「カツさんだっけ?よく見ると、どこかで見た顔だな・・・。」 【ばんばのカツ】をしげしげと見つめる有田。


「ほう!デカイの、オイを知ってるのか?こうみえても、じつは中央所属のジョッキーでごわす。」


「こんなところで、小銭稼ぎか。三流ジョッキーが・・・」 鼻で笑う多良崎。

「わんさか騎乗依頼が来るのは、一握りのエリートだけ・・・。オイは生きていくためなら、泥水だってすするでごわす。」

「生きて・・・。」 多良崎の顔つきが一変した。


「なあ、多良崎。このオカダトップガンに乗ってくれる、もとい乗りこなせる騎手なんて、そうはいないぞ。」


「う・・・・。」


「さっきの息のあったレースをお前も見ていただろ?」


「・・・・・。」






「おまんら、何ゴチャゴチャ言っとるとか?」 


「カツさん、どうだろう。あんたも一緒に神戸に来てくれないか?」 と有田が切り出した。


「ないごてオイが神戸なんぞに!」


「もう一度、日のあたる場所に戻りたくないか?」


「・・・日のあたる場所!」


「来月も、来年も、ここでバンバがしたいのなら、無理強いはしないよ。」

「・・・・。」

しばらく沈黙していた男は、やがて意を決した表情で二人を見つめた。


「ヌルハチにはオイ、オイにはヌルハチが・・・必要でごわす。」


「来てくれるんだな?!ありがとう、カツさん!」 有田が右手を差し出した。


「・・・デカイの。悪いが、その握手はG1をとってからでごわす。」



「大きく出たな、オッサン!」 それを聞いて、思わず笑みがこぼれる多良崎。










「【ばんばのカツ】か、気に入ったぜ。おれは有田、こいつは多良崎。よろしくな。」


「おう、よろしゅ!ヌルハチとオイの”薩摩示現流”で、天下獲りに出陣でごわす!ガハハハ!」


「”ヌルハチ”じゃなくて”オカダトップガン”だよ!

                 (▼Д▼#) (多良) 」



(つづく)






                    :


                (捜索10日目)








「はあ・・・だめだ。これだけ探しても見つからないぞ・・・。」 





「とりあえず、苫小牧まで戻ろう。こっちの体力も限界だ・・・。 (´д`lll) 」 

「そうだな。旭川にもいなかったか・・・。」


レンタカーに乗った二人が、岩見沢を抜ける国道をひた走っていると、やがて大きな歓声が聞こえてきた。

「ウワアアアアアア!」


「なんだ?」

「ちょっと見にいって見ようぜ。」


しばらく進むと、前方に大きな会場があらわれた。






「【岩見沢競馬場】だって・・・?」

「おー!あれじゃない?”ばんば”」


      :

      :


「ウワアアアアア!」

さあ、レースはいよいよ最終障害!最終障害にさしかかって、先頭はキリタンポ!人気のガンモドキはまだ来ない!ガンモドキはちょっと苦しいか?!

「イケー!キリタンポー!」

「ガンモドキ!何やってんだー!ヾ(▼口▼;)/ 」






大勢の観客が、お目当ての馬に声援をとばしている。

「ハハ。どこの競馬場も同じだな。 」 有田が人垣をかきわけながら笑った。

「すごい迫力だな!はじめてみるよ、バンエイ競馬。 ( ̄□ ̄;) 」


「ウワアアアアア!」


キリタンポ独走!キリタンポ独走だ!さあ、後ろからは何も来ないぞ!後ろからは何も・・・・あ!ああああ!大外から何か1頭、つっこんできたー!




「ちぇすとぉ―! (`Д´) 」







ヌルハチだ!ヌルハチだ!ヌルハチがつっこんできたー!

鞍上・西郷勝美が雄叫びあげて、ヌルハチが怒涛の追い込みだー!








「でたぁ!カツさんの”薩摩示現流”!!!」





「カツさん、いけぇー!」









さあ、前との距離は一気につまったぞ!カツのムチがうなりをあげる!ヌルハチ、ヌルハチ!おいついた!かわした!かわしたぞ!


キリタンポは伸びない!キリタンポは限界か?!かわってヌルハチが先頭だ!ヌルハチが先頭にたって、今ぁゴールイン!!!

「ウワアアアア!」

名手・西郷の手綱さばきが光ったこのレース、新星・ヌルハチが見事にデビュー戦を飾りました!


「お、おい・・・。あのヌルハチって馬・・・見覚えないか?! (゜д゜;) 」

「あの狂気に満ちたツラがまえ・・・!ま、まさか! (゜д゜;) 」



二人の男の雄たけびが、会場内にこだました。







「オカダトップガン、見つけたー! ヾ(TДT)/ 」

「オカダトップガン、見つけたー! ヾ(TДT)/ 」



(つづく)





「きたか! (゚∀゚) 」





六甲スタリオンの敷地内に建てられた神戸HC事務所で、有田が声をあげた。 北海道のセレクトセールで購入した2歳馬4頭が、六甲スタリオンに到着したらしい。





にわかに活気付く牧場。栄太郎も古来夫妻も自然と笑みがこぼれる。

「おお!スーパーキッド、見違えるようにたくましくなったな!アリタブライアンも無事なようでなによりだ! ヘ(゚∀゚*)ノ 」 有田が身を乗り出した。

「いよいよ、”夢の続き”の始まりか!」 多良崎も熱いものがこみ上げてくるのを押さえきれずにいた。










「ターフでは、とんでもない化け物がデビューしたからな。こっちものんびりしてられないぞ! ヽ(`Д´)ノ」 勝負師・有田の目が燃えている。

「古来のオヤジが言ってた、「神の子」のことか。」 と多良崎。

「マルゼンエッジ・・・あの名伯楽・斉藤師がすっかり惚れこんでるらしいからな。ま、ただの早熟馬だろうけど。ワハハ」




「さあ、これで全部ですね。さっそくカイバをあげてきます!」 栄太郎が駆け出した。



「あれ?まてよ・・・。1,2,3・・・3頭しかいないぞ?! (°Д°;≡°Д°;)」 多良崎が声をあげた。

「ハハハ。慌てるな、多良崎。まだ馬運車に残ってるんだろうよ。そうだろ?古来さん!」



「いや、これで全部だよ、有田のダンナ。 ┐( ̄ヘ ̄)┌ 」 



「ええええええええ!(((゜д゜;)))」


「プルルルル!」

事務所の電話が鳴り、受話器を取った多良崎に驚愕の事実が伝えられた。

「どうした?顔色が悪いぞ、多良崎!」

「た、大変だ・・・・。 (゜д゜;)」

「どうした?多良崎。」

「苫小牧で、逃げた・・・。 (゜д゜;)」

「?!」


「北海道を発つ前に、オカダトップガンが失踪したって・・・。」

「ええええええええ!(((゜д゜;)))」






「札幌空港への輸送中に大暴れして、捕獲しようとしたスタッフ3人を病院送りにしたらしい・・・。」

「嘘だろ?! (゜д゜;)」

「それで、トップガンの行方は?!」 栄太郎も心配顔。

「・・・手がかりもないらしい・・・。」  

「そんな・・・。 (゜д゜;)」





「と、とりあえず、おれと多良崎も現地にいこう!」

「そ、そうですね。ここは僕と古来さんで大丈夫ですから、早く行ってください!」 

「うううう・・・。トップガンが・・・。死んだ! (ノ◇≦。)」


「勝手に殺すな! (▼Д▼#) 」











(つづく)







六甲山中の広大な敷地に、神戸HC専用牧場、「六甲スタリオン」が開設されたのは、グリーンワールドが土佐・響牧場に治療に旅立ってすぐのことだった。





「キキー!」




真新しい牧場の玄関口に、メルセデス製の馬運車が停車した。





「うわー!これは立派な牧場ですね!」

響牧場にグリーンワールドを預けた沖田が、栗東に戻る途中に六甲スタリオンの様子を見にきたようだ。

「おつかれさん、沖田くん!響夫妻は元気にしてたかい?」

「ええ、みなさんお元気でしたよ!グリも来春にはこの六甲スタリオンに戻れるそうです!」

「そうか!そいつは楽しみだ!グリにはこの牧場でたくさん子供を産んでもらわないとな!」 


牧場開設の念願かなった有田は、満面の笑みをうかべている。

「もうすぐ2歳馬が北海道から輸送されてくるんだろ?それなのに、ここは牧場長もいないじゃないか・・・。」 相棒の多良崎は今日も心配顔。

この二人、性格は正反対なのになぜか馬が合う。


「ああ、多良崎にはまだ言ってなかったな。牧場長・スタッフは手配済みだ。」

「ええ?!いつのまに!(((゜д゜;)))」



「神戸HCのみなさん、ご無沙汰してます。」


メルセデスの馬運車から、見覚えのある青年が姿を見せた。

「き、きみは・・・!「土佐・響牧場」の栄太郎くんじゃないか!」

「高知からの長旅お疲れさま!待ってたよ、えいくん!」

「ど、どうして神戸に・・・?」

「多良崎、紹介するよ。”六甲スタリオン牧場長”の響栄太郎くんだ。」

「えええええええええ!(((゜д゜;)))」



「ほ、ほんとに僕なんかでいいんですか?有田さん?」

「もちろん。新しい歴史を作る牧場だ、君のような若者こそ牧場長にふさわしい!」

「で、でも・・・僕は両親のような知識や経験もないし・・・。ただ都会に出れることが嬉しくて、お引き受けしただけで・・・。」

「心配するなって!えいくん1人に全てを背負わすつもりなんてないよ。」 そう言って有田は後ろを振り返った。



「そうそう。えいくんの面倒は、おれたちがしっかり見てやるよ!」

そこには、皇女プリンセスメールの生産者・古来夫妻が立っていた。

「フ、フルキさん!

 それに奥さんも!!!!(((゜д゜;))) 」 

多良崎は、目の前の状況が理解できないでいる。








「へへ!多良崎さん、そう驚かんでもええ。極寒の静内はかーちゃんの身体にも悪いしな。温暖な神戸の地で、余生を送ろうと決めたんじゃ。」

「そ、それは心強いが・・・。奥さん身体はもういいのか?」

「心配しないでおくれよ、多良崎さん!体調もホレこの通り!」 

生死の境を彷徨っていた古来夫人も、見違えるように元気になっていた。


「それより、昨日のレースは見たかい?神戸さん。」 と古来。

「昨日のレース?ひょっとして、京都1Rの新馬戦のことか?」

「多良崎さん、話が早いネ。あのレースの勝ち馬、あれはまさに神の子だよ。」

「神の子・・・!」 多良崎がうなった。

「もったままで後続を10馬身以上ちぎっていたっけ?」 有田もうなづく。






「やつの名は、マルゼンエッジ。神戸さんとこの2歳馬の前に、大きな壁となって立ちはだかるだろうね。」 

「ケッ!望むところだ。スーパーキッドがあの化け物をぶっちぎる日が待ち遠しいぜ!」 有田が高らかに笑った。


「よし、有田!六甲スタリオンの船出を祝って、今夜は祝杯をあげよう!」 

「OK、多良崎!さあみんな、メルセデスの馬運車に乗り込め!有馬温泉の料亭に行くぜ!」 

「こ、この車で行くの?!!!」

「ペルシャ絨毯を敷きつめてるんだ。文句あるか、多良崎?」

「そういう問題じゃないよ!!(((゜д゜;))) 」


(つづく)



馬房に戻ったグリーンワールドは、立ちあがることすら困難な状態であった。







「ヒヒン・・・」








有田と多良崎も、事の重大さを肌で感じ取っていた。





「お、沖田クン!脚は・・・?!」 






沖田がつらそうに首を振る。







「そ、そんな・・・」






「最後まであきらめなかった・・・。グリらしいですよ、ほんと・・・。」










「ダ、ダメ・・・なのか?!」






「なんとか一命をとりとめることは出来ても、レースには二度と・・・。」






「グリーーーー!!!」 その場に崩れ落ちる有田。







「泣くな、有田・・・!笑顔でねぎらってやれよ!」 そう叫んだ多良崎の頬にも涙がつたう。







「グスッ・・・。・・・グリ、お前はおれたちの誇りだよ」 有田は涙をふこうともしない。
















多良崎は、グリーンワールドと出会った夏の日を思い出していた。






「たいしたやつだよ・・・。あのチビが、G1ホースたちを相手にここまでやってこれたんだからな。」






「ああ。おれたちみたいな三流馬主を、G1の大舞台に連れてきてくれたもんな。本当にありがとうよ、グリ・・・。」















「きっと・・・、きっといつの日か、グリは”グレートマザー”になってくれるはずデス!」





「グスン・・・。そうですね、マスター!”夢の続き”はまだこれからですよ!」





「沖田くん・・・。」





「”夢の続き” か・・・!」



















日曜の昼下がり。芦屋の有田邸では、くるみがお昼寝の真っ最中。


窓辺にとまった小鳥が、かろやかにさえずった。




「ピッ、ピッ!」









楽しい夢を見ているのだろう。


ニッコリ笑って、グリン!と大きな寝返りをうった。


















 - 第1章 『GreenWorld』 【完】 -
















ご愛読ありがとうございました。


グリーンワールドと夢中で駆け抜けた2ヶ月間でした。

お付き合いくださった読者の方々に深く御礼申し上げます。


物語はひとまず完結、充電期間に入らせていただきますが、

いつか再び「不朽の名作」を掘りおこしていきたいと思います。


その日まで、しばしのお別れです。



最後に、本企画を快く承諾してくださったスクイズ研究所の

御三方に深く感謝いたします。



  2006年8月
                           びいだまん




















---------------【予告】---------------



第2章 『Livin' on the EDGE』


”伝説の若駒”と、その影を追い求めし者達の激戦譜
神戸HC宿命のライバルがついに登場!





第3章 『Bundle Gate』


史上最「狂」馬の【空白の1年】に迫る、抱腹絶倒の海外遠征巨編
世界遺産にこだまする、マスター富士川の咆哮をきけ!





第4章 『Blood on Blood』 


名牝の遺志を継ぐ仔と神戸HCが挑む、空前絶後のファイナルバトル
泣くな有田!成長したくるみが選んだ驚愕の婚約相手とは?!




------------------------------------


『・・・死んでも・・・、勝つ!!!』






ああ!グリーンワールドが追い上げた!鞍上・竹本豊の制止をふりきって、グリーンワールドが決死の追い上げ!なぜだ!なぜ走るグリーンワールド!脚よ砕けろとばかりに、グリーンワールドが命懸けのラストスパート!








さあ先頭はダイアナローズ!ダイアナローズが先頭だ!一馬身あってグリーンワールド懸命にこれを追って来る、そしてその外からリエマリアだ、手応え十分でリエマリア一気に前を捕らえるか、





そのあと一馬身切れてファインローズだが、さあ、グルーヴダイナ、グルーヴダイナが上がって来ているっ、サカナトウショウも直後だっ、これは面白くなった、有力どころが圏内入って力勝負、力勝負になりそうだ!







「ウワアアアアアアア!」




ダイアナ逃げるっ、ダイアナ逃げるっ、ダイアナローズがこのまま逃げ切るのか、名牝!名牝グリーンワールドが懸命に、懸命にこれに追いすがっているが、


さあ、リエマリアが外からこれに並んで来るぞ、リエマリアが来たっ、リエマリア!ダイアナローズ!グリーンワールド!三頭が叩き合い、三頭が叩き合う!これに加わってくるのは人気のグルーヴ、グルーヴダイナがこれに加わって来るっ、


ダイアナローズが懸命に叩かれて先頭だ!グリーンワールド二番手、これに並んでリエマリア、体勢なかなか変わってこないっ、グルーヴダイナ外から併せてこれらを追ってくる、そしてそして、サカナトウショウが詰めて来たぁ!





サカナトウショウが外からいーっきに上がって来てグルーヴダイナに並んで来たっ、五番手から四番手に上がってくるか、リエマリア先頭!、リエマリアが先頭!グリーンワールドも離れない、あとは桜の女王サカナトウショウがこれに迫ってくるがさあ、


負けじとグルーヴダイナが差して来るか、グルーヴダイナが差して来るぞ、グルーヴダイナが差して来たぁ、グルーヴだ、グルーヴダイナが上がって来た、抜けるかグルーヴ、三番手から二番手、先頭に代わる勢いか、





ついについにグルーヴダイナに春が来るか、前に出てくる、前に出てくる!あっと、しかしリエマリアも伸びかえすっ、リエマリアが伸びて先頭かっ、下がった下がったグリーンワールドは後退!グリーンワールドは限界か!




さあ先頭はリエマリア!グルーヴ根性見せるかっ、交わすか、グルーヴ二番手からリエを交わすかっ、ああっ、交わすか、交わすか、ついに春が訪れるのかグルーヴダイナ、


最後の一冠は渡せないっ、この一冠だけは渡さないっ、グルーヴか、グルーヴだ、グルーヴダイナが前に出てくるゴール板前、先頭はグルーヴダイナか、


リエマリア差し返そうとするがグルーヴだ、グルーヴが先頭にたった!
さあ、なんでもこい!なんでもこい!という体勢で、グルーヴダイナが堂々の先頭!

あっ、あっ、あっ・・・来た、来た、来たぁ・・・








大外からメジロメジロメジロぉ!!!




オークス馬メジロトップレディだっ、捕らえるかっ、捕らえる勢いだゴール目前、後方一気、末脚爆発、やはりグルーヴを阻止するのはメジロの刺客かっ、鬼脚見せたトップレディこれは凄い脚だ、並んだ、並んだところ、




今っ、ゴールイン!!!!






「ウワアアアアアア!」


なんとなんと、気付きませんでしたメジロトップレディ!!これは驚きっ、驚きましたメジロトップレディ!とても届く位置ではないと思っていたんですが・・・


届いていましたゴール板前、しかしグルーヴを捕らえきったかどうか。並んでいましたが、どうでしょうか・・・。勢いは完全にトップレディでしたが、何せあの位置からですから届いたかどうか。


しかし凄い勢い、凄い脚。有力各馬の力業を後ろで見ていたトップレディ。溜めていました。溜めて最後の最後で繰り出した”樫の豪脚”!一方グルーヴダイナもよく頑張りました。春の2冠と同じように、横綱相撲を今回も頑なに守りながら最後の一冠を取りに来ました。

その二頭がぶつかり合ったゴール板前。現在スローでターフビジョンにゴールシーンが映し出されておりますが・・・ああっ、これでもよく分かりません。どうなんでしょうか。電光掲示板には一着・二着が写真判定で三着はリエマリア、四着サカナトウショウと上がっております。


ああ!!電光掲示板に今上がりました!















11番!

グルーヴダイナのゼッケン11番が

頂上に輝いていますっ!!!





「ウワアアアアアア!」

一着はグルーヴダイナっ、やりましたグルーヴダイナ、ついに栄冠に輝いたグルーヴダイナ。メジロトップレディにとっては大きなハナ差となりましたが、十分その力を発揮したと言って良いでしょう。


勝ちましたのはゼッケン11番グルーヴダイナ。父ナリタブライアン、母エアグルーヴ。オーナーは 名門・タカナシ・ホールディングスです!


宿命を背負いし少女が、ついに悲願のG1制覇を成し遂げました!

( 次回、最終話 『夢の続き』 )




・・・さあ、全馬ゲートイン完了。胸が高鳴りますG1秋華賞、いよいよスタートであります!!!






「ガシャン!」






さて注目の先行争いでありますが、何が行きますか、内目からゼッケン4番ダイアナローズが出てくる構えか、押して押してダイアナローズが行くようです。これを見て好スタート切っていたグリーンワールドがスッと控える感じで二番手に付けます。





外からリエマリアも上がって来て三番手、アップルフェロー、ファインローズ並んでいってグルーヴダイナが馬群の中、六番手を追走であります。さてその後ろでありますが、ゼッケン14番はアクエリアスが行っております。内からタクシマテイオーが行って、サカナトウショウはここ、現在九番手から十番手あたり、



アニバーサリーが最内通って直後、並ぶようにメジロトップレディが進んでいます。今日は前目、いつもより前目で追走している樫の女王メジロトップレディでありますが、一馬身差でブルジワ、オッケーマインドなど行ってメテオは更に半馬身さで十四番手五番手。後ろから二頭目になりますがブラッドララーはここ。最後方は一馬身差で追っつけ気味、パリジェンヌが最後方から行って全馬16頭、



あまり縦長ではありません、隊列はそう長くありませんで各馬向こう上面を行くところ、先頭はダイアナローズが飛ばしていってリードは一馬身半くらい。グリーンワールドがこれを見る形で二番手しっかり折り合って進んでいます。リエマリアが更にこれを見る感じで三番手、



良い感じで行っているかリエマリア、そのあとにアップルフェローが行って差が無くファインローズ付けています。無冠の女王、グルーヴダイナはそのあとで現在六番手を追走。今日こそ掴むかこの栄冠、ラストチャンスに賭けるグルーヴダイナが進んでいきます。



桜花賞馬サカナトウショウが丁度これを見る形か、有力各馬それぞれ目標にしている馬がいるのかこのあたり、興味深い位置取りで隊列が出来上がっておりますが、メジロトップレディのターゲットはサカナトウショウなのか、現在十一番手、あとはブルジワ以下続いて前は第三コーナーに差し掛かって先頭相変わらずダイアナローズ、




ダイアナローズ飛ばしておりますがこれは速い速い、かなり2000mにしては速いペースで飛ばしておりますダイアナローズ、こうなると中団以下にチャンスあり、差し馬に有利な展開でありますが、グングン行ったダイアナローズを先頭に各馬第三コーナーから最終コーナー、二番手グリーンワールド鞍上、竹本豊あたりの判断に注目が集まるところ、



おおっと、ハイペースを追走していたグリーンワールドが苦しそう!大きくヨレて・・・これはいけない!グリーンワールドは失速!「桜花賞の悪夢」の再現か?!



さあ後続ドッと動いてくる最終コーナー、動いたのはグルーヴダイナかっ、グルーヴダイナが進軍開始、今日も、今日も早めに動くのかグルーヴダイナ、 これを見て後ろも上がって来てレースが一気に、一気に動き始めた感じ、外からサカナトウショウも一気に上がって来る、



さあどうなる秋華賞、ダイアナローズを先頭にして各馬最後の直線に入ってきます!



「ウワアアアアアア!」



(つづく)





連日の雨が嘘のように、カラッっと晴れわたりました京都競馬場!”天高く馬肥ゆる秋”とはこのことでしょうか、馬場状態はパンパンの良馬場であります!









「おい!”雨乞いジョージ”の野郎を連れてこい!」 馬主席の多良崎が怒鳴った。






「ワハハハ!どうやら”メジロの総帥”さんは晴れ女らしいな。」  有田は大一番を前に、終始機嫌がいい。







長かった3冠ロードも、ついにフィナーレを迎えようとしています。


3強と謳われた素質馬たちは、ここまでよもやの無冠。そしてその筆頭格であったプリンセスメールは既に引退、次代にその夢を託しターフを去りました。春のクラシック戦線を盛り上げたウインドジュエルも、短距離界にその活路を見出しました。今日この場に、彼女達の雄姿が見れないことに、一抹の寂しさを感じます。





サカナトウショウ・メジロトップレディのG1ホース勢は、前哨戦よもやの大敗。そのショックから立ち直っているかがポイントでしょう。


かわって1番人気に支持されてるのは、女傑グルーヴダイナ!
プリンセスS・桜花賞・オークスと、これまで出走してきたG1全てに2着。最後にその意地を見せることができるか!


そして見事にカムバックをはたした、この2頭も忘れてはいけません。リエマリアとグリーンワールド!



なんとリエマリアは、これが3冠レース初出走となります。ともに怪我からの復帰戦となった前走つぼみカップを1・2着と好走。直前オッズではこれが評価され、2・3番人気に支持されています。フジキセキ産駒最強牝馬はどちらか?こちらも楽しみな対決であります。

それぞれの夏を越え、少女から大人への階段を駆け上がる乙女たちが、最後の1冠に挑みます!

「ウワアアアアアア」

「いよいよ発走か。」 

ルストマ・シーランドの会議室に、優駿事業部の精鋭が集まりモニターに見入っている。

「ウインドジュエルの秋華賞回避は英断でしたね、代表。」  若林の姿も見える。

「そうだね、若林くん。サクラバクシンオー産駒であるジュエル本来のステージは、短距離戦線にほかならない。」

「はい。」

「秋はマイルとスプリントのG1を狙うぞ!」

一同がうなづく。




「多良崎・・・」 若林は遠く西の空をみつめた。





かわって、京都競馬場の馬主席。感慨深げにターフを見つめる男の姿があった。


「高梨さん、いよいよですね。」

「おお!有田くんか。」

「グルーヴダイナを本気でセリあった、あの夏の日が懐かしいですね。」

「そう、全てはあの日から始まった。今日は、今日だけは、勝たせてもらうよ!」

「へへ、グリーンワールドだってそう簡単には負けませんよ!」


「ウワアアアアアア」


・・・さあ、全馬ゲートイン完了。胸が高鳴りますG1秋華賞、いよいよスタートであります!!!


「ガシャン!」

(つづく)