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北海道中央部、ちょうど千歳~帯広の間にはかつては多くのアイヌ民族の史跡である「チャシ」が残されています。もっともその多くは自然へと還り、ヒグマが闊歩する危険地帯。既に人家の多い完全な人間の生活圏ですらヒグマが出没しているのに、ましてやヒグマのテリトリーとなっている大自然の中へと踏み入れるのはやはり命がけの覚悟が要求される時代となってきました。実際、車で行っても怖いし…そんな中で鉄道路線や高速道路からかなり離れた山奥にキチンと整備されたチャシ遺跡があるのをご存知でしょうか?北海道厚真町、苫小牧から車で約50分走らせると辿り着く土地で、かなりの山奥にありますが、史跡としては良好に整備されていて、非常に頭が下がる思いでした。勿論、熊鈴を完備させてね…もっとも人間を襲い掛かるヒグマだと何の意味もないですがね…

苫小牧駅前からレンタカーを借りて約50分ほど

専厚寺という寺院の脇を行く小道をそのまま車で走らせるとアスファルト舗装が途切れ、砂利道に。一般車で走るにはなかなか揺れて怖いものですが、それ以上に恐ろしいのは果たしてチャシへ行く登り口を発見できるのか?ということでした。

しかし10分くらい走らせるとその心配は杞憂に終わりました。見間違えることのない桜丘チャシの真新しい案内板が設置されている場所に行きつきました。しか~し!何と地元の方らの車が数台停まっており、駐車できるスペースが無い!仕方なく、近くで明らかに車を停めて、付近で草刈りをしておられる方らに了承貰って、道沿いに停めさせていただきました。

こうやって綺麗に草狩りをされておられることでチャシまでの道がキチンと行けるのですから頭が下がる思いです。同時にこれだけ人の手が入る状態ならヒグマに出没する確率もだいぶ下がるな…と安心できます。

この桜丘チャシ、2018年の北海道を襲った胆振大地震の影響でしばらくチャシ周囲で土砂崩れが発生し、しばらく立ち入れなかったという史跡でした。しかし、それでも地元の方らによる復旧作業で今ではこうして新たな道が作られており、貴重な史跡を守らんとする地元の方の熱い思いが伝わってくる史跡です。

歩いて20分くらいで遂にチャシの遺構に到達!間違いなく人の手で造成された空堀に出くわしました。こういう構造は和人もアイヌ人もない、万国共通の構造です。

桜丘チャシに関して特筆すべきはチャシとしては構造的に純然たる戦闘施設として機能が明らかになっている点です。アイヌのチャシ遺跡に関しては「砦」としての戦闘施設の他に、祭祀の祈りの場所という宗教施設、あるいは灯台などの地理的標識機能など様々な用途があり(あるいは複合的な機能か?)、諸説あってどの用途なのか判然としない場合が多いのですが、桜丘チャシはその構造などから約500年前のものと判明しており、その構造が戦闘施設であることが分かっています。アイヌの反乱であるシャクシャインの乱から更に1世紀前に果たして、これほどの山奥に戦闘施設が必要であった戦乱とは何だったのか?

旧領の先端部は物見台の機能を果たしていました。

先端部は切土構造造成をすることで前面の防御力を高める溝の役割を果たしていました。

今は木々が生い茂っていてちょっと視界が限られていましたが、

あの向こうは千歳や苫小牧などの開けた文明社会が見えてきます。

下の案内板があるためか、この辺にはチャシを示す標識などは無し。それでもこれだけ綺麗に整備されていたら御の字です。
下山していくとちょうど草刈していたおじさん達も作業を終えて更に上方へと向かっていくところとまた出会います。すれ違う時に「え~!もう行ってきたの!」と少しビックリしていた様子。改めてこれだけ綺麗に整備されていることに感謝の思いを伝えて気分よくこの地を去ることができました。
 
〇アクセス

JR室蘭本線苫小牧駅から車で50分で登り口、そこから徒歩20分でチャシ跡

 

「桜丘チャシに狼煙が一本…」