よく創作ものだと城攻めの際に出てくるのが坑道戦術ですね。堅固な城塞を攻囲軍が攻略せんと密かに地下に穴を掘り、坑道を創り上げようとする。それに対して、城の守備軍は何として潰そうと地面に耳を当てて、更に対抗の坑道を掘るせめぎ合い。

もっとも現実世界ではなかなかその跡地はお目にかかれない。そんななか貴重な坑道が残っているのがここ茨城県筑西市にある

関城

です。鎌倉時代には結城氏一族の関氏が領主であった頃に築かれた城で、この城がスポットが当たるのは南北朝時代の争乱の頃でした。

暦応4年/興国2年(1341)、東国において南朝の勢力拡大しようと励む北畠親房は関東、東北の武士達に南朝に味方するよう勧誘に努めます。しかし、なかなか捗々しい成果を上げられぬうちに同じ南朝勢力による足の引っ張り合いによって、その勢力は退潮していきました。

 

それまで後醍醐帝から東国における全権を委任されていた親房だったのですが、後醍醐帝が崩御し、跡を継いだ後村上帝がまだ幼年もあって指導力を発揮できないうちに南朝側の貴族・近衛経忠が同じく関東に下向し、自らに味方するように働きかけたのでした(藤氏一揆)この南朝側首脳部の混乱ぶりに動揺したそれまで南朝側にいた武士達の多くが離反していきます。

 

 

 

『逃げ上手の若君』でも登場する足を引っ張る無能貴族…

それまで根拠地としていた小田城の小田治久もとうとう北朝方に寝返り、追い詰められた親房は常陸南部の関城・大宝城の2城に籠城します。この2城は大宝沼という沼沢地に築かれたかなりの堅固さを誇る城郭で、しぶとく抗戦したのですが、

 

そこに足利の高師冬が襲い掛かります。この時、師冬は当時としては非常に珍しい鉱山採掘者を駆り出して関城へ向かう地下トンネルを掘らせるという作戦にまで出ました。これを察知した関城側も反対側からトンネルを掘り始め、両者の乱掘がたたって落盤事故まで起こしてしまうことになるのでした。

 

この時に親房がかつて南朝に忠を尽くしたシリアルキラー

じゃないや老将結城宗広の息子の親朝に父以来の忠勤に訴え、その援軍を得ようとするのですが、如何せんその具体的メリット無き観念論的忠義論にウンザリしていたところに、「来年は『聖徳太子未来記』によると大変化の起こる年」などと最早オカルトチックな「予言」まで出す様に愛想を尽き果てた親朝は遂に北朝側につくことを宣言。援軍の望みが絶たれた関城は興国4年/康永2年(1343)11月に落城。城主の関宗祐は戦死。北畠親房は辛うじて脱出し、その後吉野に帰還することになるのでした。

これによって関東の南朝勢力は壊滅し、師冬は従兄弟にして養父である高師直と共に北朝を有利に持ち込む原動力となったのでした。しかし、彼の苦闘は残念ながら報われず、やがて観応の擾乱で遂に悲劇を迎えることになります。

果たして吹雪は自我を取り戻すことができるのでしょうか…

 

〇田園地帯に残る坑道

関城までは大宝城から歩いて行ける近距離にあります。かつては広大な大宝沼が広がっていましたが、今では埋め立てられて田園地帯となっており、普通に道路を進んでいけば到着できる距離です。

残念ながら関城の遺構の残りは余り良くありません。戦前よりこの近くに帝国軍の飛行場があった関係で、この地を飛行機の隠匿場所にしていたために地形がかなり改変されているとのこと。更に現在は民家の敷地や道路となってしまっていまるので、遺構の残りは断片的

土塁上に残る祠

城主・関宗祐を祀る墓。

戦前までは皇国史観全盛期とあって、南朝方に忠節を尽くした人物に対する顕彰が盛んだったころの名残。それなら

その史跡くらいキチンと保存してくれよ

とかなり私情丸出しでの恨み言が出てきそうになります。

先の祠がある土塁の全貌を写した写真

 

民家の敷地に残る土塁

ちょっとどこまで入っていいのか分からない微妙さが漂います((笑))

一応、城跡の石碑が立つこの辺りが関城の中心部と見ていいでしょう。

そしてその城跡から5分ほど歩いた場所に

師冬が掘らせたという坑道跡が遺されています。

大正時代に偶然発見されたということで、流石にこんな貴重な遺跡はなかなか見られないということでここはしっかり保存されていました。

勿論この中には立ち入ることができませんが、これだけでも見れただけでかなり嬉しかった。

関城縄張り図

 

さて、関城攻めを終えて、最寄り駅の

騰波ノ江駅を目指しますが、これが思いのほか遠い。おまけに道がかなり狭く、くねくねと折れ曲がった道でかなり悪戦苦闘しました。やはり今の時代にはスマホナビが必須となってきています。

 

騰波ノ江駅到着。

再び関東鉄道常総線に乗車して、茨城県ローカル線旅に戻りました。

 

〇アクセス

関東鉄道常総線騰波ノ江駅から徒歩30分

 

「関城に狼煙が一本…」