茨城県…かつての常陸国は南北朝時代には南朝側と北朝側の間で激しい攻防戦を繰り広げていました。これは常陸が南朝側にとっては数少ない有力拠点であったためであり、そのため北朝…実質的には足利軍にとっては攻略を目指すべき目標であったからです。そんな常陸国で最期まで抵抗を続けた公家武将がおりました。

現在、『逃げ上手の若君』でも絶賛活躍中の春日顕国です。

基本的には使い物にならない公家武将の中では数少ない戦において有能ぶりを発揮していた貴族。同じく日本史最強の貴族・北畠顕家卿の下で活躍し、彼の死後もその父親である北畠親房の下で活躍して、東国における南朝側武将としてその存在は足利にとっても極めて厄介な難敵でした。しかし、東国においても南朝陣営はどんどんと劣勢になっていき、東国における南朝側拠点は次々に陥落し、東国方面の南朝側総司令官である北畠親房もまた遂に常陸から撤退します。しかし、春日顕国はなおも抵抗を続け、その最期の拠点となったのが今回紹介する馴馬城でした。

暦応4年(北朝)/興国2年(南朝)(1341年)には既に南朝側における常陸国河内郡の拠点として機能していた馴馬城。しかし、ここも康永3年/興国5年(1344)には足利軍に制圧されます。この時、既に潜伏しながら逃亡を続けていた春日顕国はこの城の奪還に向けて活動を開始。その後、この城を奪還して籠城しますが、敢え無く落城し、遂に彼もまた足利軍に囚われることになりました。最終的に京まで連行されて、処刑された春日顕国。南北朝のラスボスである足利尊氏もこの春日処刑の報に際して

足利尊氏「東国も春日侍従(顕国)が討たれて平穏になるわー」

と書き記すほどでした。実際、彼の死によって遂に南朝は関東における抵抗は終焉したのでした。南北朝のラスボスでさえ脅威視するほどの有能ぶりを示した春日顕国。逃げ若でも活躍する彼もまた遂にその志を達成することなく、落命することになるのです。思えば本当に過酷な時代でした。

 

〇小さなローカル線の終点駅に残る城跡

茨城県はJR以外にも多くの鉄道路線が走る県。もちろんここもまた多くのローカル線が消えていきましたが、その中でなおも健在ぶりを示すのが関東鉄道です。この鉄道会社、ちょっと興味深いことに2つの鉄道路線があります。一つは東京近郊とも言うべき、取手駅から県北部の下館まで結ぶ常総線。そしてもう一つが僅か3駅ほどの極めて短い竜ケ崎線なんですが、JR常磐線とつながりながら、互いには結ばれていない。これは元々竜ケ崎線が別の鉄道会社路線だったのが、その後紆余曲折を経て、常総線運営の会社と一体となったためでした。今回はそんな僅か3駅、4.5キロ7分ほどの鉄道路線旅と共にお届けします。

ややこしいことにJRと関東鉄道の乗換駅は2つの駅名があります。実質的には同じ駅なのに2つの駅名

JR常磐線が龍ヶ崎市駅

関東鉄道が佐貫駅であり、竜ケ崎駅はこの終点です。

これは自治体である龍ヶ崎市が市の知名度UPのために玄関口にあたるJR常磐線側の方に市名を関する駅に改称させたいという意向を反映したもの。一方の関東鉄道の方は元々ここの地名であった佐貫の名を残す選択をしたためでした。(元々ここは佐貫町という別の自治体であったのが合併により竜ケ崎市となったmたえ)

それでは竜ケ崎市駅から佐貫駅に乗り換え!

訪問当時の2021年は有人駅であった佐貫駅ですが、この後すぐに無人化され、今は窓口は無くなってしまいました

土曜日の朝ということもあってかホームは静かなものでした

そしてディーゼルカーで竜ケ崎駅行きに乗車します

途中、唯一の中間駅である入地駅

そして本当に7分で終点駅に到着しました。本当にあっという間でしたね!

竜ケ崎駅は龍ヶ崎市の玄関口駅、現在でも多くの乗客が利用し、常磐線に乗り換えて東京方面へと向かいます。

駅舎は古いながらも改装しながら使われ続けます。

さて目的地の馴馬城は龍ヶ崎歴史民俗資料館を目印にすると良いでしょう。

約15分ほどで到着しました。城跡は資料館敷地の背後にあります。

SLの展示がされています。この資料館では珍しいことに野外に無料の展示物があります。後程紹介しましょう。

ちょうど資料館の駐車場背後に城跡の解説版があり。城の遺構を探すなら必ずこの案内板で確認しましょう。現在では馴馬城の遺構は殆どが田園と化しており、なかなか遺構が観察しづらい欠点があります。

坂道を上がっていくと

ここがかつての馴馬城跡です!…はい、完全に田畑と化していますね

それでもこの奥には森林があり、そこには城跡の遺構が残っているとの情報を先の案内板で入手していました。

空堀跡

空堀跡

土塁跡

案内板では土橋跡とされています

今となってはかなり遺構の観察は困難となっていました。ああ、無情…

折角なので先の資料館の敷地にある野外の無料展示物を見てみましょう

農家の農具が遺されています

もう一つは昔ながらの商店の展示物

ドラマでしかお目にかかれないような昭和のテイスト満載な商店も見ることができました。

 

〇アクセス

関東鉄道竜ケ崎線竜ケ崎駅から徒歩15分

 

「馴馬城に狼煙が一本…」