昭和の時代から「城」は地域によってバラつきがありますが、「観光資源」として整備されてきました。その中で多くの建物が復元もしくは復興という形で、建造されてきましたが、しかし建物とは形あるものはいつか壊れるもの。特に問題となってきているのは「史実考証」基準で言えば、「本当にこれあったの?」と言われるような建物が老朽化の時期を迎えているということです。

しかし、現在では多くの自治体は財政的に苦境に立たされており、よほど知名度の高い城か、城郭整備に熱心な自治体や住民がいる地域でないとこの老朽化問題に対する答えとしては取り壊しという問題が出てくるのではないか?と危惧しているところです。そしてそんな危惧の先駆けとなる事態が発生したのが愛知県西尾市にある今回取り上げる東条城。

ここにはかつて鎌倉時代の絵巻物を参考にしたと言われる櫓と物見台がありました。平成元年に復元されたのですが、つい3年前に取り壊されることになりました。木造ではあっても残念ながら長持ちするとは限りません。残念ながら、このような事例は今後増えてくるのではないかと危惧するばかり。それでは今回は取り壊される前の貴重な写真をお届けします。

名鉄西尾線、西尾城のある西尾駅から数駅ほど更に南にある上横須賀駅にて下車。ここから

歩いて30分ほどの小高い丘、標高28mのところに東条城があります。

登城口

一番下にある帯曲輪

横矢掛け

敵を側面から攻撃するために設けられた陣地

少し登り道を歩いているとすぐに城内に到達

 

そして今回とうとう過去のものとなってしまった城門と物見櫓です。確かに正直、城としての雰囲気が満載だっただけにこれが無くなってしまったのはやはり残念というしかありません。

三ノ丸跡

既に訪問時には老朽化著しく城門と櫓には立ち入り禁止の措置が取られていました。

 

この柵自体は残っているかな…

かつては著名な文人も訪れたと言われる由緒ある古城の本丸

いよいよこれらともお別れか…と思うと寂しい限り

 

土塁跡

 

隅櫓跡

現在は僅かに土盛が高くなっている箇所がかつて隅櫓があった場所とされています。

夕陽に照らされながらも間もなく消えゆく運命の物見櫓

これが最後と目に焼き付けておきました。

 

二の丸跡です。

全体的に整備されていて、古城としての雰囲気が非常に良かったです。残念ながら建物は無くなってしまいましたが、どうかキチンと管理維持されることを願ってやみません。

さて再び名鉄西尾線に乗車

まもなく蒲郡線との乗換駅である吉良吉田駅に到着しました。

ここから蒲郡まで走る名鉄蒲郡線は利用客が少なくなってきており、存廃問題も取りざたされています。果たしてこの路線もどうなるか…

蒲郡線は三河湾沿岸を走ることで、その車窓からは海の景色をよく見ることができました。

終着駅蒲郡駅に到着。これにて三河南部の城巡りは終了です。

 

〇名族吉良氏の城

鎌倉時代の前期に、足利義氏は三河国守護及び吉良荘の地頭となったことから、足利家の一門衆として吉良氏と名乗るようになりました。この中で義氏の三男義継が東条の領主となったことから東条吉良氏としてこの地を戦国時代まで治めてきたのです。ここは吉良氏の館城としての役割がありました。

 応仁の乱では吉良氏は西尾の吉良氏と東条の吉良氏が同族ながら西軍・東軍と別れて、同族相喰む内戦となりますが、その後は戦国にも存続し続けました。12代当主持広は当時三河で勢力を伸ばしつつあった松平清康の妹を娶り、その後松平家が清康の急死で大混乱に陥るとその遺児である仙千代、後の松平広忠の親代わりとなって松平家の存続に力を貸しました。

しかし、この広忠の息子である竹千代によってその恩は仇で返されることになりました。

桶狭間合戦後の今川氏衰退の中で、織田信長と結んだ松平元康…後の徳川家康は今川方となった14代吉良義昭を攻め、東条城は落城。ここに東条吉良氏は滅亡しました。その後、家康は13代義定の子を旗本に取り立て、これが『忠臣蔵』で有名な高家の吉良氏へと至ったのでした。つまり江戸期には再び徳川によって滅亡することに…

 東条城には松平家の一門である松平家忠が入り、この系統は東条松平家と名乗ります。天正9年(1581)に家忠が子なく没すると家康は4男の忠吉を養子として入れますが、彼もまた関ケ原合戦後に没し、東条松平家は断絶するのでした。東条城も徳川の関東移封と共に廃城となったと考えられています。

 なお、この由緒ある城には多くの文人らが訪れており、冷泉為和や連歌師の宗長らが大永年間(1521~1527)に東条城で和歌や連歌を吟じ合う場所でもありました。また信長や家康も鷹狩の場所として、ここをよく訪れたと記録に残っています。

 

 

〇アクセス


名鉄西尾線上横須賀駅から徒歩30分で主郭

 

「三河東条城に狼煙が一本…」