11月に見てきたのですが、なかなか自分の中で感想が纏まらなくて、ようやくの記事UPになりました。
子供のころからの怪獣映画オタクである私が折角の怪獣映画鑑賞なんですから、言いたいことは山のようにありますが、なかなか上手く纏まらない。そんなわけで中身については若干短めで参ります。
さて最初に情報接した時には「監督が監督だからなぁ…」と若干不安要素満載。それでも前評判がそれを掌返しするかのように絶賛の連続だったので、公開初週には見に行ってきました。感想は…
「ゴジラパートは文句なく素晴らしかった!
人間ドラマパートは…うーん…」
元々私は怪獣映画ではリアリティ追及派なので、その意味では本作の方針はちょっと余り「うーん…」と悩みどころだったです。
私が怪獣映画で何回も見ている「ガメラ2 レギオン襲来」や「シン・ゴジラ」は徹底的なリアリティ追及路線でいったのが素晴らしく何度も鑑賞してしまいました。これに対して、本作はどちらかというと
昭和のゴジラシリーズみたいな徹底的な娯楽映画としての路線
が強かったんですね。前者は「現実世界に巨大怪獣が出現したらどう対処するか?」という一点においてリアリティ追及していたのに対して、今回はそういう点でのリアリティは余りない。「主人公らがゴジラに立ち向かうために奔走する」「通常兵器では対抗できないゴジラ対策で怪しげな学者が用意した効果不明な作戦でゴジラに立ち向かう」というこの辺のノリはどこか昭和のゴジラ映画を彷彿とさせるものです。
それでも文句なく素晴らしかったのはゴジラについては徹底的に「災厄」の象徴として描くというまさに初代ゴジラを彷彿させる暴れっぷりだったのも大きい。そう山崎監督、本当に過去の怪獣映画シリーズに対するリスペクトは素晴らしいの一言でした。「いかに従来のゴジラファンを納得させるか?」という点ではツボを突かれた気分。『シン・ゴジラ』の場合は作り手の庵野秀明&樋口真嗣コンビもまた稀代の特撮映画オタクが「おれたちのかんがえるさいきょうのとくさつえいが」で作ったのに対して、山崎監督は「いかに怪獣映画ファンを満足させられるか」で作りあげた感じ。もちろんきちんと過去作品に精通していないとげきないことです。ゴジラが銀座に上陸して徹底的に暴れまくるシーンでは容赦なく人々を襲い掛かり、踏みつぶすシーンは『ガメラ3 邪神覚醒』を代表する金子監督作品を彷彿させるし(シン・ゴジラでも犠牲になる人々はいますが、そこら辺はぼかした描写)、恒例の放射熱戦の発射シーンでの発射シークエンスはハリウッドのギャレス・エドワーズ版ゴジラ(2014)にインスパイアしたもの。更に本作のゴジラは従来のゴジラに比べて耐久力は高くない(実際高雄からの砲撃でダメージを受けている)し、口腔内などの内部における攻撃に対しては弱いという弱点がありますが、一方で再生能力については不死身のゴジラ細胞の如く再生力が凄まじい。そういう風に怪獣映画オタクには色々な意味で美味しいシーンでした。
その一方で本作でのオリジナルというべきなのはサメ映画のような海でのゴジラの対決。ゴジラが主人公らの乗る木造船を追いかけるシーンなんかも凄い戦争映画のノリのような迫力があったし、軍艦との対決とか本作独自のシーンも見もの。
一番興奮したのはやはりクライマックスの海神作戦でのゴジラ映画お馴染みの伊福部昭作曲の「ゴジラのテーマ」。「シン・ゴジラ」でも同じく使用されていましたが、個人的には「ー1.0」の方がゴジラファンの魂を熱くさせた。元々この曲のコンセプトは「ゴジラに立ち向かう人類」をテーマにしているので、これが「海神作戦」でゴジラに立ち向かう駆逐艦雪風らゴジラ対策部隊がゴジラに立ち向かうシーンで使われると凄まじい昂揚感がありました(笑)
結論としては怪獣映画としては『シン・ゴジラ』とは違う路線だけど大迫力だからおススメ!
という出来でした。うん、大満足
…
ただし人間ドラマパートについては「退屈」の一言でした。
一部では物議をかもしている「GHQや日本国政府はゴジラに対しては不在で、主人公ら民間有志(といっても終戦直後で殆どが旧帝国軍の復員兵なのですが)がゴジラに立ち向かう」という設定。いやこれが先の2作品のようなリアリティ追及路線の怪獣映画なら間違いなく私も大批判したところなのですが、私個人としては「そもそも本作はリアリティではなく娯楽重視なんでまあそこまで批判することはない」「逆に兵器として帝国軍兵器が登場するので、これ以上突っ込んだ描写をすると逆に生々しい論争が起きかねない」と思うのでそれに対しては深く言うつもりはありません。
ただそれをおいても人間パートについては例えば神木くん演じる主人公や浜辺美波のヒロインが結びつくシーンとか悪い意味での山崎監督作品らしさ満載の予定調和のストーリーで退屈の一言でした。それをおいてもゴジラが出現してからの主人公の描写はご都合主義極まれり。ゴジラがヒロインのいる銀座に出現すると大勢の人々が逃げ惑う中でピンポイントで彷徨うヒロインを発見するシーンなんか「おいおい!」と思ったし、何よりもゴジラが放射熱戦発射シークエンスをしているシーンで主人公が他の人々と同じ呆然としていのは明らかな減点。何故かというとこの前段階での海上での対決で主人公、ゴジラが高雄に対して放射熱戦を吐くのを目撃しているんですよね。もちろん海中からなので詳細な発射シークエンスを見ているわけではないにしても、あれを見てピンとこないのが私的には納得できない。ヒロインを(ネタバレ厳禁)してしまうためのご都合主義としか見えなかった。
更にゴジラがいつ上陸してくるかそもそもその行動原理ははっきり分かっているわけではないのに、かつて大戸島でゴジラに部下を犠牲になった青木さん演じる整備士官を探すためにあの手この手を尽くすのに必死なんですが、いや流石にそれはない!の一言。せめてここら辺もう少しゴジラ出現~海神作戦に向けての緊張感が全然なかったのがマイナス。ただそんな中で素晴らしかったのが田中美央さん演じる堀田辰雄。
怪獣映画における司令官ポジションの風格という意味では昭和ゴジラシリーズの名優の故・田崎潤の再来を見事に演じられていました。六左さん、これガチで井伊直弼公を演じられる!
この怪獣パートの高クオリティと人間パートの残念さの落差は
『ガメラ3 邪神覚醒』を彷彿させるものでした。
実際G3私今も何度も見ているのですが、大抵人間ドラマパートは殆どカットして、ほぼほぼ怪獣パートだけしか見ていません。多分「ゴジラ-1.0」もDVD買っても同じことになりそう。あ、でも最後のエンディングだけはご都合主義のシーンに見えて、実はかなり考え込まれた設定だったのは良かったと思えます。もっとも、これもシン・ゴジラ第5形態と同じで続編匂わせでのお蔵入りが予想されるのが悲しいところですが…