〇公園の周りは城跡の遺構


松尾城から谷の方へ降りていく階段…

橋を渡ってすぐのところがもう一つの小笠原の城・鈴岡城です。それにしても本当に近い。感覚的には

お隣さん

といっていいほどの距離の近さです。

松尾城跡

そして鈴岡城。

階段を再び登るとまず出くわしたのが出丸跡

位置的には松尾城に対する防御施設といったところでしょうか。

そしてここで出くわすのが今でも雑草一つ生えていない堀切です。

この堀切の底道が今では散策道となっているので歩きやすい

麓の街並み

主郭跡に立つ鈴岡公園の石碑

ここが鈴岡城の主郭

今では街を見下ろす展望台としての役割を果たしています。

そして整地され、公園となった一角には今も土塁が残っていました。

かなりの大きな規模であり、小笠原の勢力の強さがうかがい知れます。

そしてその外側にはかつての城跡の遺構である巨大空堀が今も明瞭に残っていました!

いやこれは凄い。公園と城跡が見事に一体化した見本と言ってもいいでしょう。

二の丸には遊具が建ち並ぶ公園となっており、家族連れで賑わっていました。この子たちにも将来的には城好きが誕生してくれいないものかな…

ちゃんと公園の外側の地形を見れば、かつての城の名残を味わえるのが趣深い。

駐車場の脇にも残る空堀

鈴岡城はどちらかというと丘城なので非常に登りやすい。駐車場も完備しているので、訪問が容易なのもポイント高し

少し脇の方へ行くとちょっと判別しづらいですが、腰曲輪と切岸が残っています。

見るだけで圧倒される巨大空堀、そしてその向こうには子供達が遊ぶ公園としての風景が一体となっている。

この城を象徴する意味ではこの画像ほど打ってつけの写真はありません。

城の外側へと進んでいくと外曲輪と呼ばれる城の外郭部となります。

ここは城の守りという観点から主郭や二の曲輪よりも地形的に低くなっています。

もっと奥へと進みたいのですが、時間の関係でここまで。

麓の街へと降りていく道を進むと外堀の形状を見ると畝状となっていました。かつての城の虎口?ではないかとみられています。

最後に城の外堀と土塁を撮影して終わりです。

 

松尾城と鈴岡城、2つの城は谷一つを挟んで向かい合うように併存していました。ただ断然おススメするならここ鈴岡城でしょう。堀や土塁などの遺構の形状が明瞭に観察でき、更に随所にきちんと案内板もあり、それでいて歩きやすい。それにしても、こんな至近距離に2つある城が隣接しているのは果たしてかつて城兵にとってはどんな気分だったでしょう。友好的であればまだしも、敵対関係になったら…

それでは再び飯田線に乗車して、更に北上します。

飯田線の中心駅・長野県伊那地方の中心である飯田駅に到着。ホームには特急伊那路が停車していました。

赤い屋根の飯田駅駅舎

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そして中央本線岡谷駅まで来た時には既に夜となっていました。ここから特急あずさに乗って一路関東へと向かいます。

 

〇名門・小笠原の内紛

『逃げ上手の若君』でも言及されていましたが

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信濃は山地の多い土地であり、平地である盆地を囲むように山々が広がり、信濃の国衆たちは必然的に中心である平地の所領を守るために数多くの城を築き、敵対勢力が侵入させないよう防衛ネットワークを築いていました。伊那地方は天竜川に沿うように河岸段丘の崖端城が多く築かれているのが特徴です。

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貞宗を開祖とする信濃守護小笠原家は室町時代中期に3家に分裂。現在の松本を根拠地とする府中小笠原氏。そして貞宗所縁の松尾を本拠とする松尾小笠原氏とここ鈴岡小笠原氏です。当初は府中家に対して、松尾と鈴岡の2家は連合して対抗していました。一時は鈴岡小笠原氏の当主である小笠原政秀が3家を統一する働きをしますが、やがて再分裂。やがて一時は手を取り合っていた鈴岡と松尾も仲たがいの末に遂に不倶戴天の敵となります。城が隣り合うご近所が宿敵となる。内紛の虚しさを実感するには十分です。やがて松尾小笠原氏によって鈴岡城は落城。

 

さて、府中小笠原氏は武田に抵抗し、他国に追われながらもやがて徳川譜代大名として存続。一方の松尾小笠原氏は武田に服属し、その後こちらも徳川譜代大名として存続して、生き残りましたが、鈴岡小笠原氏だけはそれとは対照的に歴史の彼方に消えていきます。松尾によって城を失った鈴岡小笠原氏はその後は京都へ向かい、三好氏に仕えます。やがて三好が京を追われると、最後の当主である小笠原信定はそれに従い、足利将軍義昭の滞在する本圀寺襲撃に参加しましたが、明智光秀らに撃退され、桂川の合戦で戦死し、ここに鈴岡小笠原氏は絶えたのでした。

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かつて南北朝のラスボス足利尊氏によって引き立てられた小笠原貞宗の末裔が最後は尊氏の末裔に弓を引き、滅ぼされる。これほど歴史の皮肉に感じたことはありません。

 

〇アクセス


JR飯田線毛賀駅から徒歩25分

 

「鈴岡城に狼煙が一本…」