次週、ジャンプで逃げ若重大発表!!

なんだろうなぁ…何だろうなぁ…こんな時期にわざわざジャンプで重大発表と告知するくらいだからアニメ化以外考えられないよね?実現してくれたら、全力でお布施しますから!時行くんと南北朝のラスボスを全力で応援しますから!

さていよいよ遂に南北朝時代を舞台にしたアニメ作品が作られるという歴史的瞬間を目撃するのに準備している今日この頃。明日深夜のジャンプ配信を心待ちにしています。今回は主人公陣営は最後だけ、ガッツリラスボスの腹黒い優秀な弟である足利直義と彼が選抜した廂番衆の肖像が描かれます。こういう場面でも歴史情報満載で出てくるから溜まらん!それにしてもここまで直義にもクローズアップされるとは完全に予想外でした。今回も歴史解説も交えながら、ご紹介していきたいと思います。それでは本編感想参ります。

 

〇奇人変人の関東廂番衆たち

北条家の嫡子を旗頭にした反乱軍が関東乱入!遂に直義が抱える関東廂番の武将たちに出陣命令が出されます。誰もが直義に心酔し、誰もがその指導者としての資質を疑わず、彼ら次代のホープとなるべく育成された幹部候補生達は意気揚々と出陣していきます。そしてその出陣を見送る黄色い歓声。廂番衆の一人があれやこれやとグッズ販売に精を出していました。

 

⑧関東廂番衆四番組・一色頼行

「必勝祈願の札一枚2万5千円(五百文)だ!押しの廂番衆の札を買って応援しよう!全員分揃えると限定手ぬぐいがもらえるぞ!」

金はあるところにはあるし、人は絶対手に入れたいと思うものには高額の金でも出して買いたくなるもの。そして、戦に臨むにあたって何よりも戦費調達は大事。金はいくらでも確保しておくに越したことはありません。直義としては、これを機に更に廂番衆グッズ販売で更に売り出そうとしていたと思われます。

 さて今回登場した一色頼行。こちらも史実に実在した廂番衆の武将で、こちらも足利一門の一色家の出身。当主公深の息子で、弟に範氏がいましたが、弟の方が生母が今川氏の女性ということもあり、こちらが嫡男となったために、庶兄という立場。さて、『太平記』で南北朝のラスボスこと足利尊氏(当時は高氏)が鎌倉幕府を裏切る歴史に残る裏切りの瞬間である丹波市野村八幡での後醍醐帝の倒幕勢力への鞍替えを宣言した時、高氏・直義兄弟の矢を奉納した人物として「一色右馬介」なる人物が登場します『難太平記』より。この一色右馬介が実は頼行のことではないかと言われていました。もっとも確証が無いために、「一色右馬介」創作作品では尊氏側近という立場の便利なオリキャラとしてのポジションを与えられており、大河『太平記』では更に設定を膨らまし、

(画像左)北条に滅ぼされた一族の生まれ、尊氏の少年時代の守役。更には「忍び」属性を追加されたことで、原典の『私本太平記』以上に全編にわたり、活躍するキャラとなっていました。


一色右馬介…貴方は頼行?それともNO?

さて史実の頼行はその後の尊氏・直義兄弟に常に同行し、その後九州での再起でも活躍。尊氏は再び西上するにあたり、範氏を九州の留守を守る九州探題に任命。頼行もその補佐をしていたと見られます。しかし、この兄弟はその後、肥後の菊池氏との戦いで兄弟そろって戦死。結局彼自身は大きく歴史に名を遺すことはありませんでした。それにしてもこの漫画では遊びとして、

結婚が発表された翌日にファンの牛車ツアーに参加するというなかなかの鬼畜属性が付与されてしまって笑ってしまった。いや、まあそりゃ結婚発表後にファンツアーなんてマジ誰も得をしない地獄絵図だよな…私でも遠慮願いたい。

そんなこんなで、それぞれの戦に臨む廂番衆の若侍たちの準備模様が描かれます。いつも通り、女を侍らしての酒池肉林を楽しむ岩松経家。コイツはあれだな、中国南北朝時代で言えば、梁の曹景宗と一緒だな。どんな時でも女を侍らせているタイプ。それでいて戦では強いから誰も文句を言えない。そしてそんな岩松のフォロー役を買って出るこちらはまだ正式な廂番衆ではないので、見習い扱いの少年、斯波孫二郎。そして上杉憲顕。いずれも自軍の勝利を信じて疑わず、士気は増すばかり。彼らにとっても久しぶりの大戦。さてそんなややまともな面々と一線を画するぐらいの変人奇人たちの肖像が描かれます。

吉良満義「草美味いでござるwwwこれは良い草www」 


まさかの草を喜んで食う人間がいるとは!いやまあこれは恐らく史実で後に南北朝のラスボスから名指しで罵倒されるという栄誉(?)を賜ったゲリラ戦の名手という経歴から来たネタだとは思いますが、それにしても流石に孫二郎も岩松もドン引き。まあ埼玉(武蔵)の草に比べると鎌倉の草は上質で良いらしい(んなわけないない)そんなこんなで再び北条軍の監視に向かうための「腹ごしらえ」をする吉良満義。兵糧を必要とせずに自活できるというのは戦場においてはこれ以上ない強みです。ただ…その明らかに血走った眼はどう見ても「狂気」以外の何者でもありませんが…

今川範満「うま、だいすき」

初回登場時から誰もが突っ込みたいのだけど突っ込めないジレンマを抱えさせた馬面の仮面を被った謎の男、今川範満。あの上杉憲顕ですら、ちょっとドン引きの模様。孫二郎が「馬好きなんて武士の鑑」とフォローします。そんだけ馬を大事に思っている…


大量に馬の肉を貪り食う今川範満。

「馬大好き」と言いながら、その馬の肉を貪り食う姿は明らかな異常性を際立たせるものでしかありませんでした。ちなみに、人類が文明の発達と共に長らく使役してきた動物である馬を喰うことに関しては、国・地域によって様々。例えば、馬が貴重な家畜とされた地域ではその馬を喰うことには物凄い抵抗感がある国もあります。その一方で、馬肉を食用として一般化している日本のような国もある。最も戦場において、一番手ごろな手頃な食糧源となっていたのは馬であるのも悲しい現実。特に食糧供給の途絶えた軍隊にいる馬は悲惨で、食うモノがなくなってしまった兵士たちにとっては腹を満たすために、やむを得なく腹に収めたという記録がゴロゴロ残っています。まあいずれにせよ範満の食いっぷりはどう見ても狂気の領域。そして誰も触れようとしないその孤高ぶりが際立ちました。

 

そして一色頼行と共に新たに登場した新キャラが

⑨関東廂番衆御番組・石塔範家

彼については…NO DATA

げぇ!私がよく南北朝時代の人物情報を知るために活用している参考文献にも遂に登場しないキャラが登場しちゃったよ!いや、多分後に直義側近として観応の擾乱にも大きく関わる石塔頼房の親類だとは思うんだけどね!それにしてもこのキャラ、殆ど情報もないこともあってか、心なしか松井センセイ、更に好き放題がすぎやしませんか。何しろ


女神と称して、自らの一次創作した美少女キャラを自らの鎧に描き、しかもそれを堂々と真正面からでも掲げる…

たしかに強者でしかない。

思わず孫二郎らと同じ感慨を抱いてしまったよ。異次元の強さといってもいい。それにしてもそんな石塔の「強さ」にも動じず、まじめに論評する「常識人」を自称する渋川義季。彼もまたその感性は常人とはかけ離れた持ち主であるようです。

 

〇足利と結びついた渋川家の肖像

出陣する廂番衆を代表して、直義の挨拶に向かう渋川義季。まだ若い彼が一番組筆頭につき、こうして廂番衆たちの代表として主君である直義に挨拶するのには理由がありました。


彼の姉は直義に嫁いでおり、直義にとって義季は義弟でもある。更に彼の娘である幸子、彼女は後に尊氏の嫡子である義詮に嫁いでいます。それにしてもまだ幼児で素顔が登場してない義詮よりも先に未来の妻となる幼女が登場するというのもなかなか凄い。いずれにせよ、渋川義季はまさに足利家を支える一門衆でも格別の立場にありました。実際、直義はこの渋川の姉を大事にし、決して側室を儲けようとはしませんでした。この時代には子が出来なかったら、側室を儲けるのが当たり前の時代にあって、直義は彼女との関係を重んじた。まさに謹厳実直を絵に描いたような直義の面目躍如。そんな長らく子ができなかった直義夫妻でしたが、やがて思いもよらず男子を授かることになります。夫婦共に40を過ぎる現代でも高齢出産といってもいいし、当時としては殆どゼロに等しい状況授かった男児に夫婦の喜びはひとしおだったでしょう。しかし、皮肉な事に如意丸と名付けられた男の子の存在は直義夫婦に暗い影を落とします。それまで室町幕府において猿樂三昧で政務を放棄していた兄の南北朝のラスボスに代わり全権を掌握していた立場の直義に実子が誕生した…それは後継が尊氏の嫡子と認められていた義詮への継承について兄弟間で亀裂をもたらした可能性が指摘されています。直義に実子がいないからこそ、保たれていた尊氏派と直義派の均衡が破れてしまった…もちろん今となっては確証がありませんが、実際にまさに如意丸の誕生時期はまさに室町幕府内における両派の確執が深まった時期と符合します。そうして、彼女にとってはその後の展開は過酷でした。やがて夫も息子も失い、一人残された立場に…尊氏の妻・赤橋登子はその実家が夫によって滅ぼされたこと、にもかかわらず彼女の血脈は息子を通じて後世まで遺されたこととは余りにも対照的で、しかも知名度ではあまりにも落差がありすぎました。(実際に大河『太平記』でも彼女の存在は余りにも一瞬だけの登場に終わっており、名前すら与えられなかった)

 そして渋川の娘である幸子。彼女はまさに室町幕府版北条政子ともいうべき存在。彼女が義詮に嫁いだ経緯についてはやはり直義の意向が強く働いたことは確実に見られています。その後、彼女は千寿王という男子を授かりますが、この子は間もなく夭折。その後、義詮との間で子が生まれず、その為に側室との間に別の男子を儲けます。この子こそが後の第三代将軍である足利義満であり、義詮が亡くなり、まだ幼い義満が家督を継ぐとその後見として政界に大きな影響力を発揮しました。義満も実母よりも「公式の」母である彼女を孝養を尽くしたと言われています。自らの血脈を残すことはできなかったが、足利の天下を次代に継承する橋渡しをした…未来の展開を知るとこの時の父である義季の言葉とそれを無邪気に聞く幸子の姿にはなんかこみ上げるものがありました。そうこうして家族水入らずで話をしていても、彼女たちにはこの後には過酷な展開が待っています。戦乱に翻弄され、大事な人たちは失われ…時行くんもまた時代に翻弄されて、家族を失いましたが、この後にはこうして敵方に属する彼女たちもまた同じく過酷な運命が待っている。

 そして改めて2人だけになって出陣の挨拶をする義兄弟の直義と義季。流石に廂番衆筆頭にして、直義からの信任厚き義季は状況を正確に見抜いていました。北条勢の動きを正しく洞察した直義でしたが、それでも乱の対応に後手後手に回っているのは否めない事実。

渋川義季「あと三日早く北条の跡継ぎが信濃にいると判っていれば…こうなる前に信濃を責めて殺せたのですが


悲報:北条家の忘れ形見、「全裸逃亡変態稚児」のイメージで敵方に知れ渡ってしまう

それが足利方にも伝わった時行くんのイメージなの?そんな変質者で広まってしまう北条家の侍王子(笑)いずれにせよ頼重さんによる事前情報の秘匿はそれだけであり、この反乱が決して追い詰められた中での暴発としての決起ではなく、用意周到されたものであり、足利方は全てが後手後手に回っているのは否めない。正直に現在の状況は良くないと認める腹黒い弟ですが、それでも彼には自らが抜擢してきた関東廂番には大きな「武器」があると言います。それは


足利直義「足利家への強い忠誠が…様々な狂気の形で諸君の中に宿っている」

彼らの家柄や能力だけでなく、その「狂気」こそが力を何倍にも増幅させ、大きな力になると直義は宣言するのでした。これは後に明らかになるのですが、まさに直義は彼らの「狂気」を覚醒させることによって、彼らをより強力な武将に育て上げていました。その辺は流石にあの南北朝のラスボスの弟と言ったところでしょうか。勿論南北朝のラスボスが天然で人ならざる異能の力で人を狂わせて言ったのに対して、直義のそれはまさに人間であるが故の計算に基づいた「狂気」。そして腹黒い弟は義弟である義季に全幅の信頼を置いて、「足利の世のため」そして「姉や娘のため」そして義兄である自分のために時行くんの討伐を託するのでした。これも未来が分かっていると辛い所。誰かが勝者になるということは誰かが敗者となって犠牲になる。そして犠牲になった者の家族にとっては辛い展開が待っている。短い登場でしたが、渋川義季の姉と娘という女性たちは直義が彼に向けていた信頼を形にするために大きな役割を果たしたといえるでしょう。

 

なお、直義の見通しには一つ大きな落とし穴がありました。それは彼らの忠誠の対象は「足利」家そのものではなく「足利直義」個人に向けられたものである、ということです。

彼らにとって直義こそが忠誠の対象である、本来の総大将ともいうべき南北朝のラスボスに向けられたものではない。勿論ラスボスと腹黒い弟のコンビが上手く機能している時には何の問題もなかったのですが、一たび足利が二派に分かれてしまうと泥沼の内戦へと発展していきます。彼らにすれば、敬愛する主の命を奪った(少なくとも尊氏が直義の政治家としての生命を葬り去ったのは動かしようがない)尊氏は許すことのできない仇敵と化し、大きな禍根を残すことになります。この時点で生き残っていた廂番衆の上杉や吉良はそれまでの「敵」であった南朝方の一員として、南北朝のラスボスを苦しめ、その死まで足利家に帰参することはありませんでした。

まあ全部南北朝のラスボスが自ら招き寄せた事だから仕方ないよね。

いずれにせよ、こうして短い場面でも敵方である腹黒い弟と彼の郎党「関東廂番」についても強烈なキャラ性を際出せてくれます。

 

〇時行くん、関東入り

さてその頃、信濃の隣国であり、関東への出入り口にあたる上野では関東への進撃を開始した時行くんらを待ち構える足利方の第一陣が待ち構えていました。率いるのは先に登場した岩松経家の兄である、岩松四郎(ちなみコイツもNO DATA)。四郎と仮名だけなのを見ても多分ここだけの存在。弟が鎌倉で幅を利かせているのが気に食わず、弟に取って代わろうという目論む岩松四郎。岩松経家は猫耳の帽子をかぶっていましたが、彼の場合は猫を抱いています。もっともちっとも猫の方は迷惑そう。ちなみにこれは「岩松家」が後に猫絵師として有名になる史実を踏まえたネタ。

 情報に基づいて予測された敵軍に倍する軍勢を準備して待ち構えた彼でしたが、そこで待っていたのは関東各地で不満を持っていた武士たちを参集させた泰家叔父さんの手紙の効果でした。その勢いは岩松を呆然とさせるレベルで、北条を凄まじい大軍に成長させます。焦って、自らが抱いていた猫を「猫質」にしますが…結局逃若党のコンビプレイの前に猫は時行くんの下に。あっさり一蹴され、無事時行くんらは関東への侵入を果たしたのでした。ここであの有名なフレーズが登場するのは心憎い演出です。