ここのところの『逃げ若』の掲載順位がいよいよかなり心配するような立ち位置になってまいりました…かつて松井センセイのデビュー作『ネウロ』もまたデビュー当初はまた掲載順位が下の方であり、打ち切りも視野が入っていたのですが、

これで一気に話題沸騰となって、その後アニメ化されて、一躍松井センセイを有名にした故事があります。

果たして何とか持ち直すトリプルCの秘策が無いか…それにしても今回の話は思いっきり『ネウロ』の作風をかなり濃くなる回でした。ラスボス尊氏が登場すると凄く次が気になる!!すいません、それでは今回は2話感想で参ります。

 

〇CVみにゃみ希望

前回、佐々木道誉の娘として登場した魅摩、この娘どことなく『賭ケグルイ』の早乙女芽亜里ちゃんに似ているところがあります。

ゲスな煽り力、手に入れたイカサマ力で相手を意のままにしようとして実は意外と常識人な所もそして実は意外と奥手で純粋なところもね。ちなみに私の場合はギャンブル漫画では『賭ケグルイ』をおススメ!!はやみん、みゆきちといった大物たちが正真正銘のギャンブル狂人として好演し、億単位の金が動き、その様に狂奔するサイコパス達の物語。美女たちの凄まじい顔芸も見もの!あ、失礼話が逸れました。みにゃみは『暗殺教室』で岡野ひなた演じているし、意外と似合うんじゃないかな。

 持ち掛けた勝負は『柳』という双六ゲームで、二個の賽の目でコマを進めるというシンプルなもの。ゴールまでの丁度良い目を出さないと引き返すというものですが、よりによって対戦する雫ちゃんも魅摩も神力という超絶イカサマを駆使しているので、常人にはついていけない高度な戦いとなっています。賽の目が6,5だけってそれはもう天然イカサマとしか言いようがないぞ。

魅摩「へえ…あんたも使えるんだ。たまにいるんだよね、帝すら如意にできない賽の目の運を…少し上乗せできる奴」

お、有名な「白河院」の言葉が出てきたか!

権勢をほしいままにした白河法皇ですらこの世で思うままにできないと嘆いた三つの存在、賀茂川の氾濫と賽の目、そして比叡山の僧兵、その一つを『神力』を手に入れた2人の少女たちが力を駆使していく戦いであります。意外にもこの魅摩は神力の発揮において、元々巫女である雫ちゃんと肩を並べるほどの使い手。『神力』…それは逃げ若本編においても「あったら便利だけど、あやふやでどうにもうまくいかない力」という定義。実戦になるとあまり事態を大きく動かす要因とならないのですが、運の僅かな差が大きな影響を与えるギャンブルの場では絶大な力を発揮します。

 更に彼女の観察力は絶品。背後の少年(もちろん時行くんの事)との『只ならぬ関係』を察し、揺さぶりをかけていきます。しかし雫ちゃんの返答は

うん、まあこの時点で分かっているよ。この言葉の真意は(笑)

心理的な揺さぶりをかけられながらの勝負となってきましたが、しかしギャンブルの場での神力を駆使慣れている魅摩の方がだんだん優位となってきます。彼女が力を手に入れたのは戦乱によって荒廃した時代だからこそ。荒廃した寺院によって本来それを守護していた神仏の力は彷徨う存在となってしまっていた。彼女はそんな神仏の力の受け入れ手となることで今の立場となった。

でもさぁ、確かキミの父親も立派な寺院を焼き討ちにした張本人の一人だよね(笑)

かなりのマッチポンプ感がある(笑)

まあ妙法院焼き討ち事件は時系列上かなり後なんでセーフっちゃあセーフなんだけど。そしてやはり彼女もまた尊氏党の一員であることが明らかになりました。一癖も二癖もある親父さんと違って純粋な尊氏LOVEなようです。これは逃若党とは敵対する立場となるようです。

 

〇R18の雫ちゃん劇場

かくしていよいよ魅摩があと一歩でゴールとなりかけたことで雫ちゃんは不利を察し、勝負に出ます。それは

「兄さま」を膝に寝かすこと

わけが分からず目が点になる時行くんですが、亜也子は遠慮なく寝かせてしまいます。そこで『兄様』がいかに「主君」として素晴らしいかを、だからこそ「郎党」として尽くすのかを力説し、そして

いきなり吹き出してしまった!!

もちろん雫ちゃんの「真意」は十分すぎるほど分かり切っていたことでしたが、まあそれにしても凄い濃密なシーンにしてしまったよ!魅摩はともかく「その種」の経験豊富な周りの遊女たちでさえ目が釘付けとなっているのを見るとどんな10歳の少女なんですか!モザイクかかっているし…

それにしても好きな異性を眠らせて、その隙に相手に○○〇を行う

とかこれ逆だとマジでシャレにならん。それにしても同じく時行くんに対して「異性としての想い」を抱いている亜也子は果たしてどういう思いでみているのかが気になるところです。かくしてそれまでの勝負の流れが変わります。濃密なキスと共に冷静に双六勝負を行っていく雫ちゃんに対して魅摩はすっかり心乱されていました。更に冷静に観察しているのが

狐次郎「おっそろしい、やり手だぜ。逃若党の執事様は」

「兄様への愛」「神力」「それらを見せつけることで物理的なイカサマまで駆使する」

雫ちゃん、恐ろしい娘…!!

かくして見事な逆転勝利で玄蕃を取り戻した雫ちゃん。干からびた人形のように亜也子に手づかみされている玄蕃ですが、実際には全裸で怪力女に振り回されていると思うと笑えてきます。一方、自分が意識失っている間に勝負が決まって訳の分からない状態の時行くん、雫ちゃんからは

時行くん「何か気に障る事言ったかな?相変わらず雫は浮世離れしててよくわからない」

いや君が気づいていない所ではバレバレだから

頼重さんの「サリサリサリ」よりも濃密な愛情表現をずっとしているからね。「知らぬが仏」とはよくいったものです。と、ここまま引き下がれるか!とばかりに険悪な空気が流れますが…

婆娑羅大名

〇ハーレム時行くん

雫ちゃんとのギャンブルに敗北して、刀をちらつかせる魅摩。

時行くん「・・・よせ魅摩殿。君と戦うつもりはない」

本当にこの時代の武士らしくない時行くん。一方の郎党たちの方はこういう事態を十分に想定済みでした。きっちり勝負中も相手の力量を観察して、十分察していたのでした。狐次郎曰く「妙な強運を除けばただの素人」とのことで、やはり戦闘能力という点では逃若党のメンバーとは違うらしいので、これは味方キャラにはならないのかな?

 

そして実際には時行くんへのプレゼント用でした。あ、この娘意外と根は素直で良い娘だな。自らに打ち勝った相手に対しては敬意を払い、気前よくプレゼントを行うとは…これはやはりあのエピソードが典拠ですね

京を撤退する時に自分の屋敷を接収する相手に饗応の準備までした婆娑羅大名の娘は違います

ちなみにこの時に実際に屋敷に入ったのは楠木正儀でした。判官殿のこの姿勢に感銘を受けた正儀も自らが京から撤退する際は持ち主に対して返礼の太刀まで用意し、これが縁で両者は南北朝の和平交渉窓口として交流していくのでした。

判官殿…ええ話やん。

こうしてすっかり「良い雰囲気になった」ところに加えられたのが郎党女性陣からの暴力。何気に雫ちゃんと亜也子の息の合ったサンドバッグ攻撃でボコボコにされてしまう魅摩が可哀そうになりました。「二人きり」というのがどうやら彼女らの逆鱗に触れたようで

この絵、完全に『ネウロ』の弥子じゃないですか(笑)

結局、悪い虫がつかないよう全員案内することになった魅摩。一応、名目は「諏訪大社の衛士の子」として京周辺に寄進の願いに来たということで正体は隠しています。狐次郎としては冷静に相手を監視して、危なくなったらすぐ離脱の準備を図る模様。いや、本当に狐次郎は護衛としても優秀ですよ。ここで当時の風潮「婆娑羅」当時の武士たちが今までにない過激な服装で奇抜なふるまいをして、それがいつしか流行となっていた時代の申し子。漫画キャラっぽい魅摩もまあ服装はといえば、その流行に乗った「ありえなくはない」と言ったところでしょうか。

雫ちゃん「露出狂」

魅摩「うるせえ!当たりキツイぞ、田舎巫女!」

相変わら容赦ない毒舌を浴びせる雫ちゃん。どうやらこの2人は時行くんをめぐる激しいバトルになりそうな予感。

現代的ファッションショーのような演出がジワジワきます。でもこの辺を現代的なイメージに変換させることで絵で解説するテクニックは本当にうまい!

そしてそのブームの先導者となったのが彼女の父親なのでした。この少女を通して、それまで鎌倉幕府の忘れ形見は果たしてどう変化していくのか楽しみです。

 

〇南北朝ビッグネームがまた一人

三十三間堂にも案内され、京観光ツアーで圧倒される逃若党。三十三間堂といえば、大河ドラマ『平清盛』を思い出してしまうなぁ。もちろん仏像たちの美しさに魅かれるのですが、魅摩が見せたかった本命は境内の矢。120メートル端の軒下に矢が刺さっているという光景。それを成したのがかなりの強弓の名手であることを示していました。

 

北畠顕家

麻呂国司の所でも登場したこの南北朝時代だけに見られた自ら甲冑に身を纏い、剣を持って戦う公家武将の代表です。それこそ付け焼刃の麻呂国司とは比べ物にならないまさに最強の存在。まだ顔が明らかにされていませんが、これはやはり美ショタに並々ならぬ気合を持つ松井センセイのこと。きっと凄まじい危険度マックスの美ショタが誕生することを期待!公家も武士と張り合う時代と言われると麻呂国司を見てきた逃若党も納得せざるを得ない。ここで名前の出た北畠顕家はいずれ時行くんと行動を共にし、

共通のラスボスと戦うことになります

様々な南北朝時代の武将たちの名前を知っていく時行くん。果たして『楠木殿』との邂逅で色々と教えてもらって欲しい。すっかり京観光ツアーで大張り切りのガイド。すっかり打ち解けムードでしたが、そこへ酔っ払いの侍とぶつかって因縁吹っ掛けられることになります。どうやら恩賞にありつけなかった不平派の武士でしたが、最初はおちゃらけた態度の魅摩はそこから先は辛らつなこと。

ついでに「盆暗」呼ばわりされた新田義貞がちょっと可哀そう

実際には新田義貞は「足利家の分家筋」という立場だったのですが、皮肉なことに鎌倉攻略という超ド級の殊勲を立ててしまったために、足利との間に微妙な空気が流れていました。結果的に後醍醐帝は

お気に入りの寵臣を勲功第一

というお得意の「お気に入りファースト」方針を取ったことで義貞は一歩引かされることになったというのが正直な所。もちろん流石にそれではマズイと判断した帝は上洛した義貞に十分な厚遇を与えたのですが、いずれにせよこの時期の義貞は余りに目立った活動をしておらず、それが結果的に足利家郎党からバカにされているという今回の描写につながるのではないかと。注目すべきは

普段は温厚なあの時行くんが一瞬鋭い目つきになった!

やはり他ならぬ一族を滅ぼした張本人は裏切り者の尊氏と並んで、直接的に滅亡に追い込んだ義貞に対してもそう認識しているのは明らかでしょう。実際には北条残党は彼ら二人を名指しで討伐対象に指定し、両名暗殺計画まで立てられたほどでした。後に義貞の息子たちと時行くんは

これまた共通のラスボスと戦うことになります

のでその時の心理的葛藤がこの後の時行くんの物語に重大な要素になるのではないかと思われます。

 

売られた喧嘩は買わんばかりの武士の価値観に基づいて行動していた魅摩でしたが、騒ぎになる前に事を穏便にしようという時行くんらの計らいで双方無事血が流れずに済みました。それにしても三人の首も取った歴戦の武士をあっさり無力化した時行くんと逃若党パネェって!!

ここまでの一連の戦いの経験は彼ら少年少女を確実に成長させているようです。

 

天然の女たらしの本性を発揮する侍王子。亜也子も言うように「素直」って凶器だね。

父上に紹介したいとのことですが、うーん、これは判官殿どう出るかな…

 

〇微笑みのラスボス

一度は後醍醐帝から「喝」を入れられ、気概をもって信濃の大乱を引き起こした麻呂国司でしたが、結局いいところなく貞宗らにいいように利用されて都に逃げ帰る羽目になります。一度は「本気スイッチ」入りましたが、見事に惨敗し、付け焼刃にすぎないやる気充分な気概も雲散霧消(あとついでに私財も使い果たしたようです)、すっかり元の惰弱な無能公家に逆戻りしてしまうことになってしまいました。しかし、今度は帝に謁見すら許されず、門前払いされる羽目に。しかも辞職願さえ受理されず、「信濃戻り」を厳命される有様でいよいよブラック帝の本性明らかになってきています。その麻呂国司に助け舟を出したのが

天使のイメージで微笑むラスボス尊氏キター!!


前回は美少女巫女を膝枕にする美少年という絵的にも美味しすぎる場面を用意したと思えば

今回は英雄を膝枕にする麻呂国司という誰得だよ!という凄い絵図を用意してきましたよ!

しかも今回はモザイク無しときたもんでどんだけ性癖広すぎるんだ、松井センセイ!!

いやむしろ尊氏膝枕とはむしろ歴史クラスタからは羨ましい?

自らの悩みを赤裸々に打ち明け、尊氏に泣きじゃくる麻呂国司・・・

魅摩の父親キター!!

さすがに僧体となっており、前半はいかにも僧侶らしい台詞となっていましたが、後半はまさに判官殿らしいドス黒さ満載。注目すべきはここで判官殿全く言葉を交わさずに、アイコンタクトで尊氏と意思疎通しているんですよ!誰よりも人ならざる者となりつつある尊氏の本性を知っているのは敵視していて今は鎌倉に幽閉中の護良親王、足利家郎党では判官殿だけです。直義も師直ももちろん尊氏が人ならざる者と化しているのを察知していますが、その本性と心通じ合わせているわけではない。

やはり尊氏にとっては一番の理解者は愛する弟の直義でなければ、腹心の師直でもない悪友の判官殿であるのは『太平記』だけでなく不動のようです!

まさに天性の人たらし

『梅松論』という足利サイドの史料で語られる夢窓疎石が尊氏を評して述べた「人柄」通り

「第一に、心が強く、合戦中に命を捨てるような場面がたびたびありながらも、笑みを浮かべて恐怖の色をみせない」
「第二に、天性の慈悲の心をもち、人を憎むということがない。敵を許すことも多く、我が子に対するようである」
「第三に、心が広く物惜しみをしない。金銀も土石とひとしく見なし、武具や馬などを人々に与えるときには、相手の身分や財力に関係なく手に取るままに与えてしまう。八朔(八月一日)には人々の贈り物が数知れずあるけれども、みな人に与えてしまい夕方になると何も残っていなかったということだ」

笑顔で人々の心を掴み取る天性のカリスマ!!すっかり麻呂国司も癒されたようにブラックな後醍醐帝よりも尊氏の方に心を許し、目を閉じて全てを尊氏に委ね…そして

尊氏の口移しで「神力」を注入された麻呂国司は変容を開始します。

一瞬で「ネウロ」の世界観へと読者を引きずり込んだラスボス尊氏

呪術めいたカリスマで人を服従させている後醍醐帝もこの男のモンスターじみた笑顔と「力」の前ではまだ人間的に見えてしまうくらいその力はもう人間離れしてしまったようです。これが尊氏大好きな友人の

宇宙人みたいな征夷大将軍

というと評と奇しくも一致させてしまった松井センセイの力量恐るべし。ここで尊氏に「支配」された麻呂国司がいよいよ凶悪化し、いよいよ信濃国での「中先代の乱」勃発待ったなし!

頼むから続いてくれー!!