先日、渋谷まで行ったときにちょうど『逃げ上手の若君』のグッズが期間限定販売されていると聞き、いてもたってもいられず訪問することにしました。最初「渋谷109」と聞いて、渋谷の象徴的あの建物を思ったのですが、全く違う建物と聞いてようやく発見することができました。

ちゃんと分かるようにマップを明示してくれ…

一人三点までのお買い物

私が一番欲しかった時行くん&頼重さん2ショットタペストリーは完売だったぜ…orz

ついつい年甲斐もなく衝動買いをしてしまいました。

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それにしてもまさか足利尊氏のキャラグッズが販売される日が来ようとはまさに夢のような時代です。ぜひともこのままアニメ化されてもっとグッズが広範に販売される日が願ってやみません。さて最近はジャンプに登場する掲載順位が怖くて怖くてい仕方ない日が続きますが、気を取り直して応援していきましょう。それでは本編感想参ります。

 

〇無法者たちの関所

関所の武士「ああんもう見るからに北条っぽい~

キミ連行と拷問っ!」

のっけから根拠もないフィーリングで通行する者を容赦なく決めつけ、舌なめずりしながら連行と拷問のフルコースをお見舞いする関所の武士たち。場所は明示されていませんが、近江の手前であること&一か所しかない隘路であることなどから推測するに

美濃国不破関、すなわち関ヶ原近辺であるのではないでしょうか

この辺りは東海道本線、東海道新幹線、東名高速道路などが交通の大動脈が集束しているまさに隘路のような場所。そして美濃国管轄であるからには

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この人物が浮かんでしまいました。流石は

「何に院と云ふか、犬と云か、犬ならば射て落さん。」(あぁ?イン(院)がなんだって?イヌの間違いだろ!犬っつんならやっちまえ!)

といった御仁の部下は主君の薫陶行き届いているようです(笑)仏事を終えて帰京した光厳上皇(院)遊び帰りの頼遠の一団と鉢合わせした。院の従者は、頼遠に対して馬を下りて下座するように命じるに。ところが、頼遠は「からからと打ち笑」いながら、連れに命じて、牛車をド突き倒すは、馬を走らせるは、挙げ句の果てに矢を射掛け、院の一行を追い散らかしてしまった『太平記』の有名な一節です。確かに戦争で活躍した名将といえば、そうなんですが活動事績は少なく、それでも必ずこの逸話が有名でパッと出てくるのですから、まさに「悪名は無名に勝る」とはよく言ったものです。ただ単なるヒャッハーな乱暴者のようにイメージが固定観念化されてしまっていますが、その一方で『新千載集』『新拾遺集』「新後拾遺集」に一首ずつ載せられた文人の側面も持ち合わせていました。無法で蛮人なイメージをもたれがちだが、実は結構文治にも秀でたという点では高師直ともよく似たもの同士であるといえましょう。

※正確にはこの時期の美濃守護は誰であったかはまだ定かではないようです、すみません。

いずれにせよこの様子を覗いていたわれらが主人公の時行くんと逃若党、泰家叔父にとっては京を目指すうえで一番の難所。何しろ相手はフィーリングで容赦なく駆り立てる無法者。そのうえ、こちらにはおでこに「北条」とハッキリ書いてある叔父上がいる。ああ、だからなんでこの人ほど工作活動に向いていない人もいないのにねえ。そこで泰家叔父は「秘策」があるといって半日ほど準備のために出ていきます。

一方の逃若党の子供たちは関所手前の宿場町で滞留することに。主である時行くんの意向でここではムダ金出費は控えることに

時行くん「京は何かと金がかかるらしいから!」

亜也子「ねー見た事無い服やご飯が何でもあるんだって!」

雫ちゃん「滞在中ずっと「どすえ」って連呼したい」

とすっかり京都観光モードで「お小遣い節約作戦」で臨もうという逃若党一行。まあ確かにそれまで鎌倉や信濃といった素朴な価値観の土地で育った者からすれば、まさに京は文化も娯楽も最先端の町。それにしてもこの一行の資金までちゃんと用意しておいた頼重さん、本当に金銭面でいうと色々と出費も多かったでしょう。それだけの入れ込みようがわかるというものです。金銭を預かる雫ちゃんにとっても死活問題であるようです・・・

いや誰だよ、お前。見せびらかすように雫ちゃんが持っている金銭とは比べ物にならない大金をだす風間玄蕃

なんでも前回の足利直属の「忍び」天狗衆の件での功績を言い立てて頼重さんから大金を報奨としてせしめた模様。うーん、コイツは。まあ確かに実際に玄蕃の活躍なかったら本当にそうでしたからね。とその玄蕃に擦り寄る人間が一人…

吹雪「・・・で相談なんだが、お金貸してくれないか。自分の金はとうに尽きてしまったんだ」

金銭と食料面で一番逃若党を圧迫していた吹雪でした。今回の道中でも「つまらない買い食い」しまくるわ、持参食糧も食いつくすわでもちろん郎党たちもあきれ顔。肝心の主君ですら

時行くん「・・・まあ自業自得だ」

と見放される有様なのでした。

 

〇殺す覚悟の武器

そんなこんなで一人を除いて腹ごしらえを終えた逃若党。一人豪遊して他の郎党からの怒りを買っている玄蕃。まあ先のことになりますが、コイツ頼重さんからせしめた大金を身ぐるみ剝がされることになるのでまあこんなデカい顔していられるのも今のうち。さすがに飢えている吹雪が可哀そうとなんだかんだで結局は郎党のことが心配な時行くんの計らいで差し入れを持ってあげようとします、。

空腹をまぎらわすために竹藪で鍛錬を行う吹雪

その気迫と武芸は流石に「逃若党最強」なだけあります。

既に並みの武士以上の武芸を習得してきた孤次郎や亜也子も未だ息をのむ強さ。そしてその圧倒的な強さの源が空腹からというからすさまじいものです。その気迫に何かを感じるものがあったのか玄蕃が飯を(そもそもそれ時行くんが差し入れたものなんだが…)差し入れして、アドバイスを求めます。天狗衆と接触したときに言われた「技というより手品」と一蹴され、自分でもその力量差を自覚せざるをえなかなったことに。自分に足りないものはなんであるかを。

吹雪「そうだな、忍びの技は専門外だが敢えて言うならとにかく威力を追求した技を開発すべきかな。でないと君に凄みを感じない」

吹雪の言う「凄み」とは相手に「殺されるかもしれない」という必殺の覚悟。現在の玄蕃の「忍術」は敵を攪乱したりするのにはうってつけだが、それはあくまで相手も適当な戦意の相手だったからこそ通用した「悪戯」の領域。それこそ相手が殺す気で襲い掛かってきたら、「悪戯」程度の技では相手は止まらない。相手に「本気なら殺せるぞ」と思わせるだけの凄みをもつことが伝われば、敵もまた動きを封じることができる。そういうことであると、流石は一行の中で一番の軍略家にして教師の吹雪。ちゃんと人間観察できているし、本当に完璧です。

食料食い尽くすほどの燃費の悪さが無ければね

 

さて一行はここで泰家叔父の指示通りに服などを汚しておくようにしていました。どう考えても本音丸出しの額で「北条」の文字を消せないように思われたのですが…

 

〇天下人だからこそ何でもできる!

いきなり1ページ費やしてドアップで顔面からありとあらゆる液体を出しまくる泰家叔父。その圧倒的な哀れ力で「北条」の文字すら消してしまっています。設定的には「京の公家の西園寺公宗の下男としてやっと雇ってもらえた田舎の貧乏武士が母を亡くした子供たちを連れて、京まで借金こさえて馬と贈り物を用意して上京している」というシチュエーション。とにかく鬱陶しいくらいの哀願と液体駄々洩れ模様で無法者の武士たちもそして時行くんらもドン引き(笑)

関所の武士「え、ええいもういい通れ!哀れすぎてこっちも惨めになってくるわ!」

汚いものを追い払うかのようにあっさりパスしてしまった関所の武士たち。

ちょうどこのシーンを思い出しました。『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』第2話より

中立国のサイド6に事前に潜入していた特殊部隊サイクロプスの隊長シュタイナー・ハーディ。ジオンから輸送されてきたバーニィの操縦する貨物船が書類の不備から税関で怪しまれた時に納期の差し迫った下請け工場長の哀願を見事に演じ切るその力量。その気になれば、相手を一瞬で殺せる特殊部隊の軍人がそんな気迫を全く感じさせない見事な演技で騙し切る、真のプロフェッショナルとはどんな「役」をも演じることができるものなのです。

半日間飯を抜き、ひたすら「哀れな侍」の役を演じきることで北条の文字をも誤魔化した叔父上、

うーん、なかなか言いこという言うじゃん。天下人の一族だからこそ「何でもできる」そのポジティブさは確実に甥である時行くんにも好影響を与えるものです。

史実でもこの叔父は京に潜入するとき田舎侍を装っていたという史実を拾い上げ、時には幕府内の権力闘争に現を抜かし、そしてその幕府が滅べばちゃっかり生き残り、逃げた先々で反乱を扇動する。まさに七転八倒の行動力、それは解説にもある通り、

うーん、本当に外見以外はよく似たもの同士の叔父・甥なのでした。叔父のその飽くなき行動力を学んだ時行くん自身もまた不屈の行動力で行動していくことになります。かくして京への入り口が開けた時行くんと逃若党。いよいよ舞台は南北朝時代の中心

京都編始まり始まり~