『繋がり』というタイトルにある通り、主人公・時行くんと頼重さん、逃若党の郎党たち、そして三大将に諏訪神党の武士たちが一体化していくことになった今回。でも今回最大の目玉はむしろこちらでしょう。
神様を引き継いだ少年・諏訪頼継
以前にも書きましたが、頼重さんには史実においては既に孫までいる年齢に達しているのですが、今回なんとその孫が初登場!あの外見で時行くんより少し下の孫を持つお祖父ちゃんとか…頼重さんが殆ど『DB』の孫悟空と化している状態だよ!しかしそもそも息子である時継でさえ、この作品では空気なのですが…それにしてもこうなると以前に推測されていた雫ちゃん=男の娘=実は頼継ではないかという説もあったのですが、これでこの説は成り立たなくなったことが明らかになりました。それにしてもこうなると雫ちゃんのポジションが謎になるのですね。私が以前に立てた仮説「雫ちゃんが実は現実的な頼重さんの娘としてではない人ならざる存在」の可能性も帯びてきました。だってあんな孫と年齢の変わらない「叔母」なんてちょっとした「サザエさん」状態じゃないですか。まあ確かに現実の歴史にはそういう今日の現実感覚からかけ離れた年齢の変わらない叔父甥とかの関係もあるので一概には言えないのですが…例えば徳川家康は10代にして長男・信康をもうけ、その後も子種を60代まで続けた結果として、孫よりも年下の叔母とかもざらでした。御三家となる当主たちにしても孫の家光とは叔父といっても数歳程度年上で、殆ど兄弟のようなもの。これは確かに競争意識も芽生えます。もっともこうして徳川家を支える一門を儲けていたからこそ、徳川家が血脈を現代まで残していたのも疑いようのない事実。こういうのを見るとやはり直系相続というのは本当に難しいものだということが分かります。それでは本編感想参ります。
〇信濃大乱総決算
あと一歩まで勝利に近づきながら、歴史の修正力ともいえる瘴奸の軍略によってひっくり返された諏訪神党。時行くんら逃若党にとってはビターエンドとなった今回の大乱でしたが、それは決して単なる敗北ではありませんでした。「中」での敗北が決定的となった後、逃若党の少年たち最後の任務は「南」にいる三大将の海野及び祢津に敗北を伝えること。そのまま「中」の戦場に急行した結果、何とか四宮党の救出に成功、人的損害を最小限に抑えることに成功したのでした。敗北が決定的となったことで「北」「南」の常岩、犬甘らも山中に潜伏。一方の捕虜にした筈の麻呂国司はアウトオブ眼中の放置となってしまったのでした。え?折角手に入れた総大将でしたが、結局放置かい!!まあ既に敵味方にしてももはや麻呂国司などはどうでもいい存在ともいえるからでしょう。小笠原貞宗らにしてみれば、反乱軍が始末してしまえばむしろもっけの幸い。目の上のタンコブが消えるし、だからこそ諏訪神党もその腹の底が分かっているからこその放置でしょう。
まあ麻呂国司は最終的に引導を渡されることになるのですが
結果として国司・守護連合軍側は反乱軍の主要人物を誰一人として討伐することができず、逆にこれによって諏訪神党は更に戦意を高めることに。その象徴が保科・四宮党の合体。麻呂国司の戦闘神輿に気を取られたことで相手の策にまんまと乗せられてしまった責任を痛感していた保科弥三郎は僚友とその郎党たちについての収容を行います。1年前の時は死ぬことに自己陶酔していた弥三郎でしたが、一度『生き延び上手』となったことで大きく成長していました。郎党たちは相変わらずメンドクサイでしたが。
保科党「四宮殿がいれば百人力だ!!次こそ奴らをぶち殺しましょう!!」(# ゚Д゚)
四宮「あ、ああ(保科党、温度差あるんだよなー、うちの郎党と)」
お隣さんだけど色々な意味で対照的すぎる。ブちぎれると顔が面白いことになる保科党と草食系の四宮党との対比。そんな対照的な両党でしたが、主将らの話し合いで「先々」の事を見据えて「二党合体」することに。彼らは待っていました。
「諏訪明神が立ち上がる日」を
信濃に住まう諏訪神党の人々にとって諏訪明神様への降臨を待ち望む空気が醸成されていくことになりました。親北条派であったことで建武政権から敵視され、一方的な苛政による負担を押し付けられ、更に後醍醐帝による強圧的な「討伐の綸旨」まで下りたことで諏訪神党にはもう逃げ道は無くなった。皮肉にも後醍醐帝が彼らの逃げ道を塞いでしまったことで逆にその団結を固めてしまう結果となってしまったのでした。
窮鼠猫を嚙む
逃げ場所を失った弱者は遂に死兵と化してしまい、逆に損害を増大させる。敵性分子に対する仮借なき弾圧に走った後醍醐帝の暴政は逆に自らの足元をひっくり返すことになります。こういう経緯を見れば、建武政権が早晩瓦解するのは遅かれ早かれ時間の問題だったでしょう。教えてくれるのは「敵とは交渉しない」「排除あるのみ」という手法は愚劣なる一手であり、最終的には崩壊します。「戦争」は奥の手であり、濫用してはならない。これ古今東西普遍の法則。いかに時代が変わろうと価値観が異なろうとこれは異なることはありません。そして後醍醐帝の建武政権はここ信濃から起こる天下を揺るがす大乱によってひっくり返されることになるのでした。
まさにラスボス尊氏(に潜むオニ)が期待しているがごとく
〇時行くんと頼重さん、2人の絆は更に
逃若党にとってはあと一歩まで勝利に近づきながらの敗北となったことで暗い雰囲気に包まれながらの諏訪への帰還。時行くんにとっては初めての「敗北」であり、心が重いとぼやきますが、案内の巫女からある事実を告げられます。頼重さんが時行くんが留守にしている間には小屋を作らせて誰も入れずにそこで禊を行って、時行くんの無事を祈っていた、と。改めて頼重さんの深い想いを知って、自分と頼重さんが目指す方向が一緒であると、2人一緒で向かうのだと決意を新たにした時行くん。北条の再興とは信濃の民を助けること。そのためにも自分は天下を目指すという目標に向かって突き進みます。しかし残念ながら既にこの時、信濃より外側の世界では人々は新たな支配者を待望するようになってきており…その意味では厳しい。
そして小屋に明るい顔で帰還を報告しに入室した時行くんが目にしたのは
時行くん「頼重が温泉に入っている!!神力で掘り当てた温泉に酒とつまみを持ち込んで入っている!!」
なんと、頼重さんは禊をした後に温泉ライフを満喫していた。
まさに神力の無駄遣い(笑)
まあ分かるよ、私もこの前に諏訪に行ったら、余りにも快適な温泉に凄まじい快楽を体験してしまったからねぇ…もちろん、この光景に時行くんも逃若党の郎党たちも怒り心頭。自分たちが死線を潜り抜けている間に温泉を満喫していたとあっては当然。
弧次郎「なに人が命張っている時に遊び散らかしてんだ、バカ明神!!」
頼重さん「い、いやさっきまで禊していたし」
亜也子「お湯被っても気持ちいいだけじゃん」
頼重さん「い、良いんですぅ。禊は冷水でやれなんて決まりは無いし!」
時行くん「やはりこの人とはいっしょにやれないかもしれない」(# ゚Д゚)
折角の先回の水垢離シーンもそして諏訪神党の武士たちによる明神様の威厳も台無しになってしまったよ(笑)一番は亜也子のツッコミが笑えてしまうよ。そりゃそうだ。
まあそんあのほほんとしたノリで傍目にはイチャイチャしているようにしか見えないほのぼのシーン。諏訪神党、そして逃若党らには来るべき大戦に向けての地ならしとそして何よりも絆を得た今回の戦。何よりも時行くんと頼重さん2人の絆がさらに深まり、諏訪陣営は大戦に向けての一枚岩となった…
とおや?何か不穏な視線が注がれているぞ?
〇髪の神秘
明くる日の朝、雫ちゃんに起こされて目覚める時行くん。戦場を駆け回った疲れからかまだ寝ていたいという時行くんに対して
雫ちゃん「起きないと父様がずっと頬ずりしますよ」
サリリりりり
時行くん「・・・起きる」
うーん、いやな目覚ましだ。それにしても改めて頼重さんの愛が深すぎるよ。そういえば、以前に「思いのほか加齢肌が紙やすりのようだ!」と言われたのですが、あんなスリスリされたらヤバイ。雫ちゃんが髪を梳かして結うという『逃げ若』では貴重な日常シーン。ここでピックアップされたのは当時の少年の髪に対する認識というまたしても貴重な歴史情報。こういうのがちょくちょく挟まれるから本作が歴史漫画として侮れない。既に名前は「時行」という成人としての諱を持ちながら、髪型は未だ少年の髪型を崩さないのには理由がありました。
当時は一度も切られたことのない髪は「穢れなきもの」として神聖視されていた
当時の概念として「一度も髪を切ったことのない子供」というのは縁起物であるという当時の考え方が実は頼重さんの深謀遠慮であったのでした。来る旗揚げの時にこの長髪の子供が立ち上がれば、それだけ北条家の武士たちを鼓舞することになると。
時行くんのデザインについて当時の「髪」に対する概念を踏まえて、史実と松井センセイの嗜好とが完全に一致させすぎている(笑)
既に成人としての諱を持ちながらそれでいて「子供」としての意味合いを持たせ、そして次なる天下への大乱へのステップアップとなる。まさに趣味と実益が一体となっています。そしてこの話のキモは次。天下の主となる以上はいつまでも「長髪」のままではいられない。
頼重さん「もしも天下を取り戻せたら、その・・・私が貴方様の髪を切っても良いでしょうか」えへへ(〃´∪`〃)ゞテレ
何のプロポーズですか(笑)
見える…!見える…見えるぞ!!きっとこれは永遠の別離となる前に「断髪式」を行うその瞬間が…
いつの間にか2人には疑似父子にも似た感情が互いに芽生え始めていたのでした。そこへ・・・
〇「髪」を引っ張る「神」の子供
???「おい、お前。北条の子とかでちやほやされて図に乗るなです。
僕は神になったのだ。僕の方がうえです」
神聖なる「髪」を乱暴に引っ張る年少の子供。時行くんより幼少のその少年は頼重さんの孫・諏訪頼継なのでした。えー!今ここで出すのか!もちろんここで大事だったのは「神になった」という言葉。恐らく次回にはこの言葉の意味が明かされるのでしょうが、実はまさに頼重さん自身が将来の決起に備えて、最後の仕上げにかかったということです。それにしてもこの幼児、本当に顔もヒドイが性格も悪い(笑)父である頼重さんの息子・諏訪時継が非礼を詫びると途端に100枚くらい猫の皮被って
諏訪頼継「憧れの時行様に会えたので緊張しちゃって・・・いきなり話しかけられたからちょっとびっくりされてしまって」°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
と言いながら、「神業同伴ふくらはぎ殺し」という地味に嫌がらせ攻撃を仕掛けてきます。というか、
あの時行くんの「逃げ上手」がまったく通用していない!!
品性は最悪ながら、そこは流石に神の子という神性を持ち合わせているようです。そして
諏訪頼継「白黒はっきりつけてやるです。神と北条、どっちが上か」(;゚Д゚)
時行くん(ヒネている!この子どうしようもなくヒネている!!)(・・;)
なんてヒドイ顔だ。ここへきて自分に嫉妬する疑似父の孫(しかも自分と大して変わらない少年の敵意を理不尽に浴びる羽目になった時行くん。まあ、そりゃ自分と大して年の変わらない少年が周囲からもそして祖父からも敬われて、しかもイチャイチャしている。その代わりに自分は漫画でも登場させてもらえなかったとあってはヒネるのも宜なるかな。それにしても頼重さんと頼継、雫ちゃんと諏訪家の顔ぶれみると年齢観念が崩壊してしまう件について。本当に雫ちゃんが頼重さんの実の娘なのかがますます謎になってきます。一時期は
雫ちゃん=男の娘=頼継
という説があったのですが、今回で完全にこの説は否定されてしまいました。そしてこの時行くんと頼継との微妙に悪い関係は史実のそれ。諏訪と時行くんのつながりはあの「中先代の乱」後も続きますが、それはかつてのような強固なものではありませんでした。まあ彼にしてみれば、「北条の子」さえいなければ「お祖父さま」も「父上」も…