今回の話で一番の注目は間違いなく亜也子でしょう。何と雫ちゃんを差し置いてのメインヒロインの座ゲット!ときたもんだ。それにしても本当に彼女は時行くんと同い年の9歳(数え年)なのかな?そして今回は彼女の魅力が炸裂して、人気が沸騰してしまいます。何しろ職場の同僚がすっかりメロメロになってしまったのですから。よく考えたら、逃げ若の場合は実は成人女性キャラが殆ど出ていないのですね。諏訪大社のキャバ嬢化と見紛うくらいの巫女三人衆ぐらいであり、それ以外は出てきていない。そのために、彼女が一身でそれに類するポジションを担っているとも考えられます。それでは本編感想参ります。

 

〇才能開化!アイドル亜也子

田楽がここにきての登場!これは本来時行くんにとっては感慨深いものでもあります。何しろ彼の父親であるラスト得宗の北条高時はまさに稀代の田楽狂いとして『太平記』でも特筆されるほどの流行ものであります。まあ最後の(実質的)君主が何か趣味にハマるというエピソードというのは大抵亡国の暗君のテンプレ設定みたいなもので、「この大事な時にそんな私的な趣味に現を抜かしているから国が亡ぶんだぞ!」という教訓として後世の人間が広めた話でもあり、どこまで真実かというと疑わしい。ただそれだけこれが鎌倉時代後期には本作の解説での話通り、人々が熱狂して夢中になるほどの「一大娯楽」であったのです。そしてその田楽において才能を発揮した亜也子。今まで館内で今にも討ち取らんという殺気に満ちていた小笠原家の武士たちもすっかりメロディにのせられてハーメルンの笛吹きのエピソードの如く踊っている状態。その様は時行くんも意外な一面にすっかり魅了されてしまいます。複数の楽器を持ちながら踊るという難解な芸当を見事にやってのけ、それでいて正確に制御し、あれほど敵意むき出しだった武士たちでさえ、すっかりメロメロに。全ては時行くんの窮地を救うために亜也子が仕掛けたもの。

亜也子「すぐ帰る予定だったので…今頃国堺には諏訪の武士が迎えに来ています。子供の帰りが遅くなると大事になるかも」

せっかくの最強タッグによるウソ発見器尋問を邪魔された貞宗&市河コンビは当然大激怒して止めるよう命令するのですが、そこを巧みにやんわりと圧力をかける亜也子。彼女も今までは戦闘シーンでしか活躍する場面が無かったのですが、頼重さんが推していたようにきちんと計算しつくし策士としての一面もある。そして時行くんも魅了させてしまうお姉さん的ポジションでもある(※実際には時行くんと同い年です)

時行くん「なんと私は贅沢なのか。平和な世なら皆の憧れになれる才女が我が郎党にいる」

最早貞宗らの尋問の前でも時行くんの頭にあるのは亜也子のアイドルとしての最高ランクの立ち振る舞い。ここで現代的イメージのアイドルファッションに身を包んだ彼女の姿が提示されます。何気に時行くん、頼重さんの影響で「数百年先の未来」が見えていないかい?時代は異なれどそれこそ現代と同じ状況なら全く違う才能を開花させた人もいたかもしれません。

 

最早亜也子の田楽ペースにのせられて尋問が無意味と悟った貞宗らは遂に打ち切りを宣言。ここに命を失いかねない危険な会見は終了したのでした。ここでも先ほどの貞宗の言葉に影響されたかのように完璧な礼儀をもって挨拶する時行くん。いかなる時であっても良い部分はしっかりと学習し、自分のものにしてしまう。まさに彼もまた「才能」を持ち合わせた器量人なのです。そしてそれは貞宗でさえ、心の中では認めざるを得ない美徳。

小笠原貞宗「人を疑う乱世においてあの素直さは余りに怪しい。だがああも素直では疑う方が野暮になるわ」

やだ…貞宗カッコいい…

 

〇戦うヒロイン

帰りの道中で亜也子の意外な特性にすっかり魅了されてしまった時行くんはそのまさに素直すぎる心境を吐露します。

亜也子「素直って怖い。そういうとこ凶器…」

あ、これはすっかり惚れたな。まだ年齢相応の純真な心で喋っている時行くんと亜也子とのギャップ。繰り返しますが、同い年です。

・・・とそこへ先ほどの会見で一人株を下げてしまった貞宗家臣の赤沢が闇討ち襲撃!

せっかく妙にキャラ立つデザインで「曲者キャラ」として登場しておきながら、実際には9歳の子供たちにすっかりコテンパンに打ちのめされた赤沢。身から出た錆とはいえ、焦った彼は遂に闇討ちという暴挙に出るのでした。まあ当時はこういうのが珍しくもなんともないので、油断は禁物。実際にこの時、時行くんはすっかり亜也子に夢中で赤沢の奇襲にまったくのノーガード状態でした。「逃げ上手」能力も決して万能ではなく、完全に意識が離れてしまうと発揮できない部分がある。亜也子はここでもたぐいまれな戦闘力を発揮。なんと時行くんを赤沢の奇襲から庇うと同時に若にダメージを与えないよう落馬する時に自らの体をクッションにするという完璧なボディガード

彼女の武器はまさに身体そのもの

武芸においては彼女は赤沢にすら及ばない。その代わりに彼女にあるのはそれらすべてを使いこなす器用さであり、つい先ほどの田楽で使用した楽器すらも武器にしてしまう容赦なさ。大の男さえも軽々と持ち上げ、地面にたたきつける怪力こそが彼女の最大のスペックです。ここで解説が入ります。中世の蛮性溢れる乱世においては女性たちもまた戦う戦士となる。実際、当時の伝承でも自ら武器を取って戦った女性の記録が残っています。

亜也子自身が憧れである木曽義仲に仕えた巴御前

越後において鎌倉幕府に反旗を翻し、自ら弓矢をもって戦った板額御前

遠江において戦国の世においておんな城主となった井伊次郎(直虎)

ところで一番目と三番目はともかく、板額御前って誰?と思われた方もいたでしょうが、彼女についてはこちらをご参照ください。

 

こういう全国的ではマイナーですが、地元においては語り継がれるご当地英雄の話も知ることができるのだから、まさに旅冥利につきます。それにしてもこの人選ですが、ちょっと???的な部分が無きにしもあらず。巴御前と板額御前は確かに自ら武器を取って戦った女傑といえますが、井伊次郎は単に領主であったという(伝承的)記録があるだけでこの人選に適当かどうかというとちょっと疑問符。そもそも女性かどうかも論争が起きているほどですので。単純に女傑キャラなら立花誾千代や妙林尼の方が適当(いずれも九州)なんですが、ただどうしても中部日本限定という地域縛りがあるので仕方ないと見るべきでしょう。でもここは敢えて東日本という括りにして

スペンサー銃を担いだ幕末の「巴御前」を登場させて欲しかったっス

おっと話がそれました。かくして自分が「妾にしたい」とか言っていた9歳の女子によって虫の息にされた赤沢新三郎。とことんいいところなく危うく生首ポロリにされかけますが、時行くんの制止のおかげで回避できました。いやぁ危ない危ない。

 

〇メインヒロインゲットの巻

時行くんの乗馬が赤沢の奇襲時に逃げてしまったために2人乗りの乗馬で諏訪領に帰還する道中で亜也子は何故自分がこれほどまでに文武の芸に磨きをかけるようになったのかその動機を語ります。『平家物語』の巴御前に憧れていたところにまさに天の配剤のように天下人の卵となる少年が現れた。それはまさに木曽義仲の再来。それを運命に感じ入るものがあった彼女は武も芸も本気で取り組み、努力してきたのでした。こう見えて彼女はまさに努力の人。全ては若様のため。そして…

亜也子「護った後で若様の子を沢山産むの!!」

な、なんとまさかの告白タイムときたもんだ!!

君は本当に9歳の女の子なのかね?

これは時行くん×亜也子という組み合わせになるのか?

まあ確かに亜也子は前回の話にも出た通り、信州の名族出身なのでこの時代の常識的には天下人の卵である時行くんとは結構釣り合いが取れていますし、伝承では時行くんの後胤の存在も伝わっていますので、あるいは彼女が天下人の血脈を伝える…少年誌で載せていい話かどうかは分かりませんけどね。

今回のパートは完全に彼女がメインヒロインとなる話でした。時行くんに対する一途な思い、そしてそのために遠慮なく「生首ポロリ」もやってのける女性武将。時行くんは自問自答します。自分がそれに相応しい主君になれるだろうか…(告白はスルーしておいて)

それにしても絵柄的には完全にオネショタにしか見えない。本当に君は9歳なのか?まあ大河ドラマでも似たようなツッコミネタがあるから仕方ないね(笑)

 

かくして今回の命がけの使者ミッション(つうか時行くんのミッションはいつも命がけだけどね)

は終了…

 

 

・・・・

 

ってちょっと待て!!今回の話で亜也子がヒロイン確定してしまったら、「男の娘」疑惑は雫ちゃんになってしまうではないか!例の貞宗の「ダニの性別数」という意味深な伏線が未だに残ってしまっている。頼むから意味のないもので終わってくれ!!(懇願)