PROSIT!!ロージット!

この記事を書いている最中も最後のシーンをリピート再生で20回は視聴しています。もう色々痺れてしまうくらい釘づけとなってしまっています。何がって

プロージット!!とブリュンヒルト及び帝国艦隊の出撃シークエンス!

そしてそこに流れる映像美と勇壮な音楽に!!

もうここの音楽が本当に好き。丁度石黒版のクラシックに近しい感じがしており、私の中でお気に入りBGMになっています。これだけは早く聞きたい!早くサントラ発売してくれ!!絶対買うから!!

 

さて今回の話はもうラストの帝国パートで全て持っていかれました。もうこの出撃シーンはSF好きなら誰もが興奮するであろう演出は非常に良かった。ここまでの同盟パートでもやもやした感覚全てを忘れさせてくれました。今回のMVPはブリュンヒルトで決まりです。それ以外でも短いながらも帝国パートは充実した気分で見れました。今まで殆ど出番の無かった提督たちが今回はわずかに「はっ!」と「プロージット!」のセリフ2個だけなのに全員出演したのにも痺れた。帝国ファンにとっては歓喜の瞬間だったのではないでしょうか。それにしても

もう戦う前から勝敗が決してしまった感満載ですね。

さて一方の同盟パートなんですが・・・何かこう作中のグダグダが伝染してしまったのかと思ってしまうぐらい演出や人物描写が不満だらけでした。今回の話は石黒版第14話「辺境の解放」に相当して、同じペースだったのですが、正直余りにも展開飛ばし過ぎです。また主な流れは原作準拠だったのですが、随所随所で改編が見られるのですが、それが逆におかしくなっているのですよ。

特にグリーンヒル大将の描写はこれでは困るんですよ。

「尺が足りないからしゃーない」という次元では済まされない問題がありました。無論部分的には良い部分もあったのですが、今回は厳しくダメ出しで参ります。まずは順番をすっ飛ばして帝国パートから述べていきます。

 

1.秀逸の帝国パート

まずは同盟軍の補給艦隊出動を察知してキルヒアイスに出撃を命じるシーン。ここでの両者の会話は今までのそれとは打って変わって淡白なもの。そのそっけない態度がキルヒアイスが本作戦に批判的であることは明瞭でした。ここで二人の間の「隙間」が覗かせます。基本的に「キルヒアイスなら分かってくれる」と甘えのラインハルトと自分を納得させようとしているキルヒアイス。それでも今回はそれで済みましたが、やがてそれでは済まなくなる時が・・・さりげなく将来の悲劇への伏線が張られていきます。

提督たちに作戦についてもう1度説明するオーベルシュタイン。そういえばまだこの時は准将でしたたか。中将の提督たちに敬語を使うオーベルシュタインというのは非常にレアなシーンです。

そしてここからが怒涛のクライマックス!勇壮なBGMが流れると共に1人1人言葉を投げかけるラインハルト。ここでの台詞は

『我が軍は被占領地の奪還と同時に民に食料を供与する。反乱軍の侵攻に対抗するためとはいえ民に困窮を強いたことは私の本意ではなかった』

此度の戦いに勝ち我らこそ地統べる力秀でたることを事実によって知らしめるのだ。反乱軍の身の程知らず共を生かして返すな。卿らの武勲に期待する!』

民衆から食料を取り上げておいてマッチポンプもいい処ですが、注目すべきは赤字部分の「我らこそ・・・」。原作ではここはあくまでも「帝国こそ・・・」でした。つまりラインハルトの提督たちへの秘かな野心の発露でもあるのです。

      『卿らの上に大神オーディンの恩寵あらんことを!プロージット!』

ここの部分のBGMとの相乗効果で見ているこちらの方も見ていてハイになってきました。

ワインを飲み干すと、慣習に従ってグラスを床に投げつけ、砕け散るガラス片。ここも原作通りの華やかに乱舞する映像美に痺れます。

そしてブリュンヒルトの出撃シークエンス

石黒版ではブリュンヒルトの形状でどうやって地上に駐機させていたのかが違和感があったのですが、本作では成程通常は水中に係留させることでその疑問を解決してくれました。この辺のメカニカル的考証は徹底しているのがノイエ版の良い所。

それにしてもまさかここがブリッジ部分であったのですか。しかしこれ、下部から攻撃受けたらひとたまりもないのでは。

銀英伝史上では初めての映像での宇宙戦艦操艦描写。ここもわざわざ発進管制の手順を復唱させるという徹底ぶりは痺れます。

そしてエンジン点火すると

加速するとまさに戦闘機の如く、飛翔するブリュンヒルト

その後ろ姿はまるで翼をはばたせた鳥のよう。ここの映像美も惹きつけられました。

そして提督たちの戦艦も次々に登場。まずは「黒色槍騎兵」艦隊旗艦「王虎」

そして「双璧」は常に一緒。トリスタンと人狼

銀河帝国軍は元々人類唯一の統一国家の軍隊であることから、その軍の任務は治安維持が基本であり、迅速に叛乱を鎮圧できるよう惑星への突入、地上からの離着陸ができるようにしています。本来、あれほどの巨大な質量の艦船を地上から離発着させるのは経済的にも環境的にも不合理極まりないのですが、そこは何よりも威圧を目的とする帝国軍。確かに頭上にこれほどの巨大戦艦が次々に浮遊していく様は確かに絵になります。しかしこれもし墜落すれば大惨事ですが・・・帝国はその辺整備はしっかりと行われていると信じたい。

ここでオリジナル描写として出撃する艦隊には眼もくれず、椅子に座る皇帝。既に見た目からしてその体調は思わしくなく、彼に遺された時間はほとんど無いことを暗示しています。そしてただ一人傍にいるのがアンネローゼ。ここは皇帝の孤独な状況を浮き彫りにすると同時に彼にとって心許せるのは彼女だけであることがこの絵で示されています。静かにガウンを羽織らせるその姿には皇帝に決して悪感情を持っていないことを物語るかのようです。ここも良かった。

そして一気に大気圏離脱して

宇宙の海原に埋め尽くさんばかりに登場する凄まじい艦船。

これは四半世紀前には到底表現できなかった映像の美しさでした。

もうこの部分を見れただけでも良かったと思えるくらいです。

 

Ⅱ.不満だらけの同盟パート

さて話は最初に戻りまして、帝国領に侵攻を開始した同盟軍。ネット上でウランフの乗艦が「盤古ではない!?」と騒然となりましたが、実は原作では主要人物以外の艦船名については言及が無く、(特に同盟の艦船は)殆どが石黒版オリジナルで付けられた名です。ちなみにビュコック爺さんの場合は原作通りなので当然「リオ・グランデ」のまま。ウランフがモンゴル系ということを考慮してかモンゴルにちなんだ名になっていました。

その一方でたとえば第8艦隊司令・アップルトンの乗艦ですが、石黒版で「クリシュナ」とインド由来の名にあったことを考慮して、同じインド系に。一線は画しつつ、リスペクトは忘れないその姿勢は好感が持てます。

ところでここでアップルトンが他の提督たちに先んじて登場させたということは今後の展開はやはり、石黒版と同じくアムリッツァ本戦は5.8.13の組み合わせになるということになるのかな。ウランフやボロディンは次の話で退場になりますから・・・ただそのために第7艦隊のホーウッドが出番を奪われたのは気の毒でした。

そしてボロディンの乗艦登場!良かった~、実はボロディンの乗艦は石黒版では外観不明(艦橋部のみ)でしたので。さて帝国軍の抵抗が一切なく、帝国領惑星に部隊を送り込む同盟軍。基本的に同盟軍はその創設当初から帝国との決戦を想定されていたので、大気圏突入機能はありません。人員・物資の行き来は全て専用のシャトル・揚陸艇で降下します。

諸君らは自由であると高々と宣言する宣撫士官に対して、それよりもまず食料を求める民衆。帝国軍が全ての物資を持ち出してしまったために民衆は政治的自由よりも食料であるのです。基本的に田中先生の作品では「善政の基本は民衆を飢えさせないこと」「民を飢えさせる者に為政者の資格無し」で徹底されています。そしてこれは民主国家が行き詰った時に陥りやすい錯誤でもあるのです。政治が行き詰った民主国家ではよく政治家やエリートが「自由を守ろう!」と叫びますが、経済的苦境にある民衆からすれば「自由よりも先に我々のこの苦しい生活を何とかしてくれ!」という本音がある。機能不全に陥った民主国家において、ポピュリズム政治家が登場するのは決まってこういう時なのです。民を飢えさせる国家は独裁国家であろうと民主国家であろうと失格である。

それにしても同盟も帝国民衆の「解放」を謳うのであれば、それについて真剣に検討すべきでした。例えば、「農地解放」「税の軽減」などを喧伝することで民衆の蜂起を誘うなどの方策を求めるという丁度「アルスラーン戦記」でルシタニアがパルスの奴隷に自由をちらつかせて、蜂起を促すやり方ですね。しかし実際には政府の本音は「単に帝国に勝利して支持率上げればそれでよし」なんてものですので、そこらへん眼中に無かった。

イゼルローン要塞のキャゼルヌの執務室。まだ占領したばっかりなので、帝国の名称が取り除けていないのでしょう。ここで手書きの紙とセロハンテープで掲げるのが如何にもキャゼルヌらしい。「そんなことに無駄な労力かけられるか!!」

前線からの要求に頭を抱えるキャゼルヌ。ロボスに危機的状況を述べますが、全く聞く耳を持ちません。ここで台詞にある「全軍の2倍近い捕虜」という言で流石のキャゼルヌも住民を丸抱えという状況は想定外だったのでしょう。まあこれに関して言えば、そもそも同盟軍が帝国領へ侵攻するのはこれが最初(そして最後となる)であり、これまで帝国との戦争は基本的にイゼルローン要塞から回廊出口の同盟領での防衛戦だったので、そういったノウハウが全く無かった。キャゼルヌでさえも想定外にならざるをえないのは当然でしょう。

ここでロボス元帥について。本作だけ見ると「何でこんな無能がトップなんだよ!」という感想しか出てきませんが、戦時中の軍隊組織というのは実力組織であり、如何に同盟が腐敗しているといっても単なる無能が実戦のトップに立てることはありません。本来のロボスは「多少大ざっばな性格だが、それなりに有能」であったのです。実際、過去編にあたる外伝ではそれなりの実績を示しています。ところが本編の時期に来ると駄目駄目となり、その欠点が明らかに悪化していっているのです。

名馬も老いては駄馬にも劣る

この辺、どこかで「ロボスも昔は有能だったのに・・・」とかのボヤキの形で表現してくれても良かったのですが、まあこれに関してはダメだしではありません。

 

ダメだし①原作の状況と合致していないぞ

前線からの要求に議論紛糾する最高評議会。ここナレーション解説ですっ飛ばしたのは痛かった。

最後に投票により決定されたのは本作オリジナル。ここで票の行方に注目。そもそも出兵した時は8対3だったのがここで1票差にまで追い上げています。つまり出兵派がバラバラになっているのですね。ここは危機的状況を憂いて、撤兵を説くレベロが賛成派評議員を切り崩そうとして、それをウィンザー夫人が押えこもうとし、そして国防委員長閣下が高見の見物を決め込む政治工作模様を取り上げて欲しかった。せめて棄権の2票が回ってくれれば、破局を回避できた最後の瞬間でした。

そしてダメダメだったのが何でウィンザー夫人がニヤニヤ笑いなのでしょう。そもそもこの状況は流石の彼女も撤兵しかないと認めざるを得ない状況だったのです。そして彼女がそこでしたのが、サンフォード議長への逆恨み。そういった原作の心境が何一つ反映されていません。

 

ダメだし②「そこを描けぇー!!」

そして物資が届くまでは「現地調達(=略奪)すべし」という総司令部の命令に憤る前線指揮官たち。そしてこの危機的状況を打開するためにヤンはウランフと協議して撤退すべきということで前線部隊の意思統一を図ります。それにしても言葉を飾らないそしてヤンの意見を率直に聞くウランフを見ると、本当この後の展開が勿体なすぎと思います。せめて彼だけでも生きてくれれば・・・と思うと鬼畜すぎる。

そしてヤンに改めて賛同する第13艦隊のメンバー。ここでフレデリカさんの微笑みには相も変わらず惹きつけられます。そして食料供給を停止したことで

同盟軍士官「何でこんな事になった…!」

 

それはテレーゼさん(CV:日高のり子)のセリフだ!ここもねぇ色々すっ飛ばし過ぎでしょう。ちゃんとプロセスを描かないと駄目でしょう。

 

民衆「食料くれ」同盟軍「出しましょう」蜜月→同盟軍「もう食料無い」民衆「我々に飢え死にしろと言うのか」亀裂→同盟軍「我々も苦しいのだ。物資を出してもらう」民衆「ふざけんな!!」敵対のプロセスを描いていれば、ここの子供に銃を向けるこの士官の悲劇性も際立ったでしょう。

石黒版の「辺境の解放」はここら辺丁寧に描くことで同盟軍側、そして民衆側の心情を見事に描いていました。ヴァーリモント少尉とテレーゼさんは今でも私のお気に入りキャラです。

屋良さんのナレーション「大義名分同士がぶつかり合う場では常に民衆は利用され、捨てられる。それがまるで民衆の存在意義であるかのように」

これは今でも忘れられません。

 

ダメだし③グリーンヒルはこれでいいのだろうか

さてハイライトになるのがビュッコック爺さんの啖呵、まさに視聴者の喝采を呼び込む名シーンだったのですが、うーん、爺さんのそれが余り怒りのトーンが低く、淡々としているのが私的には疑問でした。もっとガンガン怒りの喝を入れてもよかったのではないでしょうか。

 

爺さんに関しては石黒版のそれが至高すぎてアレノ上書きできない状態という自覚はあります。

 

でもここでのフォークの顔芸は最高に愉快でした。

流石に「転換性ヒステリー」という病状は現代で表現するのは不適切だったでしょう。マイルドに押さえられていました。しかしだめだったのは次の時!!

ドワイト・グリーンヒル『逆らわず、挫折感も与えずあらゆることが彼の思うように運べばよいそうです』

参謀総長にこんなセリフ言わせたら駄目でしょう!!原作でのこの場面はヤマムラという軍医が病状を説明する時に出てきた台詞で、あくまでも「医学的見地」からであるのですが、それをグリーンヒルに代行させたことで極めて不自然な状況になっています。ちなみに石黒版でもヤマムラの存在はカットされてグリーンヒルが病状説明していますが、この部分はカットされています。当然ですね。

『…総司令官は今お休みになられています』

ここもねぇ、何故「昼寝」では駄目だったのでしょうか。「お休み」というと単に「就寝中」とも取れます。人間である以上、睡眠は必要ですからこれだとたまたま連絡してきた時期が悪かったとも取れてしまいます。「昼寝」だからこそ「ふざけんな!」となるのです。そして

『提督…』


ビュコックの事実上の打ち切りを宣言に慌てて呼び止めようとするグリーンヒル。これだとマジで彼は命令を忠実に守ろうとする人間にしか見えません。

 

原作や石黒版では淡々と重苦しい表情で見つめることで彼もこの状況のおかしさに気付いている、にも関わらず何もできない無力感に悩まされる軍人であることを表現していました。それに比べるとノイエ版の彼は典型的な命令を忠実に履行する官僚そのもの。

 

 フレデリカさんは(違う意味で)泣いていいと思う。

あのー、わかっておられますか。次章ではヤンとフレデリカの関係にも大きく関わるキーパーソンですよ?今からラインハルトとキルヒアイスの関係のようにちゃんと伏線張るべきではないのでしょうか。それがこんなダメダメでは本当に良いのでしょうか。ここだけ原作準拠にされては困るんですよ。その後の展開が突然すぎて何が何だかわからない。

この点石黒版では随所で彼がヤンを高く評価していたこと、そして現在の政府のありように疑問を抱いていたこと、そしてフレデリカとの絆を描くことで悲劇性を際立たせていました。

極め付けは

「こうするより他に手段がかった…こうするよりな………あの子は判ってはくれんかな、母さん

あのグリーンヒル大将描写は光っていました。

 

さて次回は恐らくアムリッツァ前哨戦となって、本戦は映画に持越しになりそうな公算大。ポプランは確実に登場するでしょうが、アッテンボローも登場させてほしい。OPに出て本編登場しないとかありえないので。