今作に関してですが、やはり原作や石黒版をスタッフはよく研究しています。そしてリスペクトする部分は概ね踏襲しながらちゃんと自分達なりの「銀河英雄伝説」を描こうという姿勢は大いに評価できます。そして今回、私はてっきりミキシンさんの要塞制圧アクション劇になると思っていたのですが、全く違いました。今回描いたのは

要塞指令室を制圧するまでのハラハラドキドキの潜入心理劇

の方に重点が置かれました。原作&石黒版ではこの辺はガバガバすぎてここまでの過程はアッサリしたものでした。勿論、石黒版は原作ほどあっさりしたものではなく、そこらへんをしっかり練り込んで

シェーンコップ「艦長の・・・フォン・ラーケン少佐だ・・・ゴホッ・・(偽吐血)」

カスパー・リンツ「アァ…!始まってしまった!!」

という名演技で喜劇風にあっさり持ち込む過程に説得力を持たせていました。(なお興味ある方はOVA第7話「イゼルローン攻略!」をご覧ください)その意味で今回見事に名誉回復(?)を成し遂げたのは

指令室警備主任レムラー少佐(原作では中佐)と帝国軍のセキュリティシステムでした。そこかしこで疑われかねない要素とそこを丁寧にフレデリカさんの解説付きで結果が分かっていてもハラハラものになるののですね。例えば途中でのルドルフ大帝像での敬礼。本作では帝国軍と同盟軍では異なる敬礼(帝国は通常我々がよく見る形式、同盟は掌の甲を見せる形)異なっていることが伏線になっています。そしてID認証シーン。これ気になっていたのですが、グリーン表示だったので実はクリアだったのではないか?と思って表示を調べていました。

表示はIDENTIFIZIERT、ドイツ語では「認証」となるのです。パスしているじゃん。もし「認証不可」なら「NICHT IDENTIFIZIERT」になる筈。

レムラー「やはり貴様ら賊か!」

という台詞からも端緒から「出来過ぎた話」にシェーンコップらの素性を疑ってブラフをかけていたのでしょう。(もし本当に認証できなかったら入港もできなかった筈)今作のレムラーは実に有能です。まぁ全部シュトックハウゼン閣下が台無しにしてしまっいましたが、逆に

シェーンコップ「どんな厳重なシステムも、運用する人間しだいという、いい教訓だ」

という原作の台詞にかえって説得力を持たせる良い演出でした。

 

さて多くの方が驚きであったように本作で初めてシェーンコップの幼年時代。うーん、不良中年もやはり過去は可愛い少年、どうしてこうなったのだろう。できれば同盟亡命した時に受けた「ある体験」もしっかり描いてほしいものです。さてここでもしっかりキャラの過去設定もしっかり練り込んでいます。ブルームハルトの家が帝国に享けた「ありがたい御恩」もちゃんと計算に入れていました。

ただし本作のブルームハルトはやはりダメだ

刺青なんと目立ちやすい状態で潜入作戦に従事なんて流石に言い訳できないでしょう。

 

さてここからはやはり気になった部分。ヤンが本気で怒髪天を突くが如き怒ったゼークトの返電。ここで石黒版では富山敬さんのヤンは本当に声を荒げているのですが、本作の鈴村ヤンは表面上は冷静に、そして黒い影で顔を覆うことで「静かな怒り」を表現していました。これはこれでありかもしれないのですが、どうもしっくりこない。それとあの行儀悪い指揮卓にあぐらをかいている姿は良いのですが、あの位置だと万一衝撃に襲われた時、後ろにひっくり返ったらまだしも前にひっくり返ってしまったら大けが確実なのですが。

 

そしてそして・・・・

アドリアン・ルビンスキー『よもや成功するまいと思っていたがな。ヤン・ウェンリー…なかなか興味深い男だ』

やっとやっと自治領主閣下が登場してくれました!遅いよ、本当に実は不満たらたらだったのです。本当はアスターテ直後に堕してほしかったのよ。ここまで完全に帝国パート・同盟パートの2本しかなかったから余り出番ないのかと不安でした。

そして手塚さんんじゃないですか!これは本作キャストの中でも諸手を挙げて歓迎したくなるキャスティングでした。勿論ガンダムUCファンでしたらここでドミニク・サン・ピエールに甲斐田裕子さんだったら歓喜するレベルなのですが、果たして・・・?いずれにせようん、実に大物オーラ満載で良い声でした。