今回大いに評価したいポイントはやはり↓これでしょう。

 

ヤン・タイロン「民衆が楽をしたがるせいだと。自分達の努力で問題を解決せずどこからか超人なり聖者なりが現れて全部一人でしょい込んでくれるのを待っていたからだ。そこをルドルフに付け込まれた」

 

これがあるのと無いのとは雲泥の差です!!

このスタッフ、なかなか銀英伝に対する愛情があるのは確かです。これは認めざるを得ない。実は放映開始する前は懸念していたのですよ。特に自由惑星同盟のくだりや政治に関する云々に関して、四半世紀前とは違って「フィクションの世界」とは割り切れないような描写の数々だったのですよ。これは田中先生が今日の世界情勢を洞察された慧眼の高さを示すのか、それとも現実がフィクションに追いついてしまった危機的状況を顕すのかは判断しかねますが、とにかく変に「自主規制」など入ってしまう恐れがあったのですよ。とにかくヤン親父さんのこれはヤンの人格形成にかかわる重要な要素であり、なおかつ民主主義と独裁との関係を論じるこの「銀河英雄伝説」の

欠かすことのできない重要なテーマ

これを視聴者にも考えさせる重要な台詞なのでやってくれてよかったと大いに評価しています。願わくば

ヤン・ウェンリー「政治の腐敗とは政治家が賄賂を取ることではない。それは政治家個人の腐敗にすぎない。政治家が賄賂をとっても批判されない社会、それを『政治の腐敗』というのだ」

これは今を生きる我々には耳の痛すぎる台詞。絶対入れてほしいですね。

それ以外にも

石黒版でヤンの親友・ラップを務めた田中秀幸さんんが今回ヤン親父を演じてなかなかナイスキャスティングでした。石塚運昇さんがメルカッツで再登場した時にはぶーぶー文句言っていたのにこの違いは一体何?

他にもわざわざヤンとラップの酒の席で730年マフィアの酒が登場したり、「手ぶらのヤン」という多種多様な称号(笑)の持ち主であるヤンに新たなオリジナル称号が登場したりとなかなかスタッフが銀英伝を深く愛しているんだなというのは随所で見受けられます。

他にはポイントは

①ヤンとラップとジェシカの三角関係

石黒版ではどちらかといえばジェシカとヤンは両想いの関係であったのだが、親友に遠慮してヤンが一歩退いて・・・という関係であったのですが、こちらでは最初からラップとジェシカが両想いでヤンはそれを温かく見守って・・・という関連でしたね。これはこれで趣深い。そしてジェシカとヤンの間にある微妙だが深い壁。後に分かたれる悲劇を暗示しているよう。

②キャゼルヌ役の川島得愛さんはなかなか良い

最初デザイン見た時は「何か違う感」があったのですが、声を聴くと不思議と「アリかも・・・・・」と思わせてしまう凄い力があります。

③フレデリカさんは可愛い

石黒版では現在とほとんど容姿が変わっていない女性だったフレデリカさんですが、今回は年相応の少女らしく可愛くなっていました。ヤンの無粋な一言で頬をふくらませるところとかね。でもこれが果たして恋心につながるのか?

 

そして次回の鑑賞ポイントはユリアンでしょうか。演じる梶さんは同じ田中先生の作品で感情ダダ漏れの残念仮面の男を演じていたのでどうしてもそのイメージが付きまとってしまいます。いや本当はコチラの方が本来の梶さんの正統派キャラなんですがどうしても田中作品つながりでねぇ。ところで気になったのですが、図書館にあったあの大量の蔵書、どうやって入手したのでしょうか。「長征」の時には当然ながら本など持っていく余裕などどう考えても無かったでしょうし、まぁ普通に考えれば亡命者らがもたらしたかあるいはフェザーン経由で「輸入」したかでしょうが。こういう時に電子媒体なら大量のデータを圧縮してそれほどかさばらずに持って行けるからあるいは。原作では「どんなに技術の進歩しようが、人類は紙以上のものをとうとう発明できなかった」とあるのですが、紙は長期的保存には優れますが、その一方で大量にかさばり、しかも水や火、環境に大きく左右されるデメリットもあります。

 

さてここからが批判点になるのですが、今回のアニメ非常に着眼点とか色々オリジナル要素を入れて作ろうとしているのは分かるのですが、その一方で第1話から感じていたのですが、

「一見小さいことだが話の重要な部分がカットされてしまう」

という部分が多い。勿論、尺が無さ過ぎるので取捨選択は必要ですが「これカットしちゃうの?」というのが結構あります。今回はアカンかったのは以下の通り

①ワイドボーンとの戦略シュミレーション

今回の話ではヤンが補給部隊を叩いて即勝利となる展開でしたが、原作(及び石黒版)ではもちろん違います。この後もシュミレーション戦闘は続けられましたが、ワイドボーンはありとあらゆる手で攻めをしたのだが、ヤンはひたすら防御に徹していた。そのうち補給部隊が叩かれたことで遂に物資切れを起こして行動不能、教官が判定を下してヤンの勝利となる展開・・・だったのですが、補給部隊を叩いたら即勝利ってそれ何のシュミレーション?当たり前ですが、補給切れを狙うというのは当然の戦略ですが、それだけですぐ終わるわけではありません。攻撃側は当然まだ攻撃ユニットがやられたわけではないので、すぐに撤退するわけはありませんし、これは後になってジワジワくるものなのですよ。補給物資切れというのは。それまでヤンがひたすら「敗けない」戦い方に徹していたからこそ、判定勝ちになったのであり、ワイドボーンが捨て台詞に直結するのですから。

 

②エル・ファシルからの脱出

何でレーダー透過装置の件はスルーした?

これこそ後でラップの会話であった「硬直した固定観念ほど危険なものは無い」に関わる重要なものであり、ヤンの用兵の神髄が

「敵の心理を読む」

これにかかっているのになぁ。

あともう少し作品世界が何か現代的すぎやしないか?帝国ならともかく同盟はもう少し未来世界っぽくして欲しかった。それこそ帝国と同盟の違いが歴然となる要素なので、あれだと初見の人には「現代アメリカ」の世界に見えてしまいます。