大学病院はいつもすごく混んでいる

外科受付に紹介状とマンモグラフィーの画像データを渡し

問診票を記入する

 

身長体重

住所 年齢 連絡先 最終月経 どこの問診票でも書く事項を書き進めていくうち

初めて見る欄で手を止める

 

告知を受けることになったとき という記入欄

一人で 家族と その他

の項目があり 私は 一人で に丸をした

 

受付に問診票を提出して乳腺外来の前に座って待つ

壁にはいろんなパンフレットが貼ってある

医療用ウィッグの割引券

がんと診断されたら という冊子

がん相談センターの冊子

 

ぼんやりと眺めていたら診察室から笑い声がきこえてきた

乳腺外来の診察室からの笑い声?と不思議に思いながらきく

しばらくして笑顔の女性が診察室から出てきた

笑顔? また不思議に思う

もしかして良性だった人かな?

それとも経過観察中かな?

あれこれ思いをめぐらせつつ 持っていった本すら読む気にならない

ふと お隣に座っていたご夫婦の女性が「ウィッグ ここの病院の下なら割引あるんだね」とぽつり言う

付き添いのご主人は黙ったままだった

 

そのご夫婦が診察室に入り しばらくしてまた笑い声がきこえる

なんだろう なんでみんな笑っているんだろう

長いことあって ご夫婦が出てきた

 

2時間遅れで診察室に呼ばれ ああ この人が主治医になるのかなと思う

感染対策がすごい先生だった

あまりの感染対策に はええ となる

これから何度も登場することになるのでドクターJとする

 

まず開口一番「お待たせしてごめんなさいね」と言われた

待たせて当然と思っていないのかとちょっとびっくりした

大学病院って待つものだと思っていたので医師から言われることに驚いた

それからマンモグラフィーの画像を一緒に見る

石灰化の量と分布の確認 何度みても前回とは違う

 

「だいたいこういう画像からみて悪性のことが多いかな あ でもちゃんと検査するまでわからんけどね

 多い ってだけで」ドクターJは思ったことが全部口に出てしまうタイプの人なのかもしれない

「とにかく検査をしないことにはわからんので検査をします 今日はまず血液検査とマンモグラフィーをして帰って。それから次に起きることはMRI検査。MRI画像が出てきたら次はマンモトームという検査をします。マンモトームは胸に太い針を刺して組織を採取してがんかどうかを調べる検査です。パンプレット渡すね あ、触診するから横になって」

矢継ぎ早に次から次へと検査の予約が入る。さすが大学病院空きが3週間先。

3週間先の診察がまたその2週間後 おおかた一ヶ月半後か 先だなうんと先

 

横になって天井をみて ドクターJに触診を受けながらあれこれ一ヶ月半もモヤモヤしたまま過ごすのかあ と絶望する

先送りになっている間はがんじゃないと思って過ごそうか

やりたいこと考えておくか

 

触診が終わり椅子に座り直してすぐドクターJに言われる

「まだなにもわからないうちからあれこれ考えなくていいから。今はまだ普通に過ごして。わかってからでいいから。考えるの。」

 

はい。と言いながら

でもちょいちょい悪性確定してる感だしてくるの、貴方なんですけども。と思いつつ。

診察室を出て 外で待っていたら看護師さんに呼ばれる

マンモトームのパンフレット

同意書

予約票を受け取る

もしかして私はすごく心配そうな顔をしていたのかもしれない

看護師さんが肩を抱いてくれて「大丈夫?」と言ってくれた

無理やりに笑ってみたけど うまく笑えない

 

それから言われた通りに血液検査とマンモグラフィーを撮って帰る

マンモグラフィーは何度やっても慣れない

挟まれている乳ではなくて引っ張られる皮膚が痛い。