標記について思うこと、メモしておきます。


1 令和6年度の字幕放送等の実績(2025年10月6日)
※総務省サイトを参照ください

総務省では視聴覚障害者や高齢者に配慮した字幕放送等の普及促進に取り組む一環として、毎年字幕放送、解説放送及び手話放送の実績を取りまとめ公表しています。

テレビの字幕要望は、1995年に全難聴を中心に40万5000筆の署名を集め、国会に提出したのを機に、
・1997年放送法改正に結実。
・1997年 字幕放送普及行政の指針策定(10年間の目標。5年毎に見直し)
・2007年 視聴覚障害者向け放送普及行政の指針策定(解説放送の目標値も設定)
・2018年 放送分野における情報アクセシビリティに関する指針(名称変更)
・2023年中間見直し、指針改定
今後、2028年には新指針を出す必要があると考えられます。

字幕放送は目標の対象番組ではほぼ100%に近付いていますが、
対象でない番組を含む総放送時間内ではまだ7割程度です。
特に地方局や生放送番組、早朝・深夜番組で字幕付与できていないところが多いです。
視覚障害者向けの解説放送や、手話放送は さらに少ないです。
ですが災害時等、情報アクセシビリティの充実を求める声は依然として強いです。

2 障害者放送協議会の取り組み
障害者団体で歩調をあわせて総務省、放送局と交渉していく中心的な役割を担っているのが
障害者放送協議会(事務局・リハ協)です。
日身連、日視協、全日ろう連など18団体で構成されています。
全体の協議の他、
放送・通信バリアフリー委員会、著作権委員会、災害時情報保障委員会の3委員会で、各テーマの活動をしています。

毎年総務省地上放送課やNHK・民放などの放送業者と交渉をもっています。
ただ近年、活動が下火になっていると感じていました。

<理由>※私見
・字幕付与技術のブレイクスルーがなく、従来のやり方では頭打ちになっている。
・放送波に載せられる情報量に限界があり、字幕データや字幕チャンネルを増やすのが困難。
・放送設備の更新には巨額の費用がかかるため、取り組みに積極性が見えない。
・音声認識の導入については、誤変換を警戒する立場からどの局も限定的。
・ネットの普及で、放送局の広告料金収入が減少する構造になってきている
・ネット経由で字幕情報を送信するハイブリッド方式(ハイブリッドキャスト)も検討されていたが、
受信機能を内蔵したテレビが限定され普及せず、放送終了しつつある。
・直接ネット動画を視聴するネットテレビの方法が普及。

障害者放送協議会では毎年総務省や放送局と懇談を重ねていますが、
ここ数年は足踏みしている印象です。

3 ATSC3.0規格への期待
ここで、次世代のデジタルテレビ放送規格のATSC3.0(愛称 NextGen TV)への期待を語りたいと思います。
ATSCは、ハイブリッドキャストと同様、
ネットとテレビ放送をシームレスに組み合わせ可能な規格。
ATSCとは北米で地上波デジタル放送の標準規格を開発した団体。
2024年時点で、全米75%以上のエリアで導入が進められているようです。
1万円程度の外付けチューナーで可能。
スマホ受信や視聴者個人にあわせた広告配信が可能で、新たな収益モデルを創出できる。

河村 宏 氏という方がいます。
河村氏は、デジタル録音図書「DAISY(デイジー)」の国際的な普及や、障害者のための情報アクセシビリティ向上に関する研究開発を長年続けてらっしゃる、オガワの尊敬する人物です。
現在、NPO 支援技術開発機構(ATDO)で活動されてます。
ATDOではこのATSC3.0規格がブレイクスルーのカギになるのではと考え、昨年から障害者放送協議会の予算で、米・欧・韓国の3か所を調査されています。
1)米国
一時米国の約75%のエリアでATSC規格の放送が行われていたそうですが、
先進的と言われるボストンでもほとんど受信機普及が進んでいない状態。
特許権で利益を得ている企業が、
テレビ輸出している韓国メーカー、LG エレクトロニクスを相手に巨額の賠償訴訟で勝ってしまったそうで、
LGはATSC内蔵の製品を輸出できない状況だとか。
ただよくわからないのですが、もう一方の韓国のテレビメーカー、サムスンは訴えられていない様子。

2)欧州
昨年6月に欧州アクセシビリティ法が施行。
テレビのアクセシビリティについても企業は順守必要な状況になっている。
フランスで新設されるデジタルアクセシビリティセンターは、
「視覚障害向けだけでなく、みんなのためのコンテンツを制作者が出す時代になった」
という評価。環境は進んでいる。
ただ欧州では放送規格が違うため、肝心のATSC規格の導入については確認できなかった。
韓国以外では、ブラジルでATSC規格導入を確認した。

3)韓国
ATSC規格の実施は一番進んでいる。2017年から実施され、協議会でも話題になっていた。
ATSCはテレビ映像に、字幕や手話データがあればオンオフで入れられる。視聴者側で選択できるので、受け入れやすいのではないか。

韓国の障害者団体では、まだコンテンツが足りないことを問題にしている。
放送の数値目標を作るとのこと。
デフリンピック放送では、手話通訳が足りず、アニメのアバターを使わざるを得なかった。

システムは現地に行かないとみられない。
ATSCの規格で、韓国国立博物館内の展示説明に、手話動画を載せることもできている。

※韓国ではキオスクというタッチパネル式の無人注文・決済端末が一般的。
牛丼の松屋にあるようなシステムだが、現金なし、カード決済が中心。
キオスクも全ての障害者にアクセシブルにする必要があると取り組まれているそう。
※ATSCとの関係もあるように見えましたが、詳細不明。

4 調査について
以上3地域の調査結果から、障害者放送協議会の会議では、韓国が候補になっています。
放送だけでなく、施設利用のアクセシビリティ向上にも有力なシステムのようです。
放送アクセシビリティ、施設・交通アクセシビリティ向上に関わってきたオガワとしては
非常に関心のある調査です。

ですが今回は調査です。
結果が良くても、日本に持ち帰って報告して、
総務省や放送業界にも報告して、システムを変えていこうとすると
順調にいっても10年20年はかかる話だと思います。
正直、オガワはそこまで活動はできません。
新しい力が必要です。
若い方には、ぜひ関心を持っていただきたいと思っています。
オガワも長く活動を続けてきましたが、ここまで重要な、アクセシビリティのゲームチェンジャーとなりえるような規格、テーマはなかなかなかったと思います。

以上、まとまりませんがメモを置いておきます。