草なぎ剛主演「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」社会の問題を全面に出した原作と、家族の物語に重心を移したドラマ 違いはあれど誠実な映像化!(大矢博子の推し活読書クラブ 12/27)

 

ドラマや映画の原作小説を紹介するこのコラム、今回はろう者や中途失聴者の役者さんが多く出演したこのドラマだ!

■草なぎ剛・主演!「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」(NHK・2023)

ああ、誠実な映像化だ──というのが第一印象だった。

社会的な問題を提言した原作に対してドラマは「家族の物語」に重きを置いたかな、という気がした。

ドラマでの演出の、原作との大きな違いというのは、ある人物が手話で「過去の告白」をする場面。具体的に書くとネタバレになるのでぼかしておくが、その内容がとても衝撃的なもので、その場にいた人々は呆然とする──のだけれど。

 

この場面、ドラマでは声による言葉と手話が交互に展開され、その場にいたろう者も聴者も全員、告白の内容を理解しているという体裁になっている。しかし原作では、音声による言葉はない。ただ手話だけだ。手話がわかる人にしか告白の内容は伝わらない。だから手話がわかる人たちが慌てているのに対し、聴者たちは「何かこの場に相応しい話をしてるんだろう」とにこにこしているのである。これは、ろう者と聴者の断絶の象徴だ。

一方、感心した改編はそのあと、認知症を患う母親がずっとやっていた意味不明のジェスチャーの意味、いやその真相がね! 上質なミステリかよ、と思ったさ。
改変を加えながらあの長編をどうやって尺に収めたのか。当然、削られた部分があるからだ。その削られた部分とはおもに、ろうや手話の現実を説明する「情報」の部分である。この『デフ・ヴォイス』という小説が素晴らしいのは、ろうや手話通訳のあれこれが有機的に物語と結びついてめちゃくちゃ面白いミステリになっているという点にある。

ぜひ彼らのその後を、つよぽんや橋本愛さん、エンケンさん、そしてドラマに出演したろう者の役者さんたちを思い浮かべながらお読みいただきたい。私は個人的に、中途失聴者で日本語対応手話と口話の使い手である片貝弁護士役の小川光彦さんのファンになってしまった。原作では「聴者のように明瞭な発音ではないが、聞き取りやすい言葉」を話すとある。もうイメージぴったりだったのよ!

(サイトより引用)

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リップサービス的ではありますが、まがりなりにも初めて「ファン」だと書いていただきました!
とーーってもうれしいです!ありがとうございますっ!w

聴こえる人にとっては、楽しむためにはやはり音声が重要な要素になっているのかな、というあたりはちと複雑な気持ちがしないでもないのですが。
このドラマ、ろう者のお母さん役の長井恵里さんのデフヴォイスに始まり、

草薙剛さん演じる尚人の母役の、五十嵐由美子さんのデフヴォイスで終わりましたね。

ろう者の監督だったらこうはしないのでは。
このあたりも象徴的な、聞こえる人のドラマだったなと思いました。


もちろん、いろいろな楽しみ方があってよいと思います!
それが「よいドラマ」ということになるでしょうか。