記者のこだわり 障害とともに~難聴のある弁護士(毎日新聞12/16)
さいたま地裁で弁護士の久保陽奈さんは傍聴席から法廷の柵の中に入った。スマートフォンを机の上に置き、書記官を通じて裁判官の前にマイクを設置。スマホに流れる文字を確認してやり取りが続き、滞りなく閉廷した。
「当職は、両耳高度感音性難聴のため、聴覚障害を補う機器を使用することを許可願います」。裁判が開かれる数日前、久保さんは地裁に申請し、許可を受けた。スマホで使っていたのは、音声認識アプリ「UDトーク」。法廷でも3年前からアプリを使っており、「やり取りがすごく楽になりました」と語る。
聞こえづらい音があることに気付いたのは、高校1年生のころだった。当時は会話に支障もなかったが、その後、症状が進行。大学2年生の時、医師から「将来、まったく聞こえなくなるかもしれない」と告げられた。マスコミ業界で働くことは聴力の低下に伴い、あきらめざるを得なかった。
現在よりも聴力はあったが、今のようなアプリはなく、会話の内容をつかみきれないことも多かった。しかし「聞こえないから支えてほしい」と言う勇気もなかった。仕事に慣れず、上司から叱責され続けた。久保さんを支えたのが、西尾優子弁護士だった。特に助かったのは、「たわいのない情報を届けてくれた」ことだ。久保さんが情報を得ようとする時は、アプリを使ったり、マイクを向けたりして意図的に収集する必要がある。ただ、人が得ている情報は、聞こうとしている情報ばかりではない。雑談や物音など、意識せずに聞こえてくる音から得る情報も多い。西尾さんは、「状況に応じて必要な配慮をしてくれる」(久保さん)存在だ。
難聴当事者の立場を踏まえて、難聴者のための権利擁護に取り組んだ実例がある。難聴の知人女性から相談を受けた。「法廷で交わされる会話を要約ではなく全文で読みたいんです」。地裁との幾度かのやり取りを経て、「全文の文字通訳を用意できるという趣旨の回答が届いたんです」。「当事者であり、専門家でもある自分が言わないといけないことだと思った」。当たり前のように全文の文字通訳が実現されるよう、取り組みを進めるつもりだ。
「劣っているわけでも、乗り越えるものでもないのかな。難聴は、ただ私と一緒にあるもの、という感覚です」(久保さん)。
(サイトより引用)
--
当事者として、気持ちの変化に共感します。
今後のさらなるご活躍に期待したいですね!