『いくお~る』 聴覚障害に関する情報ブログ-KIMG0309.JPG

タワーホール船堀です。
地域フォーラム、東京でも二年目です。オガワは連続参加。
障害者制度改革推進会議の東室長(写真)の、差別禁止法に関する講演がとても理論的具体的で分かりやすく感じました。

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基調講演
「どうなる?障害者差別禁止法」~部会提言が示したもの~
東俊裕氏(内閣府障害者制度改革担当室室長)

06年国連で権利条約が採択。各国で批准し取り組む必要ある。日本はまだ批准していない。国内法の整備が必要なためである。拙速な批准はしないでほしいと要望している。当事者の意見を踏まえて進めて、と09年12月に制度改革推進会議が発足。
障害者基本法、総合福祉法改正などの課題を持っていた。施策に反映されるか確実ではないが、がんばって進めている。
大きな課題は差別禁止法。日本にはこれまで法律がなかった。作ることが閣議決定された。法制化を検討し来年の通常国会に提出する。2010年11月に部会を作り議論、25回100時間を割いて会議開催してきた。
差別禁止に関して誰も先が見えなかった。前例が国内にないので海外の例を参考にした。アメリカの73年のリハビリテーション法など。これらは障害者の差別禁止規定がある。その後個別の差別禁止法ができた。一例だが航空機利用に関して、今は法律の効果で車いすでも乗れる。搭乗拒否は少ない。
1990年ADA法(障害を持つアメリカ人法)ができた。大きな影響力を持ち、イギリスやオーストラリアにも広がった。権利条約の基礎は差別禁止。世界的な広がりを部会では学んだ。
日本では何が必要か。(資料)に意見の概要がある。
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/pdf/bukai_iken_gaiyo.pdf
国民はわざと差別することはない。故意に障害者差別する人は少数。私は弁護士。多くの相談を受けてきたが、悪意を持って障害者を困らせるようなことは少ない。
一方で差別的事例はある。千葉でも熊本でも差別禁止条例ができた。そこで障害者団体や行政から事例が集められた。内閣府でも調査し8000事例が集められた。全てが差別とは言えないが。多くの分野で、差別はどこにでもあるという現状がわかった。
私は1953年生まれ、1歳半でポリオになった。私の人生を振り返ってもつらい思いはある。皆さんもあるだろう。自分の問題を、解決してほしいと外部に出せただろうか。そうではない。泣くような思いがあっても心にとどめ置くことが多かった。自分を責めたり閉じこめたり。
問題が表面化しないできた。表に出た事例だけでもひどいものがある。
潜在化し、障害者には多くの影響がある。事例へは対処が必要。事案がおこる理由は何か。表面化せず社会問題化しないのはなぜか。差別が悪いとは皆わかっている。しかし差別とは何か、がはっきりわかっていない。
教師も当事者も社会も。聴いてもわからない。具体的な差別の基準を持っていないからだ。原因は個人ではない。社会に差別についての基準を示していない。共通理解の努力をしてこなかった。そのつけがきている。
セクハラも昔は知られていなかった。セクハラという言葉が出る前から、状況はあった。法律にしないと社会に理解が深まらない。心に入ることでセクハラが意識される。ここからは危険という判断基準が出てくる。障害者差別もそう。差別とは何か、が決められること、社会に広まれば防止できる。
基準を作ってもそれだけで差別はなくならない。アメリカを見てもそう。だがアメリカでは少なくなっている。基準があれば解決の方法がある。ないとできない。公が立ち入ること、法律があればできるようになる。
人の心に共通の物差しをつくる事が求められる。それが差別の定義ということ。事態が発生したら身近なところで相談できるようにする。解決の方向を示すシステムが必要になる。物差しと救済のしくみ、この2つが求められる。
部会の意見にこの内容が書かれている。
理念の中で言っておきたい。これは罰するための法律ではない。一般の人は不安がある。共通の物差しをつくること、障害の有無にかかわらず生きるための道具として作る。一方的に加害者、被害者の立場を作るものではない。そこを理念としておさえる。共生社会の実現、尊重となる。これからは高齢化社会。若い人の割合が少なくなる。社会の中で、多くの人が困難を抱えて生きていく。それぞれが力を発揮できる社会の基礎となる。
表で下の左側、障害者の差別。障害とは何か、という問題が出てくる。日本の障害者は手帳を持っている人だけではない。発達障害で手帳のない人もいる。難病の方も2割程度しか手帳を持っていない。差別禁止法の主体は、手帳 保持者に限ると不公平になる。障害とは基本法の障害と同じ。心身の機能障害がある方。手帳を持つ必要はない。そればベースとなる。
では差別とは? 障害に基づく差別、と書いてある。障害を理由による差別と言われるが、さらに広く扱っている。
1)不均等待遇
2)合理的配慮の不提供。
わかりにくいので事例を出してある。間接差別、関連差別、合理的配慮に関係する事例などがある。直接差別は古典的類型。例は障害があるだけでバスツアーに参加できないというもの。障害を理由とした事例。聴覚障害者を理由にスポーツクラブに入会拒否。気を失ったとき、声かけしてもわからないから、というのが理由。これは合理性がない。直接差別でも合理的な理由があり、やむをえないと許されることもある。しかし例示はおかしい。
公務員採用条件で、名前が書けること、電話対応ができることなどが条件になっている場合。最初の例と違い、障害がだめとは書いてない。自署が条件だと、視覚障害や手に障害がある人も含まれる。漢字を学ぶ機会のなかった人たちも含まれる。これによって排除されるのは、障害者のみ。障害者のみに不利益がある。直接障害を理由としていないので、間接差別。学校のヒアリング試験もそう。聴覚障害者は答えられない。入試の場合、5科目のうちヒアリングテストが含まれると聴覚障害者は満点をとれない。最初から不利。教育の場の排除と言える。間接的に不利益を与えるもの。
関連差別について。盲導犬の事例。店の人は犬を理由に断る。障害を理由にしていないので、差別ではないという。しかし盲導犬はその人の人生の一部。連れていかないことはできない。その店だけヘルパーを同行しなければならないのか。視覚障害者の一部にしか導入されてないが、それは障害者の選択の自由。障害者だけが不利益を受けることになる。
直接、間接、関連差別は考慮すべき差別類型。イギリスではこの3つが法律に入っている。
日本はこの3つをどうするのか。バラバラに書くべきではないと判断した。分類が難しいから。相手にも自分にもわかりにくいから。「不均等待遇」として一本化することにした。
障害又は障害に関連する事由を理由とする区別、排除または制限その他の異なる取扱い。
不均等待遇には例外がある。客観的に見て、正当な目的の下に行われておりやむを得ないといえる場合は例外となる。
2)合理的配慮の不提供
障害者の求めに応じて、障害のない人と同様に人権を行使し、機会や待遇を享受するために必要適切な現状の変更や調整を行うことを合理的配慮という。ただし過度な負担が生じる場合は例外となる。
一般の人は夜間に子どもが高熱を出しても電話連絡し、適切な治療を受けられる。一般の衣料サービスは聴覚障害者にも平等に提供されているか。FAX番号は掲載されているか。ないと聴覚障害者によっては連絡不可能。夜間緊急病院でインターフォンを押すように言われても、聴覚障害者はどうやって連絡するのか。
連絡に必要なシステムがないので、聴覚障害者は診療を受けられなくなる。病院側は気づいていないだけ。知らないから。この状況が放置されると、障害者は不利になる。情報伝達の面で、サービスが受けられない。

この格差を無くすために、どうすればよいか。配慮のある措置が必要になる。今はカメラつきのインターフォンもある。声だけでなく、手話を表せば、人がいること、聴覚障害者であることはわかる。現状の調整、変更ということで対応できるはず。多くの人にいろんなサービスがなされるといい。多くの人はその便益を受けている。障害者はしかし排除されるということになる。そういう仕組みはまだ社会に沢山ある。障害者が恩恵を受けられない。障害があるからだと言われてしまう。

手帳を持つ740万人くらいの障害者が日本にいる。実態はもっといる。人工の一割くらい。利用できないシステムが社会にあっていいのか。それが問われるべき。不均等なままの扱いは差別。禁止法で、それを問う。
一般へのサービスがないなら、障害者も同じ扱いで構わない。発展の中で障害者のことが考えられるようになったのは、バリアフリー法ができてから。それ以前の状況は皆さんご存じだ。できないのはあなたのせい、迷惑をかけないで、とそう社会は言ってきた。それでは困るからと私たちは体をはって運動してきた。
健常者は車、バス、電車、社会の恩恵を一番受けている。それなのに障害者は受けられない。一般の人にはお金を使う。しかし障害者に対しては特別なお金と考えてしまう。私たちも同じ社会の構成員なのに。事業者にもいろいろあるので過度な負担は要求できない。しかし規模や性格によって決める必要がある。過度にすると共倒れになる危険もあるが。行政が事業者を支援することも重要になる。

では何が差別か。右側に「各分野の事例」を参考にあげている。サイトを見て。
身近なところから裁判にいたるまであげられている。紛争の解決のために求められるもの。機能を果たすために、どういった組織が必要か。
1)相談および調整。
受け止めてくれる相談機関がなかったことも。相談を受ける側も差別の定義がわからなかった。定義をもとに、相談を受けられる仕組みが必要になる。人生の分かれ目から日常生活まで、差別は多岐にわたる。近所の八百屋で対応してもらえないから、と差別を申し立てるのもまずい。日常的に継続した関係があるところだから。間に入って調整する機能も必要だろう。相談を受ける人材、障害を知っている人が求められる。部会では障害者団体の相談員の人とかと書いている。日頃障害者側に立って相談している、地域の人材を活用する。
調整ではすまないとき、都道府県にひとつくらい中立的第三者機関を作る。調停機能を作る。最終的には司法判断になる。裁判規範になる差別禁止法を作る必要があるというのが結論です。
部会意見をもとに内閣府の法律を作る担当が準備中。来年3月の国会で決議の見通しで進んでいる。