2012年7月2日(月)東京新聞・筆洗
 名人と呼ばれた落語家の八代目桂文楽師匠が晩年、評論家の矢野誠一さんと鰻屋で盃を傾けていた時の話だ。「近頃、耳が遠くなりまして」と文楽師匠がぽつりとつぶやいた後、こう言った、と矢野さんが自著『落語商売往来』に書いている▼「きこえなくても、きこえたふりしてしゃべってますとね、どうしても返事をしなきゃならないときがある。そんなときは『近頃はたいていそうだよ』と、いってやるんです。ほとんどこれで用が足ります」▼矢野さんは「すごい老人の知恵だと思う」と感心している。
(引用)
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「根岸の里のわび住まい、それにつけても金のほしさよ」みたいな話ですね。