1/29都民集会での講演、オガワが(中見出しも含め)メモ書きしたものです。
国の現状理解に大変参考になりましたので共有します。もちろん文責オガワです。


みんなの総合福祉法、未来に向けて!
佐藤久夫氏
日本社会事業大学教授

■1 障害者制度改革の動向 3法制定・改正
総合福祉法の目指すものについて説明します。
二年前に制度改革がスタートしました。昨年7月、最初の成果といっていいこと、障害者基本法の改正がありました。8月に骨格提言。
政府は「障害者基本法」「総合福祉法」「差別禁止法」3法の制定、改正を経て、権利条約批准をしたいと言っている。
昨年基本法改正がなされた。問題点はあるが、大きな足がかりになる改革もある。
今年の国会での、総合福祉法の制定。
次に来年の差別禁止法制定。
教育、所得などの制度改革が進行途上にある。
この3つが特に重要です。閣議決定をして、政府も進めてきた。基本法改正は、与野党協力のもと、よい方向で修正されている面もあった。
去年7月29日、まず障害者基本法改正をクリア。
理念法である基本法形成がなされたが、それ以降がうまくいくとは限らない。
財政面、自治体レベルでの実行を考えると、準備が必要。簡単ではない。
差別禁止そのものはお金がかからない。しかし一般市民を巻き込む面がある。事業主、病院、学校経営者が差別をしてはいけないと規定される。差別内容、実効性の理解がないと、法律改正は難しい。成立しても実効性がない可能性がある。
2つめ「総合福祉法」、3つめ「差別禁止法」のハードルは高い。
障害関係者の力が試される段階にある。

■2 「障害者政策委員会」には強い権限が!
第一ラウンド、障害者基本法の改正について。
「可能な限り」という表現が6箇所ある。どういう意味か?
政府としては、「お金があればやる、なければやらない、という言い訳に使うものではない。すぐに地域に出られない人もいる」、などと説明している。この言葉を政府に都合よく使われてはいけない。
同時にこの改正で、障害者団体は大きな武器を手にした
「障害者政策委員会」の設置について、がそれだ。
合議制機関を都道府県、政令市は必ず置く。
市町村には政策委員会と類似した機関が設けられる。
去年の基本改正から1年以内に実施される。
障害者政策委員会は、特に
「計画」実施状況を監視し、必要なら総理大臣や各大臣に勧告(報告義務付き)する、というのがあることが一番大きい。
強い権限を持つ委員会が設けられる。いままでは意見を言うことしかできなかった。
中央障害者推進協議会が衣替えする。都道府県、政令都市には監視する役割が規定される。
今までは国に意見を述べるだけの推進協議会だった。これから監視する役割をもって発足する。
都道府県、政令市では、障害者団体と協議し予算を用意しているのでは。
東京ではどうなっていますか。
基本的に役割が変わったと、行政担当者が理解していない場合もある。
運動サイドから注意を喚起しないといけない。
監視するには予算も必要。データを収集し委員会に報告する必要もある。障害者の視点で施策の実施状況を評価できる機関が必要。
今、制度改革推進会議の事務局に5人配置されている。
都道府県で、同じようにはいかないかもしれないが、役割遂行が出来る体制が必要。
交通費、調査研究府などの費用の工面、などが求められていると思う。
地方の機関を作るよう、条例を作る準備がされているはず。この段階から、障害者団体が参加していく必要がある。
各県の情報交換もしていく。
各大臣に勧告できるので、各県の問題を解決するために、中央の政策委員会に問題提起をする。そして、中央から各大臣に勧告する、そのような連携が必要。

■3 制度改革推進会議解散、4月からは政策委員会に
3月で推進会議は解散する。
4月からは政策委員会に衣替えになる。委員は30名。
難病を持つ人、高次脳機能障害を持つ人も障害者として、全てのひとを対象にする。障害者基本法の改正で、そうなった。
もうひとつ大事なこと。従来の定義ではなく、社会モデル的な観点をいれた。
これも重要な改正。
当事者参加(第10条第2項)
身体障害者の参加は恒常化してきたが、知的、難病の方は進んでいない。
形だけ当事者を入れるのではない。どういう願いを持っている化、どう反映させるか。それが地方でも大きな改善を求められている点。

■4 地方から中央へ、要望が。
8月30日、総合福祉部会で骨格提言がまとめられた。
それ以降の動き、10/28のJDF大フォーラムは日比谷に1万人が集まった。障害者団体総意として、政府国会に要望した取り組みだ。地方レベルのフォーラムも幅広い団体で行われている。国会議員もあいさつに来ている。
そうした要望活動により、地方から政府への意見提出が行われた。
全国の60の自治体から。障害者団体、事業者の団体も含めて求めた。県議会も「わかりました」と言わざるをえない。
国会議員も選挙となると、地方の応援が大切になる。地方議会の議員の理解は国会にも影響を与える。地方と民間の動きが強い点。

■5 民主党のおかしな動き…
だが政府、国会、政党は雲行きが怪しい。
民主党は9月にプロジェクトチームのメンバーを変えた。党内ワーキングチームで障害領域の検討をしている。10月から各団体でヒアリングをしている。おかしいです、総合福祉部会があるのに。ヒアリングの意味がわからない。
民主党は公約がある。総合福祉法の成立。そのスタンスに代わりはない。
しかし自民党は違う。骨格提言を尊重するが、支援法の改正でいいのではと。
野党の了解を得られないと国会運営は厳しいと言っている。
ヒアリングに呼ばれた団体からは、中には骨格提言から違うニュアンスを出す団体もあった。多くは骨格提言を尊重してほしいと述べているが。必ずしもそうではないヒアリングもあった。
昨年の12月13日には第3回検証会議が行われた。自立支援法で間違いないか、と聴いたことに対し、廃止という明確な答えはない。与党議論をふまえながらの検討になるとしている。
2010年6月の閣議決定のとおりに役人は作業している。しかし新しい総合福祉法を作るかどうか、最終的に決定するのは国会だ、として、明確な回答はない。

■6 緊迫!自立支援法改正の動きが!?
今年に入って驚くことが起こった。1月11日、国会を間近にして、長妻大臣を中心に、厚生労働部会がひらかれた。
健康保険法と支援法一部改正が重点になっている資料がだされた。非公開の会議だったが。その日のうちに電子版ニュースがながれた。緊急行動が起きた。
18日の段階で障害者団体の名前で問いあわせをするが、民主党としては何も決定していない、という文書が流れた。
1月24日、国会開会。
当日、政府から提出する法案の件名が出された。多くの法律案が並ぶ。
そこに自立支援法の一部改正とあった。障害者の範囲の見直し、地域生活サービス向上のために案を出したという説明があった。
最悪の場合は、自立支援法の一部改正案になる。障害者の範囲を一部見直しという程度になりかねません。身体障害者手帳がないと支援法の支援の対象にならないので、手帳がなくても障害区分プロセスに入れるように、対象を広げるというレベルにおさまる危険がある。
昨年10月、村田議員が小宮山大臣を追求。「支援法廃止、総合福祉法成立の問題では大混乱になる。覚悟しておいて!」と発言したことが議事録に残っている。
公約、基本合意を守るべき与党が及び腰になっている現状がある。

■7 国も民主党も約束をしていたはず
しかし、民主党は約束をしている。
2009年8月総選挙での民主党の公約違反になる。
さらに2010年1月7日の「基本合意」違反である。自立支援法訴訟原告団が国と和解し、その代わりに厚労省と「基本合意」の約束をした。
2013年8月までに支援法廃止、総合福祉法制定をすると取り決められた。
しかし、反故にされたら和解の意味がなくなってしまう。
「支援法の一番の問題は応益負担。つなぎ法で応能負担になった。それで問題はクリアした。さらなる問題は改正で」と野党は言っている。表現が変わってきた。
支援法は原則1割負担。事業者に払われるのは9割なので、1割は利用者が払う。しかし払えない場合は9~10割を支給するとしたのが以前の法律。
つなぎ法では、福祉サービスの費用は負担能力に応じた額にする、となった。1割を上限にして。事業者には、利用者負担額をひいた額にすると。
今回、応益から応能に変わったと言えるかもしれないが、負担能力について、具体的なことは法律に書いていない。政省令で判断できる仕組みになっている。
骨格提言では原則無償。
ただし所得の高い人からは応能負担と。その場合の負担能力は本人のみとなっている。これに対し、つなぎ法は、世帯全体に広げることも可能。
また負担能力の判断は政府任せ。骨格提言では書けていないが、サービスの利用を控えることがないように、十分な収入のある人からは、とある。
サービス利用を控えるために、利用者負担が強化されかねないつなぎ法だ。
2006年に自立支援法が導入されたとき、月6万円の所得の人から1万円をとるという制度だった。当時政府は負担能力があると判断していた。国民から攻撃されて、まずいと気づいた。
いまのところ、低所得者は無料となっている。だが利用者負担がどんどん広がっていきかねない。政府任せでは、問題は解決したとは思えない。
利用者負担が解決したから、総合福祉法は不要、ではない。
先日の制度改革推進会議(1/23)でも、この総合福祉法の準備状況が議論になった。総合福祉法部会を開いて政府の準備状況を説明せよと。
2月8日に総合福祉部会を開催することになった。
政府は準備してきたというが。政府がどんな法案を用意しているかわからない。
2月7日に与党のワーキンググループとの話し合いがあり、法案を固める。それを部会に照会、説明をする。意見は部会で聞こうと。これが最後の部会になる。

■8 骨格提言の意義について
骨格提言の意義。
総合福祉法部会で、障害当事者を中心とした提言をまとめたというプロセスが重要。小宮山大臣は障害者の願いである、という理解をしている。だが関係者の合意の結果であることを理解しているのか、不安がある。予算が足りなければ我慢して、となりかねない。障害者、関係者で集まって議論した。これ以外にはありえないものになっているはず。どう実現するか、が政府の役割である。
内容も重要だ。
支援法と総合福祉法を比較すれば、基本的な枠組みが違うことは明らか。
戦後60年をみると、福祉は進んだ部分もある。身体障害者の種類も広がった。知的にも広まった。
更生という目的の身体障害者福祉法。これも地域参加、社会参加に目的が広がっている。自立支援法から総合福祉法に引き継ぐ部分もある。
全体として、この仕組みではこれからの社会は立ちいかない。その象徴が自立支援法裁判。権利条約が最後のとどめになった。
障害者観が古すぎる。医療モデルで社会参加できない原因は本人にあると。自己責任、家族責任が求められて居る。保護という観点も。自分で働く、そのための訓練にはお金を出すが、長期的なサポートの単価は低い。自己責任の考えが反映されている。応益負担、定率負担にもその考え方が現れている。
総合福祉法は皆が参加できる共生社会の実現を目指す。
自立支援法はサービスの利用を権利としていない。我慢させている
本人の希望する支援制度にすることを目指している。

■9 総合福祉法案 骨格提言の実現を!
総合福祉法を巡る準備が部会でなされた。その間にも内外で厳しい状況が進展している。
高松でのこと。学校説明会の保護者説明会に手話通訳を求めたところ、義務教育では認められたがそれ以上はダメだといわれた。裁判になっている。
和歌山の例、ALSの人。痰の吸引が必要な方で、24時間の介護を求めて認められなかった。地裁に訴えたが一日20時間の介護をするようにと市に命じた。それが不満と高裁に。だが高裁は棄却。地裁の命令の根拠は、生命の危険性による。しかし自治体の裁量権を尊重した結果。
骨格提言は命の危険性のないようにするだけではない。地域で生活するための支援が必要である、と、もっと広く求めている。
地裁ではそれは無理と、20時間に増やしただけ。
この状態を切り替えなければならないのは、歴史の必然である。
骨格提言では言っている。判断のツールを開発、職員の研修、権利擁護の仕組みを準備しなければいけない。
自立支援法の一部改正だけで済ませてほしくない。速やかに政府は準備、実行をはかる、と明確に規定している。そのためにも法律名から変えなければいけない。

■10 骨格提言が目指す6つのポイント
骨格提言が目指す6つのポイント。
1)障害のない市民との平等と公平
2)谷間や空白の解消
3)格差の是正
4)放置できない社会問題の解決
5)本人のニーズにあった支援とサービス
6)安定した予算の確保
読んでもらえれば、つなぎ法ではダメなことがわかる。
それでは安心できる共生社会が作れない、と議員に訴えて説得してほしい。
民主党も公約違反では、選挙に勝てない。野党も勝てない。そう理解してくれる議員もいる。約束が守れない社会では困る、と話していかないといけない。
3月13日の閣議決定まで、残された時間は少ない。正念場。
がんばって総合福祉法を実現させたい。

■11 質疑
質問/
提言を4つの時間軸を設けてやるといっている。そこにも政府との開きがある。骨格提言のポイントを時間軸の観点から教えてほしい。就労では労働者性が言われている。

佐藤/骨格提言では、就労系で、3年間の検証期間を設けると。その中で新しい方法を見いだすとなっている。
2013年8月に全部施行するのではなく検証もする。
時間がかかりそうなのは支給決定プロセス。どの国でも現場、当事者を尊重して、支給方法を決めるときは齟齬がでてくる。それを埋める作業が必要。決断の部分も残る。混乱しないように先行方法を検証するとか。他の専門職も加わって検証とか。更生相談所もバックアップするとか。
自治体も市民も障害者も学んでいくプロセスが大事。
タイムテーブルを明確にするのは、私の中ではまだ。JDFでも準備中と聞いている。
それを待つことになるのでは。

Q/介護保険を受けている。隣の難病の方も、65歳にならなくても介護保険を受けている。改悪されると悪影響が心配。「持続可能な」と首相が言うのは迷惑。障害者サービスが「受けすぎだ」といわれているようだ。障害者だけは本当によくなるのか。

佐藤/骨格提言が示しているサービス、対象者。年齢に制限はない。0歳から上限がない。全ての障害者。80歳になって障害が生じて、支援が必要な人も、市町村に行って利用申請ができる。介護保険にないr移動支援などがあるそのようなものを高齢障害者が申請できる。今は、介護保険の仕組みになっているが。総合福祉法になったら、選べるかどうかわからないが。総合福祉法と介護保険の目的が違うので、私は介護保険が利用したいと言えるはず。
介護保険にないものは総合福祉法のものが受けられる。その逆も可能。市町村が、やめてくださいなどと言うのが問題。高齢障害者も安心して暮らせるサービスがあると、地域で理解を進める。介護保険が不適なので、変えて行くと。高齢者と障害者がかなり違う、こんな制度をなくしていかなければならない。

以上